パーソルホールディングスでは毎年「はたらくWell-being AWARDS」を開催しています。同アワードは、自らのキャリアを主体的に描き、選んで行動した結果、この1年間でもっとも“はたらくWell-being”を体現していた方に贈るアワードです。
今回は同アワードで選考委員を務めたtonari代表取締役・高橋弘樹氏と、N高グループ生徒会長・大杉優宙氏、そしてパーソルホールディングスからWell-being推進室室長・中山友希氏による座談会を実施! イベントへの想いや、“はたらくWell-being”についての考えなどについて語っていただきました。
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(写真左)株式会社tonari 代表取締役 プロデューサー/映像ディレクター 高橋弘樹氏/(写真中央)角川ドワンゴ学園N高等学校 2年生 生徒会長 大杉優宙氏/(写真右)パーソルホールディングス グループコミュニケーション本部 はたらくWell-being推進室 中山友希氏
パーソルホールディングスが「はたらくWell-being AWARDS」を実施する理由とは
――そもそもパーソルホールディングスは何故“はたらくWell-being”を推進しているのでしょうか。
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パーソルホールディングスは51年前、創業者である篠原欣子が女性活躍の場をつくることを目指し、人材派遣などを行う「テンプスタッフ」を設立したのが始まりです。以降ずっと、「はたらく」を軸に事業を行ってきました。 「はたらく」については皆さん、いろいろなことを思っておられます。ただ、ひとついえるのは「はたらく」は人生の多くの時間を割くことであり、その時間がちょっとでもいいものになったら素敵ですよね。私たちはそう考えて“はたらくWell-being”を推進しているんです。 |
――そこで実施されているのが「はたらくWell-being AWARDS」というわけですね。本企画の取り組みの背景を教えてください。
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“はたらくWell-being”を発信し続けても、うまく伝わらないこともあります。そこで、実際に“はたらくWell-being”を実践されている方の魅力的な活動や想いを紹介し、多くの人に“はたらく”について考えるきっかけを創出したいと思って「はたらくWell-being AWARDS」が始まりました。 アワードを通して多くの企業や国がもっと“はたらくWell-being”に向き合ってくれるような、一種の“圧力”にもなればいいなと思っています。 |
――大杉さん、高橋さんは「はたらくWell-being AWARDS」で選考委員を務めましたが、印象的だった方はいますか?
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デザイナーのいしかわかずやさんです。私自身がデザインに興味あることもあって、印象に残っています。SNSを活用して発信されており衝撃を受けました。企業に所属していても、自分の中で「好き」を見つけて実行していけるというのは素敵ですよね。 |
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私はAgeWellJapanの赤木円香さんですね。社会課題の解決とビジネスを結びつけて事業を行っておられるところが本当にすごいなと思います。チャレンジしていく意思の強さがすばらしいです。 |
そもそも「ウェルビーイング」って何?
――選考委員を務めてみて、どう感じましたか。
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はたらくということは、私たち(高校生)にとって1年後、あるいは5年後に直結するテーマなんです。その中でこのようなお話をいただけたことは、すごく貴重な経験でした。私が高校生ということもあり、周囲では“はたらくWell-being”について知っている生徒は少なかったです。 |
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そこで選考にあたって、“はたらくWell-being”についてじっくり調べ、全員で話し合いました。その中で“はたらくWell-being”に関する解像度が高まってきて、「自分ならこんなはたらき方でウェルビーイングを体現していきたい」と考えるようになった生徒も出てきました。今回のアワードを通して、とても多くの気付きが得られたと思います。 |
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「はたらくWell-being AWARDS」を受賞された方は皆さん素敵で、取り組みにも感銘を受けました。その上で中山さんにお聞きしたいんですが、そもそもウェルビーイングって何でしょう? たぶん、読者の中には“はたらくWell-being”ってきれいごとじゃないかって感じている人もいると思うんですよ。 |
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ウェルビーイングは「よい状態」という意味の言葉です。よく日本語だと「幸せ」と訳されがちなのですが、もっと広い範囲を指すと思っていて。幸せというだけでなく、満足感とか充足感、納得感みたいなものも含む概念になります。 |
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アメリカのGallup社が5つの領域で調査をしていて、その領域のひとつに「仕事だけでなく人生もキャリアの一部だと捉えた上で、キャリア面で幸福を構築しているか」(キャリアウェルビーイング)があります。この重要性に着目したのが、パーソルグループが推進する“はたらくWell-being”です。 |
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単なる「幸せ」ではないということですね。たしかに私も選考委員を務めて感じましたが、幸せと苦しみっておそらくセットだと。だから、苦しみをことさらに隠して“はたらくWell-being”を強調するのは違うと思いました。 |
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ここは人によってぜんぜん違うところで、ある人は苦しみだと感じることでも、ある人は苦しみだと感じていなかったりする。だからこそ、仕事でつらいことを取り込んだ上で、その先に幸せがあるんだという考え方がいいと感じました。 |
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そうですね。“はたらくWell-being”は主観的なものです。人によっても違うし、同じ人でも時期によって変わったりもします。私も20代の頃の激務には戻りたくないですが(笑)、当時はそのはたらき方が充実していました。私にとっての“はたらくWell-being”が変わったということなんでしょう。 |
“はたらくWell-being”を決める要素は「体験・評価・自己決定」
――具体的に“はたらくWell-being”の基準はあるのでしょうか。
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私たちは3つの指標で“はたらくWell-being”を捉えています。それは「日々の仕事に喜びや楽しみを感じているか(体験)」、「自分の仕事は、人々の生活をより良くすることにつながっていると思うか(評価)」、「自分の仕事や働き方は、多くの選択肢の中から、自分が選べる状態か(自己決定)」という3点です。 |
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お聞きしていて、すごく深い指標だと思いました。3つの指標はそれぞれXYZの座標みたいに立体的な構造になっていると感じます。つまり、どれも同じ方向を向いていません。感情的に判断する指標もあれば、論理的に判断する指標もあって。自分がどれを満たしたとき、よりWell-beingな状態になるのかは、人によっても違うと思います。そう考えると、3つの観点があることで取りこぼしがなさそうですよね。 |
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たしかに、この3つは人間の欲求の大事なところをカバーしていると思いますね。3つすべてを満たす仕事は難しくても、1つか2つなら満たせるかもしれない。そのために努力するのか、あるいは人と違う価値観で判断していくのか。たとえば「わかりやすく楽しい仕事」は人気が高いけれど、世の中には「わかりにくいけれど、実はやってみると自分には楽しい仕事」もあるはずなんです。 |
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「はたらき方」も大事ですよね。私はおそらく会社に就職するというはたらき方は合わないと感じています。だから、将来は独立して、デザインや音楽などを通じて表現する仕事をしていきたいですね。 |
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つまり、さっきの要素でいうと3つめの「自己決定」ですね。たしかに、自分で自分をコントロールすることを重視するなら、組織は合わないかもしれませんね。 |
どうすれば“はたらくWell-being”を高めていけるのか
――3つの指標のひとつである「日々の仕事に喜びや楽しみを感じているか」ですが、実は日本では肯定的な回答をした方が75~80%未満(※)と、諸外国に比べて低い結果が出ています。
※引用 仕事における幸福(Well-being)の状況 ~世界各国の「はたらいて、笑おう。」調査データから見る~ 画像クリックで詳細へ
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そうなんだ! どうしてなんでしょうね。 |
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逆に日本は「自分の仕事は、人々の生活をより良くすることにつながっていると思うか」は高いんですよ。裏を返せば、「仕事は辛いけれど、何かしらの意味はあるはずだ」と信じたい人が多いわけです。これが中南米の国だと「日々の仕事に喜びや楽しみを感じているか」が高いんです。文化の違いがはっきり出ているのは興味深いですね。 |
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どうすれば「日々の仕事に喜びや楽しみを感じているか」が高められるのでしょうか。極端な話、もう会社を辞めるしかないですか? |
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それも選択肢のひとつですよね。辞めるまでいかなくても、異動とか仕事のやり方を変えるとか。「自分にとってもっと納得感のある仕事が他にもあるはずだ」と感じられることが大事だと思います。 |
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違う道があるというのは大事だと思います。進学や就職が近づいている中で思うのですが、日本だと「大学ならこのレベル以上じゃないと」「会社なら大企業がいい」みたいな価値観の人が多いように感じています。実際にはきっとそんなことはなくて。たとえばどんな仕事でもそれが仕事として成立している以上、社会に価値を提供しているし、求められていると思います。 |
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おっしゃるとおりです。そもそも日本はかなりレベルの高いところで自分と周りを比較してスコアを下げているような気もします。「経済的に豊かになるほど幸福度は低い」という話もあるようですし。 |
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自分に対しても社会に対しても要求水準が高いというのはありそうですね。ウェルビーイングの権威であるイギリスのオックスフォード大学の教授が来日した際、「日本に来てみてすばらしい体験をしている。だからこそウェルビーイングが低いんだ」とおっしゃったんです。ゴミは落ちていないし、電車は遅れないし、店員さんは皆親切で。ただ、そんなプレッシャーの中ではたらいて楽しいわけがないと。 |
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供給する側と消費する側の違いですね。そう考えると、「日々の仕事に喜びや楽しみを感じているか」が低くて、「自分の仕事は、人々の生活をより良くすることにつながっていると思うか」が高いという結果は当然なのかもしれませんね。
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そうなると、より「自己決定」が大事だと感じます。私が恵まれていると思うのは、家族や親族がさまざまなはたらき方をしていることです。そんな家族を見ていたからこそ、自分にはどんな仕事やはたらき方が合っているのかな? という発想に至れたと思います。たとえば、家族全員が会社員だったら、きっと私も会社員以外の道は想像できなかったんじゃないかなと。 |
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たしかに選択肢を持つことは大事ですよね。ただ、自由は常に“恐怖”とセットでもあります。だから、誰もが自由を選ぶわけではない。誰かに決めてほしい、自己決定したくないという人もいるんですよ。 |
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それはすごく大事な視点で、「自己決定」できることだけが良いわけではないんですよね。ある企業の社長がおっしゃっていたのですが、「決めることと、決めないことを、決められる」ことが大事なんだと。 |
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なるほど。さっきの例でいうと、“「自己決定したくない」ということを決めている状態”が、実はその人にとってのウェルビーイングになっているのかもしれませんね。 |
はたらくWell-being AWARDSに期待すること
――今後の「はたらくWell-being AWARDS」の展望や期待することを教えてください。
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「はたらくWell-being AWARDS」は今後も継続的に開催していきたいと考えています。毎年開催していると、受賞者の皆さんとも長いつながりができるので、そこから面白い展開が生まれたらいいなとも思います。また、N高の皆さんに参加していただいたのも、将来世代が大人を審査するという点がすごく面白くて、またぜひお願いしたいと考えています。 |
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「はたらくWell-being AWARDS」は順位をつけないところがいいなと思います。それぞれに合った形の“はたらくWell-being”があるからこそ、あくまでも選択肢を増やすという観点で開催されているのだなと。個人的には部門を毎年変えても面白そうだと思います。 |
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とても良いイベントだと思います。1年に1回、“はたらくWell-being”について考えるのはすごく意義がありますよね。“はたらくWell-being”をきれいごとにしないためにも、しっかりとイベントの背景を広めていきたいし、パーソルさんにもずっと哲学を守り続けてほしいと思いました。 |
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はたらき方も、はたらく上でのウェルビーイングも人それぞれ。「はたらくWell-being AWARDS」では今後もたくさんの“はたらくWell-being”実践者にスポットライトを当て続けます。パーソルホールディングスが目指す“はたらくWell-being”に興味を持った方は、ぜひイベントページをチェックしてみてください。