組み立てから発送まで

東京都昭島市にある、日本HP(ヒューレット・パッカード)昭島工場。前回は昭島事業所の沿革や全体的な仕組みや特徴、そして「MADE IN TOKYO」の利点やこだわりを、昭島事業所長の宮崎尚人氏と、製造・技術管理部長の清水直行氏に伺った。後編となる今回は、実際の作業現場を見学しつつ、実際にどのように運用されているかを見ていこう。

全体の流れを見ていくうえで重要なのが、徹底的なペーパーレス化だ。受注した注文は、電子データで管理され、個々のパーツに貼り付けられたバーコードを読み取って組み立てが進められていく。OSやソフトウェアのインストールや発送伝票も同様だ。そのほかにも、人為的なミスを防ぎ、サポートを迅速に進めるためのアイデアが随所に見られる。

組み立てを行うフロアとは別の階にある倉庫。ここから、必要な部品が輸送されていく

工場内の静電気対策は、床の加工と帯電防止服および靴によって行われている。一般的な腕に装着するリストバンドようなものは使用しない。写真は、静電靴の性能(抵抗値)をチェックする装置

組み立て -- 約6mの生産ラインで組み立てを完結

倉庫から部品が到着し、はじめに行われるのがアッセンブリー(組み立て)。大量生産を主眼においた工場では、一人一行程で長い生産ラインとなることが多い。しかし、CTO(注文仕様生産)中心で、注文ごとに仕様が違うPCを組み立てる昭島事業所では、約6m程のショートライン方式を採用している。

まずは、バーコードのついたシールが本体ケースに貼られる。このバーコードを読み取ることで、製品の仕様が分かる仕組みだ。パーツそれぞれにもバーコードが貼られており、間違ったパーツを選択するとアラートが表示される。また、このバーコードには製品ごとにメーカーや製造年月日などの情報も入っているので、後々のサポートにも利用できる。ここでバーコードを読み込むことによって、OSや必要なシールも、逐一ライセンスが供給される。本体とパーツは別々のトレイに載せられてラインを進んでいき、最終的に組み立てられたら「MADE IN TOKYO」のシールが貼られる。約10分ほどで1台の組み立て工程は完了となる。

倉庫から到着した部品は、まずはじめにアッセンブリー(組み立て)に乗せられる

組み立てのラインはわずか6m程度のショートライン。10人前後で一台のPCを組み上げる

組み立てに必要なパーツやソフトウェア、シールなどはすべてバーコードで管理されている。読み込むと、仕様がすべて表示できる

本体と部品が別々のトレイに乗せられ、組み立てが進められていく

最後に「MADE IN TOKYO」のシールが貼られ、組み立ては完了

初期動作試験 -- オートメーションと人為的ミスを減らす工夫

組み立てが終わると、次に行われるのがプリテスト(初期動作試験)だ。組み立てラインから流れてきたPC本体にケーブルを繋ぐと、自動で組み込みパーツの確認と、動作試験が行われる。たとえば、「音が正常に出ているか」といった、どうしても人が係わらなければいけないテストでは、一日に何台ものテストを行っている人が、誤った診断を下さないよう、「音がどちらのスピーカーから発音されたか? 」といった問いかけ方式にして、チェック漏れをなくす工夫がされている。

組み立てが終わると、組み立て内容の確認と初期動作試験に移る

初期動作試験は基本的に自動で行われるが、一部の人の手を介する試験でも誤った診断がされない工夫がされている

連続動作試験とソフト組み込み -- インストールはすべてネットワーク経由

組み込み部品の確認と初期動作試験が終わると、引き続きランイン(連続稼働試験)とソフトウェアインストールに移る。この工程が最も時間を要し、合計3時間ほどの時間を必要とする。ただし、この2工程も基本的にすべて自動で行われる。ソフトウェアインストールは、予めバーコードに登録されているソフトが、ネットワーク経由で自動的にインストールされる仕組みとなっている。

ここで長時間連続稼働試験が行われる。この工程も基本的に自動で進行し、2時間ほどのテストが行われる

ソフトウェアインストール行程。ネットワークからすべてのソフトウェアがインストールされる