次世代配電網向けADC

Analog Devices(ADI)は5月19日、変電所の次世代配電網「スマート・グリッド」の監視システムを簡素化する同時サンプリングA/Dコンバータ(ADC)「AD7606」(16ビット8チャネル)と「AD7607」(14ビット8チャネル)を発表した。現在、サンプル出荷中で1,000個受注時の単価は18.48ドル(参考価格)からとなっている。

2製品ともに90dBのS/N比性能を達成しているほか、6もしくは4チャネルオプションも提供している。また、オプションとしてオーバサンプリングモードを提供しており、S/N比を改善し、コードのバラつきを低減してアンチエイリアス除去機能を強化することが可能となっているほか、マルチチャネルの集積により、変電所機器の三相交流の電流および電圧測定と中点監視が可能となり、配電網監視システムは、電気的故障や短絡などの配電網に起きる異常事象の監視と対処が可能となる。

5Vのアナログ電源、1.8Vから5Vのロジック電源で動作し、入力クランプ±16.5Vのフロントエンド・アンチエリアス・フィルタを特長とするほか、オンチップ低ドロップアウト電圧レギュレータ(LDO)、リファレンス電源およびバッファ、トラック&ホールド回路、シグナル・コンディショニング回路、変換動作用のクロック、そして高速パラレルおよびシリアル・インタフェースを内蔵している。

さらに、0.1%のゲイン誤差と0.01%のオフセット誤差で、10kHzの-3dB入力帯域幅と1MΩのアナログ入力インピーダンスが提供される。加えて、最高200kSPSのスループットレートでのサンプリングと同時に、約40dBの減衰量のフロントエンド・アンチエリアス・フィルタを集積している。

4G基地局の設計開発向けトランシーバ

一方、同社ではシングルプラットフォームで、4Gピコセルとマイクロセル機器設計をサポートする高集積RF/デジタルベースバンド・トランシーバ「AD9356」「AD9357」も発表している。現在、サンプル出荷中。

2製品ともに、WiMAXやLTEなどの4G技術向けの基地局の設計・開発に用いられるもので、12ビットA/Dコンバータ(ADC)、D/Aコンバータ(DAC)、RF受信/送信シグナル・チェーン、オンチップ周波数シンセサイザを集積しており、組み込まれたリアルタイムコントロールやキャリブレーションループにより、工場でのキャリブレーションや試験時間の低減が可能になるという。

また、MIMOの展開をサポートするため、受信回路と送信回路をそれぞれ2個ずつ内蔵。送信回路のS/N比や4G基地局の要求条件に対応するほか、アンテナポートで出力パワー+13dBmから最高+36dBmまでのピコセルおよびマイクロセルもサポートする。これにより、設計者はこのトランシーバを配置し、フレキシブルなオンチップAGCアルゴリズムを用いることで、受信回路の性能を最適化することが可能となる。

いずれも2.3-2.7GHzおよび3.3-3.8GHzの範囲をサポート。既存のWiMAX帯域やチャネル帯域幅の3.5MHz、4.375MHz、5MHz、7MHz、8.75MHzおよび10MHzに対応しているほか、ノイズフィギュアは3dBとなっている。

このほか、同社の独自技術アーキテクチャ「マート・パーティショニング」を用いることで、RFドライバの開発負担を軽減。トランシーバのキャリブレーション時間が従来品の1/8となるほか、代替トランシーバの場合、8~10ポイントのキャリブレーションが必要になるのに対して、2製品ではクローズドループ・パワーコントロールにより、送信パワーのワンポイント・ファクトリ・キャリブレーションを実現する。