東京大学データレゼボワール実験グループは11月27日、スーパーコンピュータ関連の国際会議「Supercomputing 2009(SC09)」の「バンド幅チャレンジ」において、「インパクト賞」を受賞したと発表した。

同グループは、米国ポートランドと東京大学間で長距離ネットワーク・データ転送実験を実施し、家庭用PCでFirefoxを遠距離用に改造したWebブラウザ「UsadaFox」を用いて日米間のデータ転送を行うことで、通常のFirefoxを用いた場合の性能の1,000倍である6.5Gbpsを達成した。

東京大学 大学院 情報理工学系研究科 平木敬教授

同グループを率いる東京大学大学院情報理工学系研究科教授の平木敬氏は、「研究機関など特定の人だけでなく、誰もが10GBネットワークを利用できるようにするための技術を開発したかった。そのために、通常のPCの"サイズ"、"価格"、"使い勝手"を実現することを目指した」と述べた。

同実験は、東京大学と米国ポートランドのSC09会場に設置した2台の家庭用小型PCの間で行われた。PCはインテル製CPU×1、SSD(フラッシュディスク)×6、ディスク・インタフェースカード、チェルシオ製ネットワークインタフェースカードなど、すべて市販品で構成されており、システム価格にして60万円程度で、旅客航空機機内に持ち込める大きさ・軽さとなっている(サイズは27cm×20cm×60cm、 重量9.6 Kg)。

実験で使われたシステム。右端が小型PC

同グループではこれまで第5世代の遠距離・超高速ディスク間データ共有システムを開発している。第1世代は「26サーバ・26ディスク・500Mbps」だったのに対し、今回発表した第5世代は「1CPUのPC・6SSD・10gbps」と、大幅な機器の小型化と転送速度の高速化が実現された。

実用性にこだわったということで、採用されているソフトウェアも、CentOS 5.3、linux-2.6.18-128.el5、Apacheと、通常の企業・組織で用いられているものが選ばれている。

遠距離・超高速ディスク間データ共有システムの仕組み

データ転送の高速化に特化させるべく、Firefoxに対して「データ操作の最適化」、「メモリコピーの排除」、「Firefoxのバッファサイズの最適化」などを実施することで、UsadaFoxが作られた。画面など、見た目はFirefoxとほぼ変わらない。

デモの様子。左がFirefoxの画面で、右がUsadaFoxの画面だが、よく似ている

同氏は、今回の実験の意義について、「日本の超高速インターネット技術、インターネット利用技術のレベルの高さを示すことができた。また、パーソナルかつローカルなデータアクセスと同じ環境で10GBのインターネットの利用を可能にした」と説明した。

今後は、UsadaFoxをはじめとするシステム全体の完成度を上げていくとともに、オープンソースに技術を提供することも視野に入れているという。