Googleの日本法人であるグーグルは10月27日、都内で会見を開き、Youtubeを中心としたディスプレイ広告に関する将来展望を披露するとともに、広告主や広告代理店にディスプレイ広告をより深く知ってもらうための全世界的キャンペーン「"WATCH THIS SPACE"(日本名:"このスペースのこれから。")」を10月25日より開始したことも明らかにした。

GoogleのManaging Director,J-APAC Media and PlatformのShailesh Rao氏

GoogleのManaging Director,J-APAC Media and PlatformのShailesh Rao氏は、「2010年第3四半期決算時にGoogleのデジタルディスプレイ広告事業は、年間で25億ドル規模に成長したものと推測されると発表した。また、Googleの広告主トップ1000の内99%がなんらかのディスプレイ広告を活用している」と現状の同社のディスプレイ広告事業を説明する。この25億ドルの売り上げは、テキスト広告を除くすべての広告収入を指しており、携帯端末での検索などに表示される広告も含まれており、25億ドルのうち約10億ドルはそうした携帯機器で表示される広告になるという。

「日本でもディスプレイ広告は好調で、9月のYoutubeのトップページの広告枠は毎日9割以上埋まる状態となった」(同)と、広告が好調であることを示し、それを踏まえて、2015年に向けたディスプレイ広告に関する5つの予測を披露した。

「50% to include video」

1つ目の予測のタイトルは「50% to include video(50%が動画を含む)」というもの。

この予測の背景を同氏は「現状の広告は、広告主、掲載媒体、視聴者の間で必ずしも利益が一致しているとは言いがたい」と説明する。広告主は、すべてのユーザーにメッセージが届いていないと感じているし、ユーザーは見たいと思うような広告がないと感じている。そしてそれらを掲載する媒体としても広告が付加価値を生んでいないという状態で、「3者ともに満足していないのではないか」と指摘する。

では、どうすれば3者ともに満足感を得られるのか。その1つの解が「動画(Video)」にあると同氏は述べる。「動画は人間の視覚に対するアピール力という意味では強力なものだ。今後、代理店にとってもWeb広告全体にとっても、動画という存在がクリエイティブなものとなって、さらなる意味を持つものとなる」とのことで、単なる動画を流すだけではなく、クリックすることで、追加情報を見れたり、ソーシャルメディアとの連携によるユーザー参加型の仕掛けなどといったインタラクティブ性をそこに持たせることで、商品の購入意欲の向上などが図れるようになるとした。

米国での例。映画「アバター」をYoutube上でキャンペーン展開し、動画の視聴だけでなく映画館情報などの提供が行われた

こちらは日本の例。ロッテのFit'sで行われたダンスコンテスト。1800ユーザーからアップロードがあり、1400回再生された。その結果として、ユーザーの参加意識が向上し、購入意欲の高まりが見られたという

「Mobile the Numbur1 screen」

2つ目の予測は「Mobile the Numbur1 screen(スクリーン1位は"モバイル")」というもの。

Googleは"mobile first"という戦略を打ち出しているが、これは「2014年にはデスクトップよりもモバイル機器の数が上回るとの予測に基づいて決定したもの」であり、モバイル端末を活用することで、「手のひらの上で、視角、聴覚、触覚などにアプローチが可能となる」とし、例えば、街中に貼られている映画のポスターを撮影して、そこから映画館の情報や映画の予告トレーラーを見ることが簡単にできるようになれば、そこから新たな広告ビジネスも登場してくるとする。

「5Metrics more important than the click」

3つ目の予測は「5Metrics more important than the click(クリック数よりも、広告効果の測定を重視)」というもの。

過去10年間、Web広告の中心はクリック数であったが、今後はもっと重要な別の指標が登場してくるという。その新たな指標を形成する基本となるものとして以下の5つのポイントを掲げた。

  1. どの程度の期間キャンペーンを見ているか
  2. どの程度、その動画を見てくれたのか
  3. 実際にどの程度の人が購入しているか
  4. 実店舗への販売への影響度はどの程度か
  5. 検索によるキャンペーンへのアクセス度合い

Googleではディスプレイ広告の効果測定ツールとして 「Campaign Insights」を提供している。これは、商品やサービスに関連した検索数の動向と、実際のサイトへの来訪者数の動向から解析を行い、どの程度のブランディング効果があったのかを調べるというもので、「オンライン上で効果測定ができるため、マーケティング費用の削減などが可能となる」という。

「Campaign Insights」を活用することで、検索者の動向や来訪者数の推移などの解析を行うことが可能となる

「Rich media in 50% of Brand campaigns」

4つ目の予測は「Rich media in 50% of Brand campaigns(ブランドキャンペーンの半数はリッチメディアを活用)」というもの。

これについては、「従来の広告というものは静止画であったり、Flashのコンテンツだったりするものが大半だった。今後はより参加型のインタラクティブなものが活用されるだろう」との見方を示す。ポイントはインタラクティブ性というところで、そうした点では動画はその1つの例となるとする。

「Display a $50 Billion industry」

5つ目の予測は「Display a $50 Billion industry(ディスプレイ広告市場は500億ドル規模に)」というもの。

現状、ディスプレイ広告市場は200億ドル市場と言われているが、2倍超へと成長する背景を「広告主の75%は、今後出稿量を増やすといっている。デジタルディスプレイ広告は大企業だけでなく、中小企業にも使いやすい環境が整ってきた」とし、"Display Ad Builder"などのツールを活用することで、そうした中小企業でも初めて広告を出すことが可能となったと指摘、「市場の拡大は確実。Googleとしては、非常に強気の明るい見通しを持っている」と、将来の市場成長への期待を表した。

広告主や代理店向けのキャンペーン

グーグルのメディアセールス統括部長である近藤弘忠氏

そうした予測と並行して、同社は10月25日より「"WATCH THIS SPACE"(日本名:"このスペースのこれから。")」と呼ぶキャンペーンを全世界にて展開している。キャンペーン期間は2010年12月末までを予定したもので、「広告主や広告代理店の多くがまだ、ディスプレイ広告の利点を理解しきれていないのが現状であり、そうした企業などに向けたキーメッセージなどをアピールしていくキャンペーン」(グーグルのメディアセールス統括部長である近藤弘忠氏)としており、Webのほか、紙媒体や展示会なども利用して、広くディスプレイ広告の未来を語っていきたいとしている。

日本でのディスプレイ広告の活用例。左の画像はメルセデス・ベンツ日本のもので、「エキスパンド マストヘッド」型の広告としては、国内で初めてのものとなった