米Akamai Technologiesの日本法人であるアカマイは1月21日、Microsoftの「Silverlight」を活用した、高精細(HD)動画ストリーミングサービス「AdaptiveEdge Streaming for Microsoft Silverlight」のTech Preview版(技術検証用サービス)の提供を日本で開始したことを発表した。

同サービスは、同社が展開する世界規模のHTTPを基盤とする分散型Webサーバネットワーク「Edge Network」を経由することで、ネットワーク上にデータをキャッシング、ユーザー側は途中で止まるなどといったストレス無く動画視聴を行うことが可能となる。

「AdaptiveEdge Streaming for Microsoft Silverlight」のワークフロー(Akamaiのサーバにより、URLをAkamai化することによりユーザーは近くてキャッシュにヒットしやすい最適なサーバにアクセスすることができるほか、Akamaiサーバ上にストリームデータをキャッシュとして保持することにより、ユーザへのレスポンスを高速にすることができる)

また、Silverlightと共に、MicrosoftのWebサーバ技術「Internet Information Services 7.0 Smooth Streaming(IIS7 Smooth Streaming)」が用いられる。同技術は、ユーザーの接続環境に応じて、映像ストリームの室をリアルタイムで適応させることでバッファリングを必要としない即時の映像起動や動画ストリーミングを可能にするアダプティブストリーミングを実現する。

アカマイの代表取締役で、Akamai Technologiesの日本担当副社長でもある小俣修一氏

アカマイの代表取締役であり、米国本社の日本担当副社長でもある小俣修一氏は、「Akamaiの提供するネットワークの転送レートは、通常の多い時で1Tbpsだが、今回提供を開始した技術を公式に初めて適用した20日正午(現地時間)に行われたオバマ新米国大統領の就任演説の中継では2Tbpsに達した」とし、「2009年のインターネット業界はHD動画に注目が集まってくる年」とする。

HD動画を配信するためには、「コンテンツの管理や配信、シンジケート含むコントロール、ユーザーへの提供形態などをどうするか」「視聴者であるユーザー側のインタフェースがユーザビリティかどうか」「テレビのチャネルを切り替えるかのようなレスポンスでの画面の切り替えが可能かどうか」の3つが求められるという。「AdaptiveEdge Streaming for Microsoft Silverlightは、この3つ目の課題に対応する技術であり、これにより、企業などでもHD品質の動画を気軽に使用してもらえるようになる」(同)とする。

同技術による映像は、Akamaiの提供するデモサイト「smoothHD」で視聴することが可能なので、興味のある人は見てみると良いだろう。

「smoothHD」の画面(下にチャネル変更ボタンがあり、それを押すことで違う映像を瞬時に再生できる)

気になるサービス提供のスケジュールは、21日からVODに対応したTech Preview版(技術検証用サービス)の提供が開始されたが、それ以降としては3月18日より開催される「Microsoft MIX09」において商用向けβ版の発表が予定されている。なお、β版では、ライブ・イベント機能も搭載されるようになるとしており、「テレビのような放送形態をHDで実現できるようになることで、放送とインターネットの融合が本格化する時が来た」(同)とする。なお、商用サービスとしては、6月を予定している。

また、HD動画配信に3つの要素が必要と先述したが、Akamaiでは、残りの2つに対応する技術として、Silverlightをベースにしたメディアプレーヤの開発リソース・キット「メディアプレーヤーフレームワーク(Media Framework)」の提供も開始することを発表している。

同キットは、Akamaiベースのワークフローと同様にYahoo!形式RSSなどをサポートするコードライブラリを提供。これにより、開発者はSilverlightによる映像プレーヤを容易に開発することが可能となる。

「Media Framework」の概念図(クラスライブラリや概念などを提供している)

「すでに米国でばCBSやNBCなどが独自のインタフェースによりHD動画でコンテンツを配信する技術を構築している。Akamaiはこうした企業にも技術を提供しており、それらを踏まえて今回のキットを構築した」(同)としており、用意された基本のメディアプレーヤ「Basic Media Player」上でコンフィグツールを用いることで画面構成やHTML用の埋め込みコードの自動生成、共有設定などを設定することが可能となる。

コンフィグツールなどを用いることにより、細かな機能設定を行うことができるようになる

マイクロソフトの執行役デベロッパー&プラットフォーム統括本部長の大場章弘氏

なお、マイクロソフトの執行役デベロッパー&プラットフォーム統括本部長の大場章弘氏は、「現在、ITを活用することで、ビジネスを拡大することが重要になってきている。そうした意味では、MicrosoftとAkamaiが協力するという動きは、Microsoft側にとっても重要であり、これによりユーザーエクスペリエンスを高めることが可能になる」と語る。

Silverlightの歩み

また、「Microsoftの技術とAkamaiのグローバルネットワークを活用することにより、ユーザーにストレスのないHDの動画を提供し、それを使う企業の活性化の手助けをしていければと思っている。今後の2社の活動に注目してもらいたい」と抱負を語っている。

握手を交わす大場氏(左)と小俣氏(右)