検索者の目的や環境に即した結果を提供するために検索サービスはユーザーのデータを収集し、それを検索のカスタマイズに利用している。より正確で便利な検索が実現する一方で、ユーザーデータの収集にはプライバシー侵害を指摘する声もある。米Googleは7月30日(米国時間)、検索結果のカスタマイズに利用したユーザーデータに関する情報をGoogle Web Searchで明示することを明らかにした。数日中にメッセージが検索結果に表示されるようになる。Googleがどのようにユーザーデータを収集・利用し、どのように役立てているかをユーザーに把握してもらい、検索結果のカスタマイズの透明性を高めるのが狙いだ。

Googleが検索結果のカスタマイズに利用しているユーザー情報は3つ。まず「ロケーション」。IPアドレスを基に市町村規模のロケーションを特定する。例えば全米で聴けるFMプログラムをサンフランシスコから検索した場合、同市のFM局での放送に関する情報が上位になる。IPアドレス以外にもGoogleアカウントを持つユーザーがデフォルトで利用するロケーションを指定していれば、その情報がGoogleのサービス全体に反映されている。2つめは「最近の検索」だ。検索語の意味は1つとは限らず、様々な意味が含まれているケースの方が多い。例えば"Apple"は、くだものとパソコンメーカーのまったく異なる2つを示す。そこでGoogleではユーザーの直前の検索履歴を参考に結果をカスタマイズしている。ユーザーがGoogleやMicrosoftなどテクノロジ関連の検索を行っていれば、パソコンメーカーのAppleを優先する。最後が「Webの履歴」。Googleアカウントでサインインし、Web Historyをオン設定にしている場合、ユーザーのWebサイトの閲覧動向が記録され、そのデータが検索結果に反映される。

サンフランシスコのロケーションで検索結果がカスタマイズされたことを示すメッセージ

GoogleのWeb検索において結果のカスタマイズが行われた場合、「Customized for San Francisco metro area, US. More details (米国サンフランシスコ市向けにカスタマイズされています。詳細はこちら)」というようなメッセージが右上に表示されるようになる。メッセージの例はGoogleの公式ブログで公開されている。More detailsをクリックするとロケーション、最近の検索、Web履歴から、どのようなデータが利用されたかが具体的に表示される。Web Historyがオンになっているのを知らずに利用していたユーザーも、Web履歴の情報を通じて、同機能をオフにしたり特定のデータを省くなどして、Webサイト利用動向のモニターを自身が管理できることを理解できる。ロケーションが異なっている場合、「他のロケーションを利用する」というリンクから居場所を設定し直せば、より正確な検索結果を得られる。

ユーザーデータ利用の情報開示は歓迎すべき動きと言えるが、必ずしもユーザーからの理解を得られるとは限らない。これまでユーザーデータの収集を特に意識していなかった人が現実を目の当たりにして不快に思い始める可能性もある。今回の透明性を高める決断が、どのように受け入れられるかが注目される。