安川電機は10月4日、超軽量ハンドリングロボット「MOTOMAN-MHJ」を開発したことを発表した。医薬系・化学系の検体の搬送用、研究・開発などの教育用、展示デモ・ゲームなどのエンターテイメント用を主な用途として、10月5日より発売を開始する。

1kg程度の搬送物のハンドリングを、位置決め精度・動作頻度・耐環境性などの厳しい条件なしに自動化したいというニーズは、さまざまな分野で散在しているのが現状だ。こうしたニーズにおいては、自動化機構のためのスペースが小さい、設置のための強度の確保が難しいといった課題により、ロボットによる自動化が進みにくいという課題がある。そこで、ロボットの適用範囲のさらなる拡大を目指し、単純な軽作業向けの小型・超軽量ロボットとして、「MOTOMAN」(モートマン)シリーズの最新型「MOTOMAN-MHJ」が開発されたという次第である。

また、ロボットの軽可搬質量と本体超軽量化により、ロボットを駆動するモータの出力を低く抑えることができるようになり、周囲の安全面におけるリスクを大幅に低減した。これにより、人との共存・協調作業による効率化や、状況に応じた安全設備の簡略化が可能になり、スペースの有効利用を実現し、適用の利便性がさらに向上した形だ。

主な特徴は、まず前述したように小形・超軽量・小容量パワーであること。ロボット本体の質量は15kg、アームの最大リーチは545mmを達成。可搬質量1kgクラスの小形ロボットにおける最軽量・最長リーチ(安川電機調べ)を実現した。さらに設置方法は、床置き・天吊りにも対応しており、小形・超軽量との相乗効果で、自由なレイアウトによるスペースの有効利用が可能となっている。

また、ロボットのパワーをミニマムに抑えており、ロボットの動作範囲への人の侵入を防ぐ安全柵の設置が基本的には不要となっている(もちろん、作業内容次第では設置することを同社は推奨している)。産業用ロボットについては、駆動用原動機が80W以下のものは安全設備の簡略が可能で、MOTOMAN-MHJはその条件に合致しているというわけだ。これにより、人とロボットが同一領域内で作業でき、人とロボットの共存・協調作業や、ロボット動作を近くで観察する教育用途などにも利用できるのである。

2つ目は、ハンドリング用途に最適な小形・高速オープンコントローラ「FS100」の存在。突起部を含まない外形寸法は幅470mm×高さ200mm×奥行き420mmで、容積39.5リットルとコンパクト設計になっており、MOTOMAN-MHJ同様にあまり場所を取らないよう設計されている。また、ユーザーが独自に新たな機能を開発・組み込むためのツールも準備しており、オープンコントローラとして利便性・独自性も従来製品より向上した。そのほか、ホストコンピュータやPLCなどの外部機器接続用に各種通信機能も準備している。

3つ目は、機能開発ソフトウェア「MotoPlus」(モートプラス)が準備されていること。MotoPlusは、ユーザーがPCなどの外部開発環境で、FS100で動作する独自の命令・機能などのアプリケーションを開発できる支援ソフトだ。ユーザーのシステムとの親和性向上、独自ノウハウの機能化、市場ニーズへの素早い対応を行えるようになっている。ビジョンシステムとのデータ通信機能や、そのデータを利用したロボットの補正動作機能の作り込みなど、さまざまな応用展開が可能だ。

販売計画は1年間で100台を目指しており、販売価格はオープン価格となっている。

画像1。左が今回の新型ロボットアームの「MOTOMAN-MHJ」。可搬質量1kgクラスの小形ロボットにおける最軽量15kgと、最長リーチ545mmを達成した。出力が80W以下のために安全柵を設けなくてもよく、人との共存・協調作業なども可能となっている。右は、ハンドリング用途を行う際に最適なコントローラ「FS100」。こちらも小形に作られており、設置場所をあまり選ばずに済むという特徴を持つ