会見を行ったインテル代表取締役社長の吉田和正氏(左)、つくば市市長の市原健一氏(中央)、筑波大学学長の山田信博氏(右)

つくば市、筑波大学、そしてIntelの日本法人であるインテルは7月26日、グローバル社会に対応した日本を代表する新しい都市文化の構築を目指す「つくばが変わる、日本を変える」プロジェクトを開始したことを発表した。

同プロジェクトは大きく分けて以下の5つのテーマの下、取り組みが進められる。

  1. 未来を拓く人材育成
  2. 高度人材養成
  3. 起業家支援
  4. コミュニティの活性化
  5. 健康づくりプログラムの策定

3者はこうした各分野に対し、2015年を効果測定の目安として取り組みを進め、3者が有する情報、資源、研究結果を最大限取り入れて実行に移す計画とするほか、今後は環境、新産業振興、科学技術振興、農業などの分野におけるプログラムの策定にも取り組む予定。また、各プログラムは、その成果をつくば市総合計画などと照らし合わせる形で検証も行っていく予定としている。

産学官が一体となって、それぞれの持っている技術や資産などを融合させることで、今回の連携は実現されるというのが3者の強調するところとなっている

5つのテーマに対する具体的な実施内容。色が変わっている部分は今回、具体的な説明が行われた箇所

5つのテーマの実現に向けた取り組みとして、未来を拓く人材育成では、次世代を築く子供たちが自立するための基礎的な力の育成を目指し、ICT環境を教室以外の特別教室や体育館などでも活用するつくば市独自の次世代型カリキュラムを構築するほか、スーパーサイエンスリーグの実施などを行っていく予定で、環境教育やキャリア教育、国際理解、ICT利活用を融合し、筑波大の教育的知見やIntel Teachのコンセプトである思考誘発型教育の活用を図っていく計画。2012年4月からつくば市内の全小中学校で実施していくことを目指すという。

つくば市独自の教育カリキュラムを既存の教育カリキュラムに組み込む形で小中学校で実施する。市長によれば、本当であれば教育特区として従来とはまったく異なる形の教育カリキュラムのみでの教育をしたかったが、それはできなかったとのこと

また、高度人材育成としては、グローバル社会のリーダーとして世界のイノベーションをリードする人材育成を目指し、筑波大大学院の共通科目として、Intelがグローバルに実施している社員研究プログラム「Intel University」をベースに筑波大とインテルが共同開発したカリキュラムを用いて、実施される。授業は英語で行われ、受講生の半数を留学生や市内の研究機関の研究員で占める予定で、単位不要講座として2012年度より開講する予定。

人材育成の場である筑波大学を活用する形で、よりグローバルで活躍できる、リーダーシップの発揮できる人間を目指した教育を行う

そして、起業家教育講座は、グローバルな活躍を目指した産業育成を目指すもので、筑波大が主催し、同大大学院生ならびにつくば市内の起業家を対象として提供される。講座内容としては事業計画策定ワークショップ、つくば市の補助政策の紹介などのほか、マーケティング、マネジメントなどを一連の流れを11のテーマに分けて学ぶことが可能な作りとなっており、すでに7月2日にキックオフ講義が実施されている。なお、同講座はインターネット上での配信もすることから、講座に直接参加できない人もネットワークを介して講座を受けることができる。

すでに始まっている起業家教育講座。インターネット上で見ることができるため、つくば市に住んでいなくても受講することは可能だ

コミュニティの活性化としては、地域全体の活性化を進め、安心・安全に住める都市を目指すとする。具体的には新しい情報伝達システムの整備を目的として、東日本大震災の経験を踏まえ、情報の伝達、共有の強化に向け、災害時にも強いシステムの構築を目指し、WiMAXやデジタルサイネージなども活用して、新たな方法を模索するという。課題提案は筑波大が行い、実際に各種の情報伝達方法の調査を行っていくことで、より効果的な手法の実現を目指すという。

情報伝達をより多くの人に簡便に行うことを目指す実証実験を行っていく。特につくば市は古くからの農村地域と新しい研究学園都市が入り混じっており、双方で使い勝手の違いなどを調べることができるのが特長だという

5つ目となる健康づくりプログラムの策定については、「Continua Health Alliance」(CHA)の規格に基づくICT機器などの活用を通じて、健康な社会の構築と医療費の抑制を目指すとする。年齢に関わりなく、主体的に健康を管理できるシステムを構築し、より充実した健康な街づくりを目指すとしており、ICTの活用により個々人に最適な健康づくりプログラムの提供を狙う。2011年度中につくば市職員を対象とした実証実験を行い、効果の測定を行うという。健康づくりのプログラムをつくば市が策定し、筑波大がトレーナーの派遣や成果の測定などを実際に行うとしている。

つくば市民を対象とした健康増進プログラムに向け、2011年度から実証実験をつくば市の職員を対象に行い、その成果をもとに各種の分析を行い、ブラッシュアップを図っていく

なお、つくば市ら3者は、2015年までに「つくばが変わる、日本を変える」のキャッチコピーの実現を目指して、具体的なプログラムを進めることで、つくば市を日本を変えるための発信拠点とすることを目指すとするほか、日本を取り巻くさまざまな社会環境に対する解決策の提案を目指し、さまざまな市民生活の向上などの成功例を生み出すとともに、産学官連携による街づくりをグローバルスタンダードとするべく世界に発信していくことを強調した。

個々の実証実験の成果そのものもそうだが、それらを融合したトータルの街としての有り方そのものも世界に向けて発信していくのが今回の取り組みの狙いとなっている