米Googleのチーフインターネット・エバンゲリストであり、"インターネットの父"として知られるVint Cerf氏が、P2Pトラフィック問題に起因するブロードバンド・ネットワーク管理についてコメントを公開した。その中でインターネットサービスプロバイダー(ISP)に対して、Transmission rate capによるサービス提供を提案している。
8月1日(米国時間)、米連邦通信委員会(FCC)が米ケーブル事業者大手Comcastに対して、BitTorrentのトラフィックをブロックした行為を違法とする判断を下した。Comcastは帯域全体の過半数をBitTorrentユーザーに占められた窮状を訴え、ユーザー全体の接続品質を守るための対策だったと主張したが、最終的にはネットの中立性に反する行為と認定され、さらに同社のビジネス的な思惑やBitTorrentユーザーを識別するプロセスの問題なども指摘された。
トラフィック問題についてCerf氏は、Comcastなどの接続品質を維持するための対策が必要であるという主張は的を射ていると述べる。「すべてのコミュニケーション・ネットワークにおいて、ネットワークキャパシティが制限として存在する。利用可能なネットワークキャパシティを超えたトラフィックを送ることなどできないのだ。ユーザー全体の要求が利用可能なキャパシティを超えた場合、ネットワークオペレータがトラフィック管理の方法を模索して然るべきである」と同氏。ネットの中立性の維持とは別に、ブロードバンドプロバイダーがインターネットのトラフィックを管理するための妥当なアプローチについて考えなければ、トラフィックの混雑とサービスの停滞は避けられないとしている。
現時点で検討されている管理方法として、まず一定期間にユーザーが自由に伝送できるデータ量に上限を設ける方法(Volume cap)が挙げられる。これはユーザーの自由なインターネット利用に枠を設けるようなものである。また枠があっても、短時間にデータ転送が集中すればネットワークが圧迫される結果になる。利用したデータ量に応じた料金を支払う従量制も検討されている。過度な利用を防ぎ、必要な人が必要な分だけを利用できるようになると期待されている。だが、これもトラフィックが集中する時間帯の問題解決につながらない可能性がある。また、ユーザーが月々の通信コストを予測しにくいという問題があり、コストへの懸念がインターネット利用への関心を削ぎかねない。いずれも消費者にとって、十分に実用的とは言い難いのが現状だ。
そこでCerf氏が勧めるのは、必要なトランスミッション(伝送)レートに線引きしたサービス(Transmission rate cap)の導入だ。今日ISPが数十Mbpsのスピードを宣伝していても、それは可能性であって、実際にそのスピードで常時インターネットを利用できるわけではない。ISPは、そのような目安にならない可能性の数値でサービスを売るのではなく、「ユーザーが必要なデータレートを目安にインターネット接続を購入できるようにし、少なくともそのレートまで自由にデータを伝送できるようにする」(Cerf氏)。例えば、電子メールとシンプルなWebサイトをいくつかブラウズするだけなら1Mbps程度のサービスでも十分だろうし、ビデオ配信を多用しているユーザーならば3Mbps以上のサービスを希望するだろう。ユーザーは個々のインターネット利用スタイルに必要なスピードのサービスを契約し、ISPはそのスループットの提供に努める。トラフィックのピーク時の状況は、ISPの予測の範囲におさまるはずだ。ユーザーは必要な品質のサービスを無駄なく購入・利用でき、データ伝送量の制限にしばられることもない。必要以上のサービスを契約すれば、ユーザーにとっては余計なコストになる。シンプルなソリューションで、かつネットの中立性も守られる。
Transmission rate capという提案を行う一方でCerf氏は、「個人的には、インターネットのトラフィックはアプリケーションやプロトコルに配慮して管理されるべきだと考えている」と、Comcastなどのネットワーク管理にも理解を示す。Transmission rate capを導入しても、ネットワークキャパシティの上限の存在に変わりはなく、ブロードバンドプロバイダーによる効率性を改善する取り組みは不可欠だ。「今日のブロードバンド・ネットワークについて、すでに問題は管理する必要性の有無ではなく、どのように管理するかなのだ」と指摘する。同氏としては、ネットの中立性が守られるべきという姿勢に変わりはない。例えばISPが低レイテンシのパケットを優先すべきだと考えているが、特定のアプリケーションを優先するのではなく、全てのトラフィックに対して平等に実施されるべきだとしている。また帯域制限についても、包括的なアプローチは避け、実際に混雑する時間帯のみに制限をかける綿密なネットワーク管理を求めている。
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