次世代の中・大型リチウムイオン電池の正極材として期待されるリン酸鉄リチウム(LFP)の事業化を行っている住友大阪セメントは、LFPよりもエネルギー密度が高いリン酸マンガンリチウム(LMP)を開発、放電電位4.1Vで容量密度162mAh/g以上の特性を達成したことを発表した。

すでに事業化がされているLFPは、結晶が強固で熱安定性が高いため過充電や高温に対する安全性を有し、長寿命という特長を持つ。ただし、コバルト酸リチウム、マンガン酸リチウムなど他の正極材の放電電位(3.6V~4.0V)と比べ、放電電位が3.4Vと低いことが課題となっていた。

今回開発されたLMPは、LFPと同じ結晶構造で、安全性や長寿命などの特長を維持しつつ、放電電位を4.1Vへと向上させることに成功したもの。

従来LMPは、LFPに比べ3桁以上も導電性が低く実用的な容量、レート特性を出すのは困難とされていた。しかし、同社では独自の液相合成技術を用いることでLMPの粒径を20nm~30nmとLFPより微細化、加えて導電性物質の被覆方法を工夫することでこの問題を解決。結果として、放電電位4.1V、容量密度162mAh/g以上の世界最高レベルの特性を達成したという。

正極材料の特性比較

また、今回開発されたLMPはLFPと同じ合成方法を採用しているため、LFPと同様の生産設備で生産することができ、量産化にも容易に対応することが可能だ。

なお、同社ではLMPの2年以内の実用化を目指すほか、今後はエネルギー分野の総合材料メーカーとしてリチウムイオン電池、太陽電池、燃料電池などの電池材料開発を強化していく計画としている。