独立行政法人情報通信研究機構の宇宙通信ネットワークグループは11月24日、低軌道地球周回衛星を用いて、世界で初めて高精度なレーザー光による衛星と地上間の偏光特性の測定に成功したと発表した。

今回の実験では、NICTの光地上局において、JAXAが2005年8月に打ち上げた低軌道地球周回衛星「OICETS(きらり)」を用い、衛星と地上の間の偏光度の劣化が2.8%以下という結果を観測した。

NICT小金井本部の光地上局の様子。口径1.5mの光学望遠鏡を用いて光宇宙通信の地上局が構成されている

望遠鏡に設置したカメラで取得した衛星方向の画像。明るい点がOICETS衛星からのレーザーで、雲があっても光宇宙通信が持続可能であった時の実験の様子を示している

空間での量子鍵配送では、システムの簡便性と安定性が得られる点から光子の偏光を用いた鍵配送が一般的に用いられるが、偏光の度合いが劣化すると安全に鍵を共有することはできない。

今回の実験から、上層大気を含む大気の影響は、量子鍵の配送に問題ないレベルに抑えられていることが確認された。

これまで、高精度な光源を用いて衛星と地上の間の偏光特性を実際に測定した例はまだない。今回、量子鍵配送の回線計算が可能になり、人工衛星を用いた地球規模での量子鍵配送の実現に向け大きな手がかりを得たとともに、実際に宇宙光通信の実用化を目指した実験衛星の設計を進めることが可能となった。