NECおよびNECエレクトロニクスは12月8日、電源オフ時に電流が流れないノーマリオフ特性の制御性を向上させたSi基板上でのGaNパワートランジスタの開発に成功したことを明らかにした。

米国で12月7日より開催されている半導体国際学会(International Electron Devices Meeting:IEDM)において12月7日(米国時間)に発表されたもので、ゲート電極の下の層に新たな構造を採用することで、電流が遮断されるしきい値電圧の制御性を向上させ、低電力損失、高速スイッチング、高温動作を実現するというもの。

電子供給層とチャネル層からなる従来構造では、チャネル層付近において、ゲート電極とチャネル層間の電子供給層の厚さによりしきい値電圧が大きく変化するため、ノーマリオフ特性の安定のためには、製造にあたりゲート直下の窒化物半導体のみを、ヘテロ接合界面付近まで数nmの精度でエッチング加工することが求められ、実用化への課題の1つとなっていた。

今回開発されたトランジスタは、ゲート下層に、分極電荷中和構造を形成。しきい値に対するゲート直下のAlGaN層の厚さによる依存性を緩和した。加えて、チャネル層のさらに下層に、中和層と同じ組成のバッファ層を加えた5層構造とすることで、しきい値を高い精度で制御、ノーマリオフ特性を安定して実現すると同時に、加工性を改善し低コストで低損失なGaNパワートランジスタを均一に作製することを可能とした。

こうして開発されたGaNパワートランジスタは、オン抵抗がSi素子の材料限界地の1/20まで低減。これにより、DC/DCコンバータなどの電力変換機器では、計算上、約70%の電力損失低減が可能となるという。

なお両社は、今後も、GaNパワートランジスタの設計・評価を行い、実用化に向けた研究・開発を加速していく計画としている。