三井住友フィナンシャルグループの中核として、質の高い複合金融サービスを提供する株式会社三井住友銀行。顧客サービスの品質向上へ向けた積極的な最新技術や IT イノベーションの活用を推し進める同行では、Windows タブレットと iPad に対応した住宅ローン事前審査アプリ「スピードアンサー15」の提供を 2015 年 12 月より開始することで、渉外業務の品質を大幅に高めています。
同行の行員だけでなく、不動産取引のさまざまなシーンでの利用を構想した同アプリは、リッチなネイティブ アプリを複数プラット フォームで同一のものを提供するという難しい開発要件のもとで、プロジェクトがすすめられました。さらに、複数組織が介在する同プロジェクトにおいては、確かな技術力のもとで全体の管理と早期の開発を進める必要があり、株式会社三井住友銀行ではクロス プラットフォーム開発環境である Xamarin と、最新技術の実証と展開のアドバイザーとしてマイクロソフト コンサルティング サービスを採用することで、顧客と不動産会社の双方から高い評価を得るアプリの、早期開発を実現しています。
プロファイル
三井住友フィナンシャルグループの中核を担う株式会社三井住友銀行。国内有数の営業基盤と緻密な戦略実行をもって質の高い複合金融サービスを提供する同行では、2015 年 12 月より提供を開始した「スピードアンサー15」をはじめとした積極的な最新技術や IT イノベーションの活用をもって、サービス品質のさらなる向上に取り組んでいきます。
導入の背景とねらい
サービス品質の向上に向けて、タブレット デバイスの活用を本格検討
三井住友フィナンシャルグループの中核として、銀行業、リース業などを担う株式会社三井住友銀行 (以下、三井住友銀行)。国内有数の営業基盤と緻密な戦略実行をもって質の高い複合金融サービスを提供する同行では、2015 年 5 月、サービス品質のさらなる向上を目的として、渉外担当者向けに 2,000 台の Windows タブレット デバイスを導入しました。同行の渉外担当者はタブレット端末を活用することで、住宅ローンの返済額シミュレーションや投資信託の商品概要、最新マーケット情報などをアニメーションや動画を用いて案内ができ、従来以上に密なサービス提供が可能になっています。
さらに 2015 年 12 月からは、Windows タブレット デバイスと iPad 上で利用できる住宅ローン事前審査アプリ「スピードアンサー15」の提供を開始。同アプリは、デバイスから住宅ローンの申し込みを行うと、およそ 15 分以内にメールで審査回答が届くという画期的なサービスであり、顧客サービスを飛躍的に向上させています。
こうした、従来は紙をベースとして行われていた渉外業務のデジタル化を推進するにあたり、三井住友銀行では 2014 年度 より、本格的な検討が開始されたといいます。
ローンの渉外業務を担当する、株式会社三井住友銀行 ローン業務部 副部長 山本 得郎 氏は、渉外業務におけるデジタル化を推進した背景について、既存業務上に存在していた顧客からの要望を挙げます。
「従来の紙ベースでのローン契約では、まずお客様に申込書へ必要事項を記入いただく必要があります。その記入量は決して少なくありませんので、お客様の負担になっていたと思います。そうした手続きが複数あり、くわえて審査回答には数日の期間を要します。ローンはライフ プランの設計に大きくかかわる重大な契約だと思いますが、その煩雑さと所要期間を背景に、途中で申し込み手続きをやめてしまうお客様もいらっしゃいました。これは金融業界全般に存在する課題であり、最新技術や IT イノベーションの活用で解消ができれば、当行のサービス品質は大きく向上できると考えました」 (山本 氏)。
こうしたサービス品質の向上を目的とした 最新技術や IT イノベーションの活用について、近年では特にその重要度が高まっていると、株式会社三井住友銀行 システム統括部 副部長 高橋 健二 氏はつづけます。
「銀行での最新技術や IT イノベーションの活用というと、これまで基幹系システムに注力するケースが多かったと思いますが、優位性と競争力が求められる昨今では、サービス品質の向上へ向けたシステムの重要度が高まっています。当行でもこの気風へ対応するために、2014 年 4 月よりタブレット デバイスやスマートフォンを活用した新たな取り組みの可能性を本格検討いたしました。しかし、単にテクノロジーを採用するだけでは他行との大きな差別化は図れません。お客様が当行の渉外業務の中で不足を感じている部分はあるのか、それはなにをもって解消できるか、という点にまで踏み込んで検討は行わなければいけませんので、渉外業務の担当部門と密に連携し、検討をすすめました」 (高橋 氏)。
サービス品質向上へ向けた最新技術や IT イノベーションの活用方法について検討がすすめられた結果、三井住友銀行は 2014 年 6 月、渉外対応における「顧客のサービス理解の促進」「契約フローの短縮化」の 2 点を目的とし、タブレット デバイスの導入とそこでのアプリケーション構築を決定。同月より具体的な業務検討と開発が着手されました。
システム概要と導入の経緯、構築
クロス プラットフォームのネイティブ アプリ開発に際し、Xamarin の有効性と日本マイクロソフトの技術力を高く評価
渉外対応のデジタル化に際し、三井住友銀行が重要視した事項には、「どのようなアプリをもって先の 2 点を実現するか」という点がありました。とりわけ、「契約フローの短縮化」においては、サービス特性を背景に複雑な問題があったと、株式会社三井住友銀行 システム統括部 業務インフラ企画グループ グループ長 船山 明信 氏は説明します。
「当行のサービスの場合、たとえば住宅ローンであれば、当行だけでなく不動産会社の店頭においても申し込みが行われます。それゆえ住宅ローンをお申込いただくすべてのシーンにおいて三井住友銀行の行員が陪席できるというわけではありません。従って、業者の業務環境や担当者が保有するデバイスにも配慮する必要がありました。当行では、セキュリティの観点から Windows タブレット デバイスを採用することを決定していましたが、不動産会社の担当者様は Windows ではなく iPad でご案内する可能性も大いにあります。そこで画面や操作方法が変わってしまうと、担当者にとってもお客様にとってもよいことがありません。操作を覚えるのに時間がかかりますし、スピーディな案内や申し込みができなくなる恐れがありますので、同一のアプリを両 OS 上で提供する必要があったのです」 (船山 氏)。
また、株式会社三井住友銀行 システム統括部 上席推進役 自在丸 健 氏は、本件においてはシステム面でジレンマがあったとつづけます。
「デバイス上では、カメラ機能を使って運転免許証や名刺から住所と氏名を読み取る機能を搭載することで、入力支援を行うことも構想していました。このようなペンやカメラを使ったリッチなアプリを提供する場合、Web アプリではなくネイティブ アプリで開発することが求められます。しかし、Windows タブレット デバイス向けの開発環境と iPad 向けの開発環境は大きく異なります。同じ操作性を持ったアプリを 2 つのプラットフォームで作ることは、開発工数の増大やそれに伴うコスト増、さらには双方間の差異の発生といったリスクを生んでしまうのです」 (自在丸 氏)。
こうした課題とジレンマを解消したうえで「本当に有用なサービス」をリリースするべく、三井住友銀行では解決策について日本マイクロソフトへ相談を行い、同社が提供するクロス プラットフォーム開発環境である Xamarin を採用し、最新技術の実証と展開のアドバイザーとしてマイクロソフト コンサルティング サービスも利用したうえでのネイティブ アプリの開発を決定します。株式会社三井住友銀行 システム統括部 部長代理補 御園 亮介 氏は、Xamarin とマイクロソフト コンサルティング サービス採用の理由について、次のように語ります。
「社内で Windows の サーバーや PC、タブレットを導入していたこともあり、本取り組みについても自然な流れで相談しました。驚いたのはそこへの対応速度と精度です。他のベンダーへも同様の相談を行ったことはありましたが、そこでの案は Web アプリに傾倒しており、ネイティブ アプリの案があったとしてもその具体性には欠けていました。日本マイクロソフト様からは、相談後すぐに、同一開発環境で異なるプラットフォームのアプリを作成することができる Xamarin を利用したネイティブ アプリ開発の提案を頂いたのですが、当行の求めるデジタル化を実現できる大きな手応えがあったのです。その後の検討では、クオリティや工数削減だけでなく、リリース後の運用負荷削減といった面でも効果があることがわかりました。提案を受けて間もない 2014 年 9 月には、マイクロソフト コンサルティング サービスと Xamarin の採用を決定しました」 (御園 氏)。
マイクロソフト コンサルティング サービスの役割は、開発を効率よく進めるための、PoC (概念実証モデル) を使った要件定義と技術支援にありました。契約月の 9 月より、実装を担当するパートナー企業のほか、三井住友銀行の関連部署 5 組織で構成されたプロジェクト チームを発足。10 月には最初の PoC アプリが完成し、その後アジャイル開発の手法を一部取り入れながら、週次のイテレーションで要件と実装の改善を 3 か月間かけて繰り返していきました。船山 氏は PoC アプローチの有用性について次のように説明します。
「PoC アプリは、10 月の最初の段階から、単に画面を表示するデモ アプリではなく実際にデバイスを操作して動かすことができる水準のものが数種類上がってきました。動作を確認しながらアプリの改善を行えますので、これであれば漏れがなくスピード感も高めて開発が進められると確信したのを覚えています。ユーザーの負担を少しでも軽減するべく、使い勝手を本アプリでは重視していましたが、そこにおける課題を明らかにするうえで PoC アプローチは、たいへんすばらしいものだったと感じています。同アプリの正式サービス インは 2015 年 12 月でしたが、その 1 年以上前の 2014 年 11 月には、大枠の開発が完了していたのです」 (船山 氏)。
船山 氏が説明するとおり、同アプリでは UI、UX を特にこだわり、開発がすすめられました。画面数は 150 画面ほどですが、バックの絵柄やアプリの世界観、画面の遷移の見栄え、ボタンのレスポンスなどについて何度も検証が必要になり、そこでは PoC によるアプローチが最適だったといえるでしょう。
2014 年 11 月に、同アプリはスピードアンサー15 として開発をスタートすることが承認され、同年 12 月から 2015 年 6 月にかけて実装とテストによるチューニングが繰り返されました。2015 年 8 月には一部不動産会社での実証試験が行われ、9 月からは同行渉外担当者向けと不動産会社向けでサービスをスタート。12 月に行われたサービス リリースを含めた全期間内では、まったくといっていいほど問題が発生せず、スムーズに進行したといいます。
導入製品とサービス
- マイクロソフト コンサルティング サービス
- Xamarin
導入メリット
- Xamarin の採用により、Windows と iOS に対応したリッチなネイティブ アプリ開発の工数最適化が実現できた
- マイクロソフト コンサルティング サービスの採用とそこで提唱された PoC アプローチにより、使い勝手に優れたアプリの実装を行えた
- 複数組織からあがる課題や要望をマイクロソフト コンサルティング サービスが漏れなく拾い上げ、要件定義と技術実装を行ったことで、手戻りのないスムーズな開発を実現できた
導入の効果
複数組織からあがる課題や要望をマイクロソフト コンサルティング サービスが漏れなく拾い上げ、技術実装を行う事で、顧客と不動産会社の双方から評価を得るアプリ開発を実現
短期間でクオリティの高いアプリケーションを開発し、渉外業務の品質向上を実現した三井住友銀行ですが、そこにはマイクロソフト コンサルティング サービスによる支援が不可欠だったと、同行は評価します。
「開発をスムーズに進めることができた背景には、検証を行った現場からのフィードバックを開発と実装に速やかに反映するためのしくみを、マイクロソフト コンサルティング サービス側が構築してくれたことにあります。とりわけ、当行が求める要件をしっかり理解し定義してくれる『知識、理解力』と、それを具体化するための『技術力とアイデア』は、今回のプロジェクトを通じてマイクロソフト コンサルティング サービスに大きな信頼を寄せました。当行だけでなく、開発パートナーや不動産会社など、かかわる組織やコミュニケーションが多量にある中で、それらからあがる課題や要望を漏らさず拾い上げ、『番犬』のような立ち位置で全体を管理していただけたのは、非常にありがたかったです」 (高橋 氏)。
「おかげで開発の手戻りもなく、スムーズに開発を進めることができました。Xamarin の有用さもあり、実際の開発期間は 3 か月程ときわめて短期間です。マイクロソフト コンサルティング サービスや Xamarin を利用しない場合と比較すると、スピードと効率の面で数倍の効果があったといえます。開発スピードの向上は、検証期間の確保、つまりアプリのクオリティ向上に直結します。マイクロソフト コンサルティング サービスは決して廉価なソリューションではありませんが、他社と比べ業務の緻密さとスピードが段違いに優れており、非常に価値の高いサービスだと評価しています」 (自在丸 氏)。
マイクロソフト コンサルティング サービスと Xamarin の採用により、クオリティの高いアプリとしてサービス インできたスピードアンサー15 ですが、その提供により、顧客へはさまざまなメリットが提供できています。
「スピードアンサー15 では、タブレット デバイスから入力した情報をもとに事前審査するしくみを備えており、平日の営業時間 (9:00~17:30) だけでなく、土日祝日の指定時間 (9:00~15:30) に申し込んだ場合も、およそ 15 分以内にメールで回答を得ることができます。カメラを用いた入力支援機能も搭載していますので、申し込みから契約までの作業負荷と所要期間を大幅に圧縮することが可能になりました。渉外担当者からは、アプリの導入後、お客様が気軽に住宅ローンを申し込みするシーンを多く見られるようになったと、報告を受けています」 (山本氏)。
「契約の過程でお客様が中断してしまうことはほとんど無くなったといえます。また、お客様だけでなく、12 月のリリース後、不動産会社からも、採用について数多くのお問い合わせをいただいています。不動産会社側のデバイスを問わず利用でき、こだわり抜いた操作性によってお客様と取り扱い担当者様の双方に大きなメリットを提供できますので、採用に向けて行っている商談内では、おしなべて高い評価をいただけている状況です」 (山本 氏)。
また、Xamarin を使ったクロス プラットフォーム開発基盤が構築できたことも大きなメリットだと、船山 氏はつづけます。
「スピードアンサー15 の開発を通して、日本マイクロソフト様から Xamarin のアーキテクチャやデザインのガイドラインについて提供いただけました。今回のプロジェクトで、Xamarin が開発効率を飛躍的に高められることが検証できましたので、今後のアプリケーション開発においても積極的に適用していく予定です」 (船山 氏)。
今後の展望
スマートフォンやクラウドも活用し、サービス品質と従業員満足度の向上を目指す
三井住友銀行では、スピードアンサー15 の取り組みにみられるサービス品質の向上以外にも、従業員満足度の向上へ向けた取り組みについても推進しています。
「従業員の満足度は、普段の業務効率やそのレベルに影響し、ひいてはサービス品質にもつながります。品質向上への間接的なアプローチとして、2015 年 5 月には、育児や介護といった制約のある従業員を含めた社員全員が活躍できる環境整備に向けて、Surface 3 を 1,000 台導入し、リモートでセキュアにアクセスできる環境を構築しました。また、同年 12 月からは Windows 10 Mobile を搭載したスマートフォンの技術検証も開始しています。スマートフォンを PC のように利用できる Windows 10 の『Continuum』や、『Dynamic Provisioning』によるデバイス設定作業の簡素化について検証中です。また、Microsoft Azure とデバイス管理のクラウド サービス Microsoft Intune を活用することで、柔軟な基盤をもってデバイスやライセンスの統合管理を行うべく、検討をすすめています」 (船山 氏)。
また、直接的なサービス品質の向上についても、三井住友銀行では今後、スピードアンサー15 に続く新たなサービス開発が計画されており、Xamarin によるクロス プラットフォーム開発のノウハウを獲得したことで、こうした取り組みはより発展していくことが期待されます。
「サービス品質の向上や、従業員の満足度向上に向けた、最新技術と IT イノベーションの活用アイデアは数多くあります。技術検証を進め、今後のあり方を複合的に考えながら、これからも取り組みを進めていく予定です。その上で日本マイクロソフト様には、製品だけでなく技術面でも引き続き協力をお願いしていきたいと考えています」 (高橋 氏)。
ユーザー コメント
「開発をスムーズに進めることができた背景には、検証を行った現場からのフィードバックを開発と実装に速やかに反映するためのしくみを、マイクロソフト コンサルティング サービス側が構築してくれたことにあります。とりわけ、当行が求める要件をしっかり理解し定義してくれる『知識、理解力』と、それを具体化するための『技術力とアイデア』は、今回のプロジェクトを通じてマイクロソフト コンサルティング サービスに大きな信頼を寄せました。当行だけでなく、開発パートナーや不動産会社など、かかわる組織やコミュニケーションが多量にある中で、それらからあがる課題や要望を漏らさず拾い上げ、『番犬』のような立ち位置で全体を管理していただけたのは、非常にありがたかったです」
株式会社三井住友銀行
システム統括部
副部長
高橋 健二 氏
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