ヤマハは2015年12月15日に、無線LANアクセスポイントの新製品「WLX202」を発表した。発売は2016年4月になる予定だ。本稿では、その発売に先立ち、同製品の概要や導入のメリットについて紹介していく。

ヤマハの無線LANアクセスポイント新製品「WLX202」

WLX202の位置付け

WLX202は型番からすると、すでに発売されているWLX302の下位機種という位置付けと解される。実際、製品パンフレットなどでは「エントリーモデル」と謳っている。

しかし、以下の比較表に示したように、無線LANアクセスポイントとしての基本機能については、WLX302とWLX202の間に大きな違いはなく、接続可能な端末数に差がある程度だ。そのため、エントリーモデルを標榜しているからといって、セキュリティの水準が落ちるようなことはない。

また、両機種とも5GHz帯にも対応していることから、2.4GHz帯では干渉が激しくて使いづらい場合に、5GHz帯を使用することで状況を改善する効果を期待できる(もちろん、端末側も5GHz帯に対応していなければならないが)。安価な無線LAN製品は往々にして5GHz帯への対応をオミットしているものだが、WLX202ではそんなことはない。

なお、WLX202で新たに加わった機能として、「IEEE802.11ac準拠」がある。法人向け製品に求められる信頼性・安定性を備えつつ、比較的安価にIEEE802.11acに対応できる。IEEE802.11ac対応のクライアントを使用しているユーザーであれば、これは魅力的に映りそうだ。

なお、表に示した機能一覧のうち、セキュリティ関連の機能については追加説明が必要だ。後方互換性の観点からだろうか、暗号化手段としてWEP、TKIP、WPAにも対応しているが、安全性を考えれば使うべきではないだろう。クライアントが対応できるのであれば、安全性を確保するためにはWPA2パーソナル、あるいはWPA2エンタープライズを使用するのが基本だ。せっかくアクセスポイントが対応しているのだから、できるだけ活用したい。

表1 : 基本機能部分の仕様比較
WLX202 WLX302
対応規格 IEEE 802.11a/b/g/n/ac IEEE 802.11a/b/g/n
5GHz帯
2.4GHz帯
接続端末数(5GHz) 30(推奨) 50
接続端末数(2.4GHz) 30(推奨) 50
CCMP(AES)暗号化
TKIP暗号化
WEP(64bit/128bit)暗号化
PSK認証
WPA/WPA2パーソナル認証
WPA/WPA2エンタープライズ認証
MACアドレス認証
マルチSSID 8個 8個
タグVLAN
SNMPv1
発熱量 29.9kJ/h 39.6kJ/h

アクセスポイントが増えても負担が増えない管理機能

頑として有線LANを使い続けていた筆者の自宅で、無線LANの再導入に踏み切ったきっかけは、Windowsタブレットの導入だった。これに限らず、タブレットやスマートフォンの利用拡大が無線LANの必要性につながっているのは、一般的な傾向だろう。ノートPCならイーサネットのポートがついているから有線LANを使えるが、タブレットやスマートフォンでは事情が違う。

その結果として、無線LANに接続する端末の数は一般的に増加傾向にある。ひとつのアクセスポイントで引き受ける端末数が増えるとスループットに響くため、端末が増えたらアクセスポイントを増強する方が望ましい。すると、アクセスポイントの設定・管理にかかる手間が増える。

そうでなくても、WAN側(インターネット側)が高速化するとともに安定化してきている一方で、LAN側は機材が増えるとともに複雑化して、管理が面倒になってきているのが昨今の実情だ。

そこで、ヤマハのネットワーク製品が備える管理機能・L2MS(Layer2 Management Service)がものをいう。以前にRTX1210の記事で取り上げたLANマップによる構成可視化に加えて、ルータを窓口としてスイッチや無線LANアクセスポイントも集中管理できる利便性は魅力的だ。

参考 :
ネットワークを「見える化」しよう! (第3回) これがRTX1210の「ネットワークの見える化」だ

L2MSによるWLX202の管理には、L2MSコントローラーの機能を備えたルータが必要になる。対応機種はRTX1210、RTX810、NVR500、FWX120、SWX2300シリーズで、これから順次対応していく予定となっている。

無線の見える化に関する管理機能の相違点

そこでWLX202とWLX302の仕様を比較してみると、「見える化ツール」(「状態表示」「状態管理」「ネットワーク構成表示」)を利用できるのはWLX302だけだ。ということは、ルータを窓口にして無線LANアクセスポイントまで集中管理できる利点は両機種に共通するものの、無線LANの動作状態を可視化できるのはWLX302だけということになる。

WLX302には、無線の状況を可視化するツールが備わっている

動作状態を可視化する機能が役に立ちそうな場面は、いくつか考えられる。

・導入の際に電波の干渉が予想される、あるいは発生しているようなので、チャンネルの空き状況を知りたい

無線LANアクセスポイントの数が増えると、特に2.4GHz帯は混雑しやすくなり、干渉の可能性も出てくる。そういう場面で「逃げ道」を探すときには、無線LANの状態を可視化することで、チャンネルごとの混雑状況を把握できる方が効率的だ。

・トラブルシュートなどの必要性から、ネットワークの構成状況がどうなっているかを知りたい

トラブルシュートや構成の把握、機材の棚卸しといった場面では、構成状況のスナップショットをとっておいて、現状との差分が分かるようにしたいというニーズも考えられる。その場合には、WLX302が必要になる。

上記のような課題に直面していない、あるいは直面する可能性が低い場面では、いったん設定してしまえば後は放っておいても大丈夫だ。それであれば、頻繁にネットワークの状態を確認・把握したり、設定を直したりする必要もないだろう。するとWLX202でも困らないので、そちらの方が費用対効果の高い選択肢となる。

「どうしても可視化できないと不安」ということであれば、WLX302を状態監視用に少数設置して、それ以外はWLX202で済ませる選択肢もある。どちらか一方だけを使わなければならないと決まっているわけではないのだから。

5GHz帯を活用して干渉を回避

前述したように、WLXシリーズは2.4GHz帯に加えて5GHz帯にも対応しているため、干渉の可能性が比較的低い5GHz帯をメインに使うという選択肢も出てくる。その場合、WLX202が5GHz帯およびIEEE 802.11acに対応していることが効いてくる。それに、チャンネルが混み合っていて干渉するのが困るという話であれば、自動チャンネル変更でクリアできるから気にしなくても大丈夫、という考え方もできる。

固定設置されたアクセスポイントは話が違うが、テザリング中のスマートフォンやモバイル・ルータは個人が持ち歩いているものだから、出現したり消えたりする。もちろん、発信源が消えれば、それだけチャンネルが空く。そこで自動チャンネル変更によって動的に対応できれば、手作業でチャンネルを設定し直すよりもスマートだ。

商空間に求められるインテリア性

最近では、家庭やオフィスに設置する無線LANアクセスポイントに加えて、テザリングを行っているスマートフォンやモバイル・ルータといった具合に、無線LANを使用するデバイスが増えている。背景には、スマートフォンやタブレットの普及と、それを受けた無線LANアクセスポイントの増設という事情がある。公共施設や店舗など、さまざまな場所で「Wi-Fi使えます」という掲示が出ていることが、そうした事情を端的に示している。

ちなみに、WLX202ではそういった用途を想定して、過度に目立たないようにするためのデザインの工夫を図ったそうだ。また、表1で示したように、消費電力がWLX302より少なくなっているのは商業施設としては重要なポイントだ。

コンビニ(左)やカフェ(右)など、多店舗、多拠点におけるWLX202利用イメージ

アクセスポイントのグループ化

WLX202もWLX302と同様に、複数のアクセスポイントをグループ化して設定を転送する機能を備えている。だから、広大なオフィスでスループット維持のために多数のアクセスポイント設置するような場面でも、個別に設定していくより迅速かつ確実な作業を行える。

グループ化の設定を行うと、コントローラーAPに指定したWLX202から、メンバーAPに指定したWLX202に設定を配信できる。個別に同じ設定を繰り返す手間を省けるわけだ

ただし、グループ化できるのはWLX302同士、あるいはWLX202同士に限られ、ひとつのグループに両機種を混在させることはできない。よくよく考えれば、機能的な相違があるのだから、異なる機種をグループ化して同じconfigを流し込むわけにもいかないだろう。

なお、先の仕様比較で出てきた「Zero config」機能については、後に予定している別項で取り上げることにして、それまでのお楽しみとしたい。

(マイナビニュース広告企画:提供 ヤマハ)

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