既報の通り、NASAは11日(米国時間)、スペースシャトル「アトランティス(Atlantis)」を打ち上げた。「STS-125」と名づけられた今回の主要ミッションはハッブル宇宙望遠鏡の"最後"の修理である。1990年4月に打ち上げられたハッブルはすでに当初予定されていた運用期間の15年を過ぎ、あちこちガタが来ているのだが、2013年に新しい宇宙望遠鏡「ジェームズ・ウェブ」(The James Webb Space Telescope: JWST)が運ばれるまでは、なんとか動いてもらわなくてはならない。

ハッブル打ち上げ時から稼動していた広域惑星カメラ「WFPC2(Wide Field/Planetary Camera 2)」は、今回のミッションで新しい広域カメラ「Wide Field Camera 3」に取り替えられることになる。下の写真は、WFPC2がその最後の仕事として我々に届けてくれたおくりもの - ある惑星状星雲の画像だ。

5月4日に撮影された、地球から4,600光年先、はくちょう座の方向にある惑星状星雲「コホーテク4-55(Kohoutek 4-55: K 4-55)」は惑星状星雲の研究者としても著名なチェコの天文学者 Lubos Kohoutek氏にちなんで名づけられた。赤い部分は窒素、緑は水素、青は酸素をそれぞれ示している

惑星状星雲は、太陽と同じくらいの質量をもつ恒星がその最期のときを迎える直前、赤色巨星となった際に放ったガスがその正体である。赤色巨星から白色矮星となった恒星の中核部分はまだ強い熱とエネルギーをもっており、紫外線が放出される。その紫外線が、赤色巨星のときのガス層を電離させ、明るく輝かせるのだ。

今のように性能の良い望遠鏡がなかった時代、ぼんやりと惑星のように見えたためにこの名がついている。

ここに写っているK 4-55は、真ん中の明るいリングを双極状のガスが取り巻いている。上下の方向にそれぞれガスが伸びていっているのがわかるだろうか。そしてさらに、かすかに赤く光る窒素の層が星雲全体を包んでいるように見える。惑星状星雲は数あるが、このような多層構造の星雲はあまり多くはないそうだ。

16年にわたり数々の美しい写真を撮り続けたWFPC2は静かにその役目を終えた。最後の仕事を彩るにふさわしい1枚を残して。