グラフィックデザイナーの菅原慎也氏1984年生まれ。東京都在住。インテリアデザイン専攻。生活の中で実際に触れられる立体物を追求している。海外でも販売される製品のパッケージデザイン、フォトワーク、ソフトウェアのユーザーインタフェースと幅広いフィールドで活躍中

コンピュータグラフィック(CG)の制作と聞くと、コンシューマー向けのパソコンでは適わず、ワークステーションのような企業向けシステムが必要となるのではないかというイメージがある。確かに一昔前までは、CGの制作には膨大な時間と高価なシステムが必要で、個人が行うには非常にハードルが高かった。ところがここ数年、ハードウェアの進化や個人用CG作成ソフトの最適化が進み、加速度的に敷居が低くなっている。個人でCG制作を楽しんでいるユーザーが増えていることをみても明らかだろう。

では一体、どのくらいの性能を持ったパソコンならば、ストレスなくCGを作成できるのだろうか? 言い換えると、どのくらいの予算をかければCG作成に活用できる性能水準を持つPCを手に入れられるのだろうか? 自身、グラフィックデザイナーとして活躍し、イーフロンティアの3DCG作成ソフト「Shade」の開発にも携わる菅原慎也氏に、CG作成とパソコンの性能の関係についてうかがった。


「CG作成を始めた当時に比べ、PCの性能は格段にアップしています」

マイナビニュース(以下、MN):菅原さんは、いつ頃CG作成を始めたのですか? また、始めた当時のPCのスペック、購入価格などを教えてください。

菅原氏が課題で作成したグラフィックデザイン。このような単純な構図でも、一晩中レンダリング作業がかかったという

菅原慎也氏(以下、菅原氏):私がCGの作成を始めたのは比較的最近で、約5年ほど前になります。グラフィックデザイナーを目指すため、専門学校に入学したのがそのきっかけでした。課題となるCGを毎日のように作成していたのを、今でも憶えています。その当時に使っていたPCは、CPUにPentium 4を搭載していたかと記憶しています。予算はだいたい15万円くらいだったでしょうか。今考えると、ものすごく処理性能が足りなかったと思います。というのも、課題で出された単純なCGでも、レンダリングに一晩かかるのは当たり前。しかも処理途中でPCが落ちてしまうこともありました。正直当時は、レンダリング作業に一晩かかるのは普通のことだと思っていました。今考えると、ムダな時間を消費していたのではないかと思ってしまいます(笑)。


MN:ということは、現在ではCG作成環境が大幅に向上したということでしょうか?

菅原氏:比べものにならないくらい、PCの処理能力が向上しています。当時の感覚から比較すると、5倍以上は処理性能が上がったのではないでしょうか。現在のマシンなら、当時10時間ぐらいレンダリングにかかっていたような作品でも、約2時間か、それ以下で処理が終了します。作業時間が短縮できるので、非常に助かっています。

MN:では、今使っているPCは、CG作成を始めた頃に購入したマシンよりも予算は高かったのですか? また具体的にどのようなマシンなのでしょうか?

菅原氏:実は予算については、5年前のPCよりも安くて10万円ぐらいで収まっています。CPUにCore i7を搭載した「eX.computer」ブランドのエアロストリームというマシンなのですが、処理性能が高いわりに安価な予算で購入できたので満足しています。CG作成はPCにかかる負担が大きい作業なので、高価なマシンを用意しなくてはならないとどうしても思われがちですが、現在はそんなことはありません。私の場合は、業務で使うマシンなので、ポリゴン数の多いCG作成にも対応できるように、別途予算をかけてメモリを16GBまで増設していますが、予算10万円のPCでもストレスなくCG作成ができるようになったと思います。