テレビ番組をストリーミング配信する「NHKオンデマンド」が1日、スタートした。大河ドラマやNHKスペシャルなどを放送後1週間程度配信する『見逃し番組』と、過去の人気番組などを配信する『特選ライブラリー』を配信。ブロードバンド回線に接続したPCや「アクトビラ・フル」対応テレビ、ケーブルテレビなどで視聴できる。

「NHKオンデマンド」トップページ画面

NHKオンデマンドで配信するのは、以下の3種類。

  1. 「見逃し番組」 - NHK総合、教育、BSハイビジョン、BS1、BS2の5波の番組から、1日10~15番組を放送の翌日から1週間程度配信

  2. 「ニュース番組」 - 「おはよう日本」「ひるのニュース」「BS列島ニュース」「ニュース7」「ニュースウオッチ9」を放送後数時間で配信を開始して1週間配信。

  3. 「特選ライブラリー」 - NHKアーカイブスに保存されている過去に放送された名作や人気番組などおよそ1,000本の番組を権利許諾期間に応じて配信

1日のスタート時には、見逃し番組は122本、特選ライブラリー1,100本程度を配信(予定)。

主なラインナップは以下の通りとなっている。

見逃し番組(1日10~15番組を放送の翌日から1週間程度配信) 特選ライブラリー(およそ1,000本の番組を権利許諾期間に応じて配信)
連続テレビ小説 「だんだん」 「映像の世紀」第1集~第11集
大河ドラマ「天地人」 NHK特集「85歳の執念 行革の顔 土光敏夫」
経済最前線 「新選組池田屋騒動」
プロフェッショナル 仕事の流儀 ETV特集「フジコ~あるピアニストの軌跡」
ドキュメント にっぽんの現場 NHK特集「東京大空襲 極秘爆撃命令書入手」
その時 歴史が動いた 「プロジェクトX 挑戦者たち」から
「日米逆転! コンビニを作った素人たち」
ダーウィンが来た! ~生きもの新伝説~ 「人間ドキュメント」から
「ピース5歳 日本初ホッキョクグマ哺育物語」
きよしとこの夜 「関口知宏の中国鉄道大紀行」

(詳しくは、NHKオンデマンドBLOG「配信予定番組のラインナップについて」を参照)

視聴方法は、PC、テレビに対応

視聴するには、ブロードバンド回線に接続したPCまたはテレビが必要。PCの場合はWebサイト上でコンテンツを購入し、ビットレートを選択して(768kbps、1.5Mbps)視聴する。対応OSはWindows XP SP2以降/ Windows Vista(32bit)、Windows Media Player 10以降、Internet Explorer 6.0以降が必要.。Mac OSでの視聴には対応していないほか、DRM保護により録画保存はできない。決済にはクレジットカードまたは「Yahoo!ウォレット」を利用し、決済種別ごとに月間利用額3万円の制限を設ける。テレビで視聴する場合は「アクトビラ・フル」対応のテレビか、NTTぷららのテレビ向け映像配信サービス「ひかりTV」の利用が条件。ジュピターテレコム(JCOM)のビデオオンデマンドサービス「J:COMオンデマンド」で視聴することも可能だ。

料金は、「見逃し番組」サービスが、ドラマやドキュメンタリー、歌番組など、基本を単品315円(税込)に設定。「経済最前線」「さわやか自然百景」「きょうの健康」など、30分以下の教養番組、趣味実用系番組は、単品210円(税込)で提供。連続テレビ小説「だんだん」(15分)、「時論公論」(10分)などは、単品105円(税込)で提供する。定額パックも用意されており、1カ月間(毎月1日~月末)見逃し番組やニュースが見放題の「見逃し 見放題パック」は、月額1,470円(税込)で提供。

「特選ライブラリー」サービスでは、大河ドラマ、連続テレビ小説、NHKスペシャル「シルクロード」「プロジェクトX」など、単品販売の基本を315円(税込)に設定。見逃し番組と同様、30分以下の番組で、教養番組として多くの人に見てほしいとする番組、趣味実用系番組を210円(税込)で提供。ドラマ「恋セヨ乙女」、アニメ「おじゃる丸」「きょうの料理」「おしゃれ工房」などが210円となる。「みんなの歌」「名曲アルバム」「100語でスタート英会話」などは105円で提供する。特選ライブラリーのパック割引では、本数や内容によって15%~25%値引きするとしている。

「現行の著作権法に問題」との議論に一石投じる可能性

通信回線で番組を配信するには、現在の著作権法では、「放送」と「通信」の権利許諾がまったく別の扱いとなっている。権利者に対して放送と通信では別々の許諾を取り、権料を支払う必要があり、こうした事情もあって、放送番組のインターネット配信は欧米に比べ遅れをとっていた。

今年4月の改正放送法施行により、NHKの任意業務として通信回線を使って番組を有料提供可能に。これ以降、NHKでは著作権者との権利許諾交渉を順次進め、当初予定通り、12月1日からの開始を実現することが可能となった。これにより、総務省などで議論されてきた"放送と通信の融合"がいよいよ本格化する。

料金は、4月に施行された改正放送法において、本来の放送事業と会計を明確に区分して運営することが第39条で義務付け。「受信料という公的な資金を利用してVOD市場に入っていくことは、公正競争上にも影響を及ぼす」(NHK)とし、受信料とは別の利用料金となる。

NHKの放送総局特別主幹の関本好則氏は、NHKオンデマンドサービスについて、「常時800~1,000本の番組が流れている状態となる予定で、BBCなど欧州の国々のサービスと比べてもひけをとらない内容となる」と発言。

現行の著作権法の下でサービス開始にこぎつけたNHKオンデマンドがBBCのように成功すれば、「デジタルコンテンツの流通が活発化しない原因は、現在の著作権法に問題がある」とする日本の論者らの前提を覆す可能性もあり、その行方が注目される。