2015年11月12日(木)コングレスクエア日本橋にて「CDOカンファレンス 2015 ~デジタルビジネス時代を切り開く~」が開催される。本記事ではイベントの最終プログラムであるパネルディスカッション「データ爆発に備えるチーフ・データ・オフィサーの役割とは?」においてモデレーターを務めるデータキュレーション株式会社の代表取締役であり、ヒューマンアカデミービジネススクール「e-Strategy」の教員でもある寺澤慎祐氏に、当日のパネルディスカッションについて解説してもらった。
議論のスタートは「データの重要性」について
データキュレーション株式会社 代表取締役 寺澤慎祐氏。CDOカンファレンス 2015のパネルディスカッションでモデレーターを務める |
これまでは、経営に必要な重要資産は「ヒト・モノ・カネ」の3要素だといわれていました。近年この3要素に「情報」が加わりました。
情報のもととなるのはデータですが、そのデータが爆発的な勢いで増加しています。2014年のIDCの報告書では、地球上で生成されるデータは2年ごとに倍増しており、2013年から2020年の間で4.4ゼタバイトから約10倍の40ゼタバイトに拡大すると考えられています。
急増する要因は、データはこれまでのデータだけでは無く、音声や映像、センサーなど非構造化データが加わることです。急増するデータの中には経営や組織の競争力とは無縁のデータもあるでしょうし、組織競争力の源泉となるようなデータもあるでしょう。
組織は急増するさまざまなデータを素早くビジネスの価値に変換しなければなりません。データをどのように扱うかが企業や組織の生き残りを左右するといっても過言ではありません。
データドリブンビジネスとデジタルビジネス
データドリブンビジネスとは、データにもとづいて意思決定するビジネスを行うことです。いまでもデータではなく勘と経験だけでビジネスを行っている業種も多いと思います。店主しか知らない秘伝のタレが最大の競争力になっていたり、大将しか作り方がわからないスープが人気のラーメン店であったり、タクシーに乗る人を見つけやすい時間帯と場所を長年の経験で知っているベテランドライバーであったり、天候と海の状況によって行動を変える漁師の方などはそうかもしれません。
また、いくつかの方々は、高い精度の魚群探知機データを使ったり、詳細は天気予報データを参照したり、スープの配合をこと細かなデータに残して同じスープの再現性を高めたりするなど、データにもとづいた行動をとっている方もいらっしゃいます。
経験と勘ではなく、事実としてのデータ、予測というデータにもとづいた意思決定と経営行動をとる「データドリブン」ビジネスによって、意思決定はより精緻なものになりビジネスは成功に近づくと考えられます。
一方、デジタルビジネスとは、インターネット上の仮想的な世界と物理的な世界が融合され、先進テクノロジーを通じて従来のビジネスプロセスやビジネスモデルを抜本的に変革する新しいビジネスのことをいいます。
データドリブンビジネスとデジタルビジネスは似ているようで違います。それは抜本的な変革があるか否かであり、従来ビジネスがインターネットなどの技術を使ってより便利になるという話ではなく、従来ビジネスが破壊されてしまうかもしれないというほどのビジネスだということです。「Uber」や「Airbnb」などはデジタルビジネスだと言えると思います。
ビジネスのパラダイムが変わる変遷をわかりやすく例えてみます。街の本屋さんが店頭と店内に本を並べて販売するのが書籍販売ビジネスです。街の本屋さんがインターネット上に出現して街の本屋が店頭では扱えないような大量の書籍をネット上に並べて翌日には配送するのがeビジネスです。そして、アマゾンのように消費者の過去の購入履歴データや類似した他人の購入履歴データなどから算出した推薦書籍を、購入前におすすめしてくるようなビジネスがデータドリブンビジネスです。
一方、本自体がデータ化され電子書籍となり、本は物理的に配送されるものではなくデータで送られてくるものになったとします。その電子書籍を貸し出し、1カ月で自動消滅するような“電子図書館”のようなビジネスならデジタルビジネスといえるでしょう。
パネルディスカッションでは、現在のビジネスの延長であろうデータドリブンビジネス、現在のビジネスの延長にはなく創造的に破壊してしまうであろうデジタルビジネスについて議論したいと思います。
CIOとCDO
CIOは「Chief Information Officer」であり、CDOは「Chief Data Officer」です。CDOを「Chief Digital Officer」と呼んでもよいとは思いますが、個人的には、マーケティングを統治するのがCMO、セキュリティを統治するのがCSO、技術を統治するのがCTOと、統治することがマーケティング、セキュリティ、技術のように統治できるものであればよいのですが、「デジタル」となるとなんとなく統治するものでもないような気がしています。
CMOもCSOもCTOもデジタルなビジネスに対応しなければならないのであって、デジタル自身は統治するものでもないというのが私の見解です。
このような前提のもと、Chief Information Officer(CIO)とChief Data Officer(CDO)はどんな役割の違いがあり、どんな責任があるのでしょうか? データ自体は記号や数字の羅列であってそのままでは意味がわかりませんが、何かしらの意味が付加されることで情報となります。つまり情報の源泉はデータです。ということは「データを統治するということは、情報をも統治できる」ということがいえるかもしれません。
CDOを設置している企業がほとんどないという状況において、このような疑問や課題について日本で議論するのは今回のイベントが最初になると思います。つまり、まだまだ白紙の状態で「現状の姿」も「あるべき姿」もハッキリしていないので、パネリストや会場の皆さんと議論ができればよいと思っています。
ビッグデータの本質
ビッグデータって本当に必要なのでしょうか? データのサイズが大きい(Volume)、データの種類が多い(Variety)、データの発生頻度(Velocity)という3つの「V」のすべて、あるいは一部の特性があることがビッグデータだといわれていますが、ビッグデータを活用することでビジネスや組織にとってどんなメリットがあるのでしょうか?
少しのサンプルデータがあれば統計技術によって全体を把握することは可能です。すべてのデータを把握する必要なんてないのかもしれません? 現在の企業はビッグデータを保有しているのでしょうか? 保有できるのでしょうか? あるいは企業がビッグデータを得るとどんなよいことがあるのでしょうか?
コンビニエンスストアにおいて気温とパンの売り上げとの相関関係が分かれば、予測された気温によって、細やかな生産量の決定ができ、売れ残りや販売機会ロスも減らすことができるというのがビッグデータの活用例であり、高度なビッグデータ分析をすれば、どの時間にどの商品をどのように並べると売上が向上するのがわかり、これまでの経験を超えた法則がみつかる可能性だってあるかもしれません。
法則がみつかるかみつからないかはともかく、このような作業を繰り返すことで有効施策と無効施策が明らかになりビジネスをよりよい方向に導くことができます。
このような事例を、別にビッグデータではなく、普通のデータ分析でこれまでやってきたことの高度な取り組みに過ぎないという方もいらっしゃるでしょう。
また「消費者が商品棚のどのようにみているのかをヒートマップにして分析する」ということがメディアにピックアップされることもありますが、これまでも大なり小なり行ってきた分析なのです。
確かにそうかもしれません。これまでもやってきたデータ分析なのかもしれません。しかし、これまでとは違ってデータ分析した結果をすぐにアクションにできるスピード感やリアルタイムにデータを取得してリアルタイムにデータ分析するということが、これまでとは違う経営行動になるはずです。
今のデータドリブンではないビジネスがデータドリブンビジネスになり、次のステップはビッグデータドリブンビジネスになる日も近づいているのかもしれません。
このような視点からビッグデータの本質についてパネリストに議論してもらいます。 パネリストは以下の5名の方々です。
公開討論に参加するパネリスト。写真左からトライアルカンパニー グループCIO 西川晋二氏、内閣官房 情報通信技術総合戦略室 政府CIO補佐官 會田信弘氏、リアライズ 代表取締役社長 大西浩史氏(JDMC発起人)、シスコシステムズ サービスセールス ビジネスディベロップメントマネージャー 矢島伸一氏、SBIホールディングス 社長室ビッグデータ担当 マネジャー 佐藤市雄氏 |
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(マイナビニュース広告企画:提供 日本データマネジメント・コンソーシアム(JDMC))
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