改めていうまでもないことだが、さまざまな目的、さまざまな用途に対応できることがPCのメリットだ。そして目的が深化すれば、それに応じてメモリやハードディスク、グラフィックスカードなどの各種パーツを拡張、交換して特化することが可能だ。最近では、こうした流れがPCに付随する液晶ディスプレイにも生じている。従来でもスペックに応じてハイエンドクラス、エントリークラスといった区分は存在したものの、基本的には汎用機として全体のバランスを重視したものが大半だった。これがPCの急速な普及に伴って、かつては少数だった特化型ディスプレイへのニーズもまた膨れ上がることとなる。そして、ニーズがあれば即座に研究、開発、製造に着手するのがメーカーの常。瞬く間にさまざまな用途に適した特化型ディスプレイが登場し、数年を経た今では、技術の深化とコストの低下によって、かなり安価で販売されるようになった。

こうした特化型の中でも取り分けて人気が高いのが、映像鑑賞やゲームなどといった用途に向けたエンターテインメント型だ。このタイプの要件はいろいろとあるが、やはり大事なのは画面のサイズだろう。映像コンテンツの主流であるフルHDを無理なく鑑賞するには、24型以上は欲しいところだ。さらに「見る」ことそのものを楽しむわけなので、表示性能・機能は何よりも肝要となる。また、こうしたクラスは店頭ディスプレイとして用いられることも多いため、デザインも重視したいところ。そして、ゲーム用途だとどうしても目が疲れがちなので、負担を軽減するための工夫も欲しい。今回紹介するベンキューの「EW2740L」と「EW2440L」は、上記の要件を高水準で満たした製品だ。それぞれの要件に注目しつつ紹介していこう。

EW2740L

[液晶パネル] AMVA+ [バックライト] LED [画面サイズ] 27型ワイド [表示解像度] 最大1920×1080ドット(フルHD) [視野角] 左右178度、上下178度 [輝度] 300cd/平方メートル [コントラスト比] 3000:1(DCR最大2000万:1) [応答速度] 12ms(GTG 4ms) [表示色] フルカラー約1677万色 [映像入力インタフェース] HDMI×2(MHL×1含む)、ミニD-sub15ピン×1 [スピーカー] 2W×2 [スタンド機能] チルト:下5度/上20度 [VESAマウント] - [本体サイズ/重量] W622.58×H450.57×D191.32mm/約4.2kg [価格] 実勢価格36,800円(税別)

EW2440L

[液晶パネル] AMVA+ [バックライト] LED [画面サイズ] 24型ワイド [表示解像度] 最大1920×1080ドット(フルHD) [視野角] 左右178度、上下178度 [輝度] 250cd/平方メートル [コントラスト比] 3000:1(DCR最大2000万:1) [応答速度] 12ms(GTG 4ms) [表示色] フルカラー約1677万色 [映像入力インタフェース] HDMI×2(MHL×1含む)、ミニD-sub15ピン×1 [スピーカー] 2W×2 [スタンド機能] チルト:下5度/上20度 [VESAマウント] - [本体サイズ/重量] W545.66×H421.6×D191.32mm/約3.74kg [価格] 実勢価格29,800円(税別)

両機とも広視野角とハイコントラストを両立したAMVA+パネルを採用

まずは画面のサイズだが、名称が示す通りEW2740Lは27型、EW2440Lは24型の液晶パネルを採用している。どちらもアスペクト比は16:9、解像度は1920×1080でフルHDソースの映像をドットバイドットで堪能できる。当然ながらEW2740Lは画素ピッチが広くなっているため(0.311㎜)、0.27㎜あたりでは視認がつらいという人に向いている。

次いで表示性能だが、EW2740LとEW2440Lが採用する液晶パネルは広視野角とハイコントラストを両立したAMVA+パネルのため、高品位の表示を楽しめる。AMVA+は、昨年4月ごろ、ベンキューが最初に発売した高品質のVAパネルだ。視野角は水平、垂直とも178度。コントラスト低下はもちろん色相の変位もほとんどなく、真横に近い角度から眺めても表示がしっかりと確認できる。このため、パネルサイズの大きなEW2740Lでも周辺の色変化が気になることはない。

真横に近い角度から眺めても表示がしっかりと確認できる

コントラスト比も3000:1と申し分なく、DCR機能を使わずとも十分にメリハリの効いた表示が可能だ。もちろん、DCR機能も搭載しており、こちらを用いた場合には2000万:1相当ものコントラスト比が得られる。実際に両機を見たところ、やはり目を引くのは締まった黒色だ。暗所で見ても光漏れがない。しかも暗部は潰れることなく表現できている。映像のみならず、レンジをフルに使った写真を鑑賞するにも適している。

応答速度についても不満はない。白-黒の変化こそ12msだが、ベンキューモニタでおなじみの高速応答技術「Advanced Motion Accelerator」を搭載しており、GTGでは4msを実現。これによって、ブレの少ないスムーズな映像再生が行える。

映像を楽しむための機能が満載

機能面でも、どちらも映像を楽しむための工夫を盛りだくさんにそろえている。取り分けて特徴的なのは「Super Resolution」と「スマートフォーカス」の2機能だ。Super Resolutionはその名の通り超解像技術を使用した機能だ。高解像度の液晶ディスプレイで低解像度の映像をフルスクリーンで見ると拡大表示になってしまうため、どうしてもエッジの鈍ったぼやけたような表示になってしまう。だが、Super Resolution機能ではこのような低解像度の映像に処理を施して、適切なエッジに仕上げて表示してくれる。単にシャープネスでエッジを際立たせるわけではなく、解像感を持たせつつジャギーのない映像となる。

左がSuper Resolution機能オフ、右がSuper Resolution機能オン。信号を解析・処理することで、違和感を感じないように解像感を持たせて表示してくれる

一方のスマートフォーカス機能はWebのストリーミング動画など、画面中の一部のエリアに表示した映像を見るための機能だ。指定したエリアを除いた部分のトーンを落とすことによって、指定エリアがハイライトされたようになる。もちろん、エリアのサイズや位置はユーザーが任意に変更できる。上記のSuper Resolution機能を用いずに低解像度映像をドットバイドットで再生する場合にも有用だ。

スマートフォーカス機能では、特定のエリアのみを強調した表示になるため、ほかのエリアの情報で阻害されることなく映像を楽しめる

また、画像モード「Senseye」にシネマモードを用意したことも両機の特徴だ。シネマモードでは、持ち前のハイコントラストを活かしたダイナミックな色彩で表示しつつも、映像のディティールを損ねることのないように処理を施してくれる。そのさまはまさに映画館で見る映像のようだ。

このようにEW2740LとEW2440Lは、映像やゲームを楽しむための要素をふんだんに盛り込んでいる。さらにいえば、OSDもほかのベンキューモニタと同様に詳細な設定が行える設計になっており、より画質を突き詰めたいという人にも満足できるはずだ。