NECと物質・材料研究機構(NIMS)は、共同で固体電解質中での金属イオンの析出・溶解反応を利用した不揮発性スイッチ「NanoBridge」をLSIのCu配線層中に集積化することに成功し、配線の切り替えを行うクロスバースイッチの動作を実証したことを発表した。同成果は米国にて開催されていた「国際電子デバイス会議(IEDM 2009:International Electron Devices Meeting)」にて、12月9日(米国時間)に発表された。

Cu配線中に集積化したNanoBridgeの断面図

半導体は、プロセスの微細化により、多機能化、高性能化、低価格化を実現してきたが、配線の抵抗値の上昇などによる微細化の限界が近づきつつあり、微細化以外の方法で性能を向上させることも要求されるようになってきている。

NECとNIMSは、これらの課題解決の1つの方法として、不揮発再構成用スイッチとして「NanoBridge」の研究開発を進めてきた。今回開発された技術は、NanoBridge中の固体電解質に酸化チタンと酸化シリコンタンタルを使用することで、LSIの配線作製工程で加わる熱やプラズマによるCu電極の酸化や、Cu原子の固体電解質中への熱拡散を防止し、歩留りや電気特性のバラつきを改善。また、金属イオンの供給源をLSIのCu配線で使用するCuと共有することで、工程数を削減し、CMOSとの混載を実現したというもの。

またこれにより、電気特性のバラつき低減により、従来スイッチングにおいて回路選択に用いてきたトランジスタが不要となり、NanoBridgeのみでクロスバースイッチを実現できるようになったほか、NanoBridgeのサイズを従来比1/4の50nmまで微細化することに成功し、次世代LSIである32nmプロセス世代にも搭載可能とした。加えて、微細化によるオン時の抵抗増加や性能劣化が発生しないことも実証している。

なお、NECでは、今回開発したNanoBridgeの集積化技術が、次世代の低消費電力プログラマブルロジックに必要なものと考えており、早期の実用化を目指し、研究開発を推進していくとしている。