リコーは4月27日、2010年3月期(2009年度)通期決算概要を発表した。売上高は前年同期比3.6%減の2兆163億3,700万円、営業利益は同11.5%減の659億9,700万円、税引前純利益は同85.9%増の575億2,400万円、株主に帰属する純利益は同326.8%増の278億7,300万円となった。

リコーの2010年3月期通期決算概要

リコー取締役専務執行役員の三浦善司氏

国内外の売上高の割合は、国内が前年度比6.6%減の8,765億円、海外が同1.2%減の1兆1,397億円となっており、同社では国内の経済は前年度後半からの深刻な景気後退から一部持ち直しの動きはあったものの、本格的な景気回復感はなく、依然として不透明な状態が続いているとする。また、「米国において2009年度に実施したIKON買収の影響が業績に強く出てきた」(同社取締役専務執行役員の三浦善司氏)とのことで、その効果が相当に効果を及ぼしたとする。

具体的には、日本の消去または全社分を除いた売上高は前年度比8.6%減の1兆2,734億円、営業利益は2008年度第4四半期、2009年度第1四半期がボトムとなっており、その後は徐々に回復傾向となってきている。

米国の同売上高は、IKON効果もあり同10.5%増の5,600億円となるも、IKONの効果を除くと相当落ち込む結果となったとする。しかし、2008年度第4四半期以降は確実に回復してきており、営業利益は2009年度第4四半期には1億円の損失まで損失額を低減することに成功。「ここまで来たからには2010年度は黒字になると信じている」(同)と期待を覗かせた。

欧州の同売上高はドバイショックやギリシアなどの問題があり、同11.6%減の4,630億円と2桁の落ち込みとなった。しかし、組織再編などを進めてきた結果、営業利益は回復してきており、2008年度第4四半期の組織再編費用124億円の引き当てによる73億円の損失となった以外は、総じて黒字を維持している。

その他地域の同売上高は2009年中盤から増加傾向が続いている地域もあるが、全体ではマイナス成長となり、同7.4%減の2,459億円となった。ただし、営業利益は2008年度第3四半期を底に2009年度は増益を続けてきており、同第4四半期には43億円と2008年度第1四半期と同等レベルまで回復している。

日本と米国における売上高と営業利益

欧州とその他地域における売上高と営業利益

三浦氏は「10年3月期第4四半期の状況を見ると、先に景気回復感が出てきたアジアに続き、日本、米国、欧州でも景気への回復感が出てきた」とし、ボトムからの回復に向けた動きが出てきたことも強調する。

製品分野別の売上高では、画像ソリューションとネットワークシステムソリューションから構成される「画像&ソリューション分野」が前年度比2.3%減となる1兆7,902億円となった。画像ソリューションは、IKON買収による販売体制強化などが貢献、PPCやMFPを中心に売り上げが増加したものの、その他の地域では景気低迷、円高などの影響により減収となった。また、新製品発売が寄与し、プロダクションプリンティング事業の売上高が増加した。一方のネットワークシステムソリューションは、主として米国でのIKON買収による販売体制の強化などが寄与し増収となった。また、同製品分野の営業利益は10年3月期第1四半期の238億円を底に同第4四半期には474億円と四半期ごとに回復傾向が強まってきている。

分野別の売上高(製品別と地域別)

画像&ソリューション分野における売上高と四半期別の営業利益推移

産業分野の売上高は、半導体事業、サーマル事業および電装ユニット事業の売り上げが国内外で減少した結果、同12.0%減の2,740億円となった。営業損益は、同第1四半期3億円の損失、同第2四半期4億円の損失、同第3四半期が2億円の損失、同第4四半期が3億円の損失と、いずれも損失が続くも、第4四半期は前年同期比で増収に転じている。

特に半導体事業部の赤字幅が大きく、「回復傾向が出ているといわれる半導体だが、我々はニッチな部分を中心にやっているため、それほどの効果が出てきていない」(三浦氏)としている。ただし、2010年度(2011年3月期)は上半期マイナスで、下半期プラスとして年間でプラスマイナスゼロにもっていきたいと期待感を覗かせた。

産業分野における売上高と四半期別営業損益の推移

その他の分野の売上高は、同13.0%減の1,244億円という結果となった。営業損益は同第1四半期が2億円の損失、同第2四半期が8億円の損失、同第3四半期が8億円の損失、同第4四半期が14億円の損失と緩やかだが赤字幅の拡大が続く状態となっている。

「この分野にはカメラ事業も含まれている。カメラを取り巻く環境は厳しいが高い評価を受けている。特にGXRは市場に受け入れられると感じている。今は国内が中心だが、海外での可能性もあり、もう少し本気で仕掛けていくことを検討している」(三浦氏)とのことで、ライセンスなどを含め、GXRと同様の方式を採用したカメラを増やす方向の運動や海外展開などを進めていくことで、事業の拡大を目指すとする。

その他分野における売上高と四半期別営業損益の推移

なお、同社では2011年3月期通期業績を新規事業の成長加速と構造改革活動の継続なども行っていくことで、売上高を2兆500億円、営業利益850億円、税引前純利益750億円、株主帰属純利益350億円と増収増益の予想をしている。

2011年3月期(2010年4月~2011年3月)の通期業績見通し