かねて小誌でもお伝えしていた通り、NASAが火星に送った双子の探査機「Mars Exploration Rover(MER)」は21日(現地時間)をもって、無事に5周年を迎えた。6年目の探査活動に乗り出した今も、双子の兄弟 - SpiritとOpportunityは美しく貴重な画像を我々に届けてくれている。

双子ローバーの"兄貴"のほう、グゼフ・クレーターで活動中のSpiritが2005年10月に3日間かけて撮影した「ハズバンド・ヒル(Husband Hill)」頂上付近からの360度パノラマ画像。NASAはこの画像を「エベレスト・パノラマ」と名付けている。Spirit自身のソーラーパネルが写り込んでいるのがご愛敬。QuickTimeによるパノラマ画像はこちら

上の画像はよく見ると、モザイク状に張り合わされているのがわかるだろう。ご存じの向きも多いと思うが、火星の砂嵐は「砂の悪魔(dust devil)」と表現されるほど激しいもので、地球上のそれとは比較にならない破壊力をもつ。激しい砂嵐に襲われては、その砂を自ら振り払い、また撮影を開始する……そうやってなんとか1回転して撮った貴重な画像だ。

カリフォルニアにあるNASAジェット推進研究所(JPL)でローバーのオペレーションに携わるスタッフは、それこそ我が子のように彼らの一挙一動を見守っている。岩だらけの丘を登り、また降り、砂を振り払い、撮影し、データを送り続けるSpiritとOpportunity。スタッフは火星の1昼夜単位(sol: 約24時間40分)で行動し、いろんな恐怖(脱輪しないか、バッテリーは大丈夫か、カメラやロボティックアームの故障は、etc…)にローバーたちと共に耐えてきた。JPLのロボティック・エンジニアであるAshley Stroupe氏は、この5年間をローバーたちと「共に育ってきた」と表現し、彼らと一緒に重要な発見を数多く成してきたことを「心から幸せに感じる」とブログに綴っている。「Five years on Mars? That's just the beginning. - 火星に5年? そんなの始まりに過ぎないわ」 - 多くの人の思いをのせて、双子は6年目の軌跡を描き始めた。