マイクロソフトは24日、クライアント仮想化製品について体系的に説明するプレス向けの説明会を開催した。

ビジネスWindows本部 マネージャーの東條英俊氏

米Microsoftでは10月13日に次期クライアントOSの正式名称を「Windows 7」に決定したと発表したが、一方で旧世代の「Windows XP」は2009年4月にメインストリームのサポートが終了、その後は延長サポートフェーズとして2014年4月までサービス提供が行われることになる。この点について、ビジネスWindows本部 マネージャーの東條英俊氏は「一般ユーザーは延長サポートフェーズで考えがちですが、企業はメインストリームで考える必要があります」と語る。

これは、基本的に延長サポートフェーズではセキュリティ面のみのサポートとなるため、万が一OSで不具合が見つかったとしてもアプリケーション側で回避する設計が要求されるからだ。イレギュラーな設計はWindows VistaやWindows 7へ移行した際にも残り、後の対応やコストにも大きな影響を及ぼす。そこで東條氏は「企業は現在あるアプリケーションをWindows Vistaへ迅速に対応させていくことが必要であり、マイクロソフトではクライアント仮想化の技術でアプリケーション移行を支援していきます」と語る。

多くの企業ではリースなどを含めて4-5年のサイクルでPC交換が行われている。しかし、PC内のハードウェア、OS、アプリケーション、データが密接な結び付きを持っているため個別のアップグレードは困難だ。すべてを同時に見直す状況を強いられており、当然ながらPCの入れ替え時にはアプリケーションの更新コストが急増してしまう。そこでマイクロソフトが提案するのが、クライアント仮想化でOSとアプリケーションを切り離し、更新コストの平準化を図る手法である。

クライアント仮想化でアプリケーション更新の投資平準化が可能

マイクロソフトが提唱する仮想化戦略「Microsoft 360 Virtualization」では、運用管理の集中化が可能な仮想化環境管理ソリューション「Microsoft System Center Virtual Machine Manager 2008」を中心として、サーバ、デスクトップ、アプリケーション、プレゼンテーションという4種類の領域で仮想化を実現している。この中でもアプリケーション移行で特に重要となるのが、プレゼンテーションの仮想化を担う「Windows Server 2008 Terminal Services」と、アプリケーションの仮想化を担う「Application Virtualization(App-V)」の存在だ。

仮想化戦略「Microsoft 360 Virtualization」で実現する4つの領域での仮想化

アプリケーションおよびプレゼンテーションの仮想化により柔軟な移行が可能

Windows Server 2008 Terminal Servicesでは、情報をサーバ側に保持したまま個別アプリケーションへのアクセスを集中管理することが可能。サーバのリソースを利用するためスペックの低いPCなど旧資産を有効活用できるほか、シンクライアントと同等の高いセキュリティレベル、管理コストを抑えたクライアント環境を実現している。新機能の「Terminal Services RemoteApp」では、従来の「リモートデスクトップ」のようにデスクトップ画面全体ではなくアプリケーション画面のみを転送するため、ユーザーの利便性を損なわずに利用可能。また、VPN接続を構成しなくともユーザーがインターネット経由でセキュアに企業ネットワークへ接続できる「Terminal Services Gateway」も特徴のひとつだ。

「Windows Server 2008 Terminal Services」を用いたプレゼンテーションの仮想化

アプリケーション画面のみの転送で利便性を高めた「Terminal Services RemoteApp

インターネット経由でセキュアに接続できる「Terminal Services Gateway」

「Microsoft Desktop Optimization Pack(MDOP)」に含まれるApp-Vは、従来「SoftGrid Application Virtualization」として提供されていたもので、DLLなど必要なファイルをサーバ側で管理するためアプリケーション競合を解消できるほか、設定情報のストリーミング配信やグループ単位でのアクセス管理によりアプリケーションの集中管理を実現。

さらに、新バージョンの「App-V 4.5」では11言語に及ぶ多言語対応やセキュリティの強化、さらには「System Center Configuration Manager(SCCM)2007 R2」との完全融合によるスケーラビリティの強化が図られている。

2006年6月のSoftricity買収から、App-Vとして提供が開始されるまでの経緯

仮想化によりアプリケーション競合を解消

もうひとつのメリットであるアプリケーションの集中管理

新バージョン「App-V 4.5」で強化されたポイント

「仮想化技術は企業の投資を平準化し、理想的かつ新しいIT投資のサイクルを生み出していくと確信しています」と語る東條氏。同社ではクライアント仮想化の普及に向けた支援施策として、11月5日よりパートナー企業と協力して全国13カ所でのセミナーも開催する予定だ。