航空会社の米Alaska Airlinesは5月27日(現地時間)、機内のコックピット業務でiPadを全面採用し、6月中旬にも全パイロットにiPadの配布を完了させる計画だと発表した

米国内では現在、連邦航空局(FAA)の規定により各種資料が印刷された分厚い紙のマニュアルの利用が定められており、デジタル機器全盛の現在においてIT化が進んでいない数少ない分野の1つだ。だが最近になり、FAAはiPadなど汎用タブレットのコックピット内での利用を認める方針を出しつつあり、Alaska Airlinesによれば、iPad採用は大手航空会社で初のケースになるという。

パイロットがiPadを利用している様子

アラスカ航空(Alaska Airlines)は米ワシントン州シアトルを拠点に、アラスカ州や米西海岸を中心に路線網を敷いている大手航空会社だ。以前にも紹介したように、これらマニュアルに記載された情報は、空港の位置を示した地図や各種チャートだ。検索性や操作性では最新のタブレット装置に圧倒的な軍配が挙がるが、安全性が担保されない限り導入が進まないという消極的な理由もあり、いまだほとんどの航空便でこうした紙のマニュアルが利用され続けている。

とはいえ、片や10数キログラムの重量はある分厚い紙に対し、iPadは700グラムだ。紙を大量に消費する非エコな方法というだけでなく、昨今の燃料費高騰で重量制限にシビアになる航空会社にとっては、こうした多少の重量増加もばかにならない。個人パイロットを中心にこうした紙のマニュアル脱却が少しずつ進んではいたが、ここにきてようやく大手にもその波が到来した形だ。

今回の事例では、41のフライト情報やシステム関連マニュアル、リファレンスカードなどの情報を記載した資料をPDF化し、GoodReaderのアプリで読ませる形にするという。マニュアルはハイパーリンクとカラー付きの各種画像でわかりやすい形で素早く必要な情報にアクセスできるよう工夫されており、従来よりも利便性が向上しているようだ。

また現在、離着陸時の機内では電子機器の利用は禁止され、電源を切るよう指導が行われているが、これはコックピット常備の電子機器となったiPadでも同様で、Class 1の電子機器(EFB)として離着陸などクリティカルな状況下では利用を停止して収納が求められることになるという。