NECエレクトロニクスは10月15日、NECの中央研究所が開発した並列プロセッサ技術を活用した画像認識用LSI「IMAPCAR2」4品種を開発、2009年上期より順次サンプル出荷を開始すると発表した。

「IMAPCAR2-300」のパッケージ外観(780ピンFCBGA採用でパッケージサイズは28mm□)

NECエレクトロニクス 自動車システム事業部長の金子博昭氏

同製品は、NECエレクトロニクスが2006年8月に発表した画像認識用並列プロセッサ「IMAPCAR」の流れをくむ第2世代品。これについて、同社自動車システム事業部長の金子博昭氏は、「第2世代では、複数の品種を用意したことにより、より多くのニーズに対応できるようになったこともあり画像認識用LSIの市場拡大を狙っていく」とする。

特に、前世代から製品の提供を行ってきた自動車分野に関しては、「"安全""環境""快適"の3つをキーワードに、運転支援に関する要求が世界的に高まってきている。まずはハイエンドの自動車からの適用となると思うが、どの程度のクラスの自動車まで適用できるかは、実装技術で決まってくるはず」(同)と、幅広い車種での適用を目指す。

今後のクルマの方向性("安全"快適"""環境"の3つがキーワードに)

自動車分野では、欧米諸国で、リアビューモニタの法制化・標準装備化などの議論が行われており、同社としても2010年ころより、世界的に自動車へセンシング技術を内蔵したカメラの搭載が急速に進むと見ており、その入力画像に対し、リアルタイムで処理ができる性能をIMAPCAR2に持たせたという。

前世代のIMAPCARは、128個の演算ユニット(PE:Processor Element)を持ち、それが同一命令に従うSIMD(Single Instruction Multiple Date)動作を行うことで、処理速度を向上させていたほか、1サイクルで4命令を同時実行可能な4Way VLIW方式が取り入れられていた。

IMAPCAR2では、基本的な部分は変更せず、PEの処理単位を8ビットから16ビットへ拡大、同時実行命令数を4命令から5命令へ増加、バンド幅拡大による通信強化が行われた。

PEの16ビット化、同時実効命令数の増加などにより性能を向上

また、PE4つを1つのプロセッシングユニット(PU)とし、内3つのPEをFPU(Floating Point number processing Unit:浮動小数点演算装置)とすることで、浮動小数点演算に対応、マルチプロセッサ動作が可能となり、複数のタスクの同時実行などが可能となった。これらの改良により、処理性能は最大で従来製品の3倍まで向上したという。

PEを3つ組み合わせることでFPUを形成(これにより浮動小数点演算が可能となった)

IMAPCAR2は、処理性能ごとに「IMAPCAR2-300(270GOPS)」「同200(170GOPS)」「同100(84GOPS)」「同50(42GOPS)」の4製品がラインナップ。最上位の300が90nmプロセスを採用する以外は55nmプロセスで製造される。300が90nmを採用した理由は、「先行して商談を進めているカスタマが早い段階での製品供給を希望しているため、実績のあるプロセスを選んだ」(同)とのことで、状況次第では55nmプロセス化もあり得るという。

処理性能の違いにより用途に応じた製品の選択が可能となった

価格は前世代のサンプル価格が2万円だったが、「パッケージの小型化、ならびに回路とアーキテクチャの工夫によるSiの面積削減」(同)により前世代と同程度の性能を有するIMAPCAR2-100で4000円と実質1/5へと低減された。

なお、同社では、今後の事業展開として2010年ころから急速に立ち上がる車載用画像認識システム市場が2015年ころには500億円市場にまで成長すると見ており、この内の40%のシェアを獲得したいとしている。

IMAPCAR2-300を搭載した評価ボード