1950年、米国の天文学者 アーサー・ホウグ(Arthur Hoag)は、不思議なリング状の天体を発見した。最初、星雲かと思われたその天体はのちに二重の銀河だということが判明する。発見者をたたえて「ホウグの天体(Hoag's Object)」と呼ばれるこの環状銀河は、発見から60年経った現在もなお、わからないことが多い。

ハッブル宇宙望遠鏡によって2001年に撮影されたHoag's Objectは6億光年先、へび座の方向にある。銀河の直径はおよそ10万光年にわたる

外側のリングは青くかがやく若い星々で形成されており、それとは対照的に中央部には赤く年老いた星々があつまって1つのボールのように見えている。リングとボールの間隙に拡がる暗闇の中、1時の方向に、ほの赤いもやのような小さな光があるが、これはおそらく、もっと遠いところにある銀河であろうと推測されている。

似たような環状銀河もいくつか存在しており、このような形になった経緯については、何十億年も前に起こった銀河どうしの衝突で重力の相互作用が発生し、中央の衝突部が消え去ったから、と唱える仮説もある。謎が解明されていくにしたがって、2つのオブジェクトのコントラストはよりいっそう、鮮やかになる。