半導体ファブレスの独Dialog Semiconductorは2月10日、システムパワーマネジメントIC(PMIC)「DA9052」を発表した。同製品は、主だったアプリケーションおよびグラフィックプロセッサ各種に対応したICで、自由度の高い開発が可能になるという。すでにサンプル出荷を開始しており、価格は1,000個で3.80ドルとしている。

独Dialog Semiconductor,Director of Marketing,Audioo & Power ManagementのMark Jacob氏

従来、PMICは特定のアプリケーションプロセッサなどに特化する形で提供されており、同社 Director of Marketing,Audioo & Power ManagementのMark Jacob氏は、「コスト低減や差別化を図るためのプラットフォーム変更の場合、別のPMICを用意する必要があった」とし、「そうした課題に対し、ディスクリートの柔軟性とASSPが持つ高性能と高集積を実現するDialogのプラットフォームPMICが解決策になる」(同)と語る。

携帯機器やデジタル家電などのカスタマは電源に対し、バッテリを有効活用する高効率、スタンバイモード時の低消費電力、過熱のない急速充電、切り替えがスムーズがパワースイッチ、パワーアップ/ダウン時の適切なソフトとハードのコントロール、広範なGPIOサポートなどの機能を求めているが、最近では「仕様変更に伴うペリフェラルの変更や部品の追加をせずに電源を再利用するためのフレキシビリティ」や「コストの抑制のために、異なる動作電圧/電流とコントロールインタフェースを1チップでサポート」といった要求も出てきているという。

プラットフォームPMICでカスタマの要求に応えることが可能となる

こうした要求に対し、DA9052では300程度の設定項目を用意することにより対応している。集積されている主な回路は、すべてコンフィグが可能な4個のDC/DCバックコンバータや10個のプログラマブルLDOで、システムの効率向上を目的に、DC/DCコンバータの出力をLDOに入力することが可能だ。さらに、プロセッサのタスクごとの電力の最適化を目的に、最大5個の出力に対し、ダイナミック・ボルテージ・. スケーリングをすることが可能だ。なお、LDOには、同社が独自に開発したダイナミックバイアス技術「Smart Mirror」が用いられている。加えて、3×5の直列LED用ブーストドライバやスイッチングDC/DCチャージャ、10ビット汎用ADコンバータ&TSC、16個のGPIOなども搭載している。

DA9052に搭載される主な回路

設定項目については、搭載しているフラッシュメモリを用いたOTP(One Time Programmable)メモリに書き込むことで、それぞれの環境に応じた設定を読み出すことが可能だ。また、一般的な電源ICと同様、外部からレジスタのデータを読み出して環境を構成することも可能。

こうした設定を行うためのプログラマブル用ソフトウェア「パワーコマンダー」も併せて提供を行う。同ソフトでは、ユーザーが直感的ながら細かい設定を行うことが可能。このソフトを用いてデモボード上で設定を行い、実アプリケーションのボードに移す場合に、OTPに設定を書き込むといった使い方をする。

「パワーコマンダー」の画面(左が起動状態で、右が各LDOなどの起動タイミングなどを設定する画面を出したところ)

実際の量産の時は、「カスタマ側でOTPに直接書き込むことも可能だが、Dialog側で設定情報を受け取って、それを書き込んだ状態で出荷することで品質の保証ができる」(同)とする。

また、同氏は、「ロジック回路ではFPGAの登場によりさまざまな要求に応えられるようになったが、電源についてもこのASSPにより、さまざまな要求に柔軟に対応できるようになった」としており、関連製品含めて2009年中に順次製品の立ち上げを進めていくとした。

なお、DA9052のパッケージは0.5mmピッチのdual-rowのQFN86(7mm×7mm)を採用しており、アナログの0.25μmプロセスを採用しているという。

DA9052のデモボード(設定を変更することで、左から右のように変化した。具体的にはLDOの一部が停止し、代わりにLEDが光っている)

DA9052の評価ボード(中央のチップがDA9052)