ゼットエムピー(ZMP)と首都大学東京のシステムデザイン学部教授の山口亨氏は12月17日、カーロボティクス・プラットフォームの共同研究を開始することを発表した。両者は、同研究を通して、ロボット技術を用いた、人間と自動車のインタラクションに関するアプリケーションの開発を計画している。同研究で用いられるプラットフォームは、即日受注を開始し、2009年4月からの出荷が予定されている。価格は50万円前後を予定とのこと。

握手を交わすZMP代表取締役社長の谷口恒氏(左)と首都大学東京システムデザイン学部教授の山口亨氏(右)

ZMPの谷口氏

ZMPの代表取締役社長である谷口恒氏は、今回のプラットフォーム提供の意義を「自動車関連アプリケーションの開発には、膨大なコストがかかり、場合によっては政府系機関などの支援も必要となっていたのが常であった」としつつ、「自動車の1/10サイズのプラットフォームの提供により、開発コストを低減させることができるほか、路上実験の回数などを減らすことができるようになる」と語り、「日本発で世界で使用してもらえるような研究プラットフォームを目指す」と意気込む。また、「環境対策関連アプリケーションとしての活用も狙う」という。

首都大学東京の山口教授

一方、山口教授は、「人と車の相互作用を考えると、人は車の使い方を理解しているが、車は人のことを理解していない」と、一方通行の状態であると指摘、「ネットワークを活用することで、車がドライバに対して支援できるようになる」とし、そのためにはシミュレータの活用と、研究室でできる1/10スケールモデルの活用などが重要であるとした。

同プラットフォームのターゲットとしては、「自律移動、自動車間通信、自動車と人間とのインタラクションなどの初期研究に活用する企業などのほか、大学や企業などの制御理論学習、自動制御学習、開発プロセス教育に活用することで、産学をつなぐエンジニア育成教材としても提供する」(谷口氏)という。

カーロボティクス・プラットフォームのニーズ

具体的には、「電子回路」「アクチュエータ」「機械設計」「制御システム設計」「認識」「ヒューマンマシン・インタラクティブ」「ソフトウェア」「組み込みシステム」の8つの分野を体系化することで、それぞれに提供を図っていくという。

カーロボティクス・プラットフォームがカバーする工学分野

また、ZMPでは、同プラットフォームに対して、従来提供してきた「e-nuvo」のノウハウを投入するだけではなく、e-nuvoとの組み合わせなども視野に入れた取り組みを行っていくという。

将来的にはe-nuvoとの組み合わせなども検討していく

PTCジャパンの営業技術部 プリンシパル アプリケーション スペシャリストの芸林盾氏

シミュレーションとして用いられる車体の設計には、PTCの「Pro/ENGINEER」が用いられている。PTCジャパンの営業技術部 プリンシパル アプリケーション スペシャリストの芸林盾氏は、「Pro/ENGINEER」は、製造業すべてをサポートするソフトウェアとして2003年にZMPが提供を開始したロボット「PINO(Ver.2)」より活用してもらっており、今回の自動車モデルの提供で、より幅が広がった」とする。

1/10のスケールモデルにはVGA(30fps)の撮影が可能なCCDカメラが2台搭載され、その処理をNECエレクトロニクスのIMAPCARにて行うことができる。また、3軸のジャイロセンサ、加速度センサ、オドメトリが搭載されるほか、オプションとしてレーザーレンジファインダが提供される。さらに、赤外線測距ユニットが12個付属し、ユーザーは自由にユニットを配置することが可能となっている。

システムの構成図(左)とソフトウェアの構成図(右)

仕様の概要と各種センサなどのレイアウトイメージ

プラットフォームの本体となる車体には、CPUも搭載しており、OSの動作のほか、ZMPが提供する画像処理やセンサ各種のAPI,ユーザーが開発したAPIなどを搭載することが可能である。

また、ZMPでは、ライブラリの提供のほか、白線認識などを実現するためのサンプルプログラムやテキストなどの提供も行っていくとしているほか、首都大学東京側では、「研究成果はオープンソースとして提供を行っていく」(山口氏)とする。

カーロボティクス・プラットフォームの活用例

今後の予定としては、電流値モニタなども搭載し、車両構成や積載量、群制御などによるエネルギー消費の研究や教育などでの活用も目指していくという。