デビュー後、しばらくして、今まで与えられていた状況から何もないような、今思えば挫折したような日々。何もしたくない、何も感じない、ないないない――そんなある日、歌に支えられていたことに気がつきます。音楽をただひたすら聴いていると癒されるような、歌いたくてしょうがない気持ち。不思議ですよね、デビューしたころは、「歌が好きだし、歌えてラッキィ」。どちらかといえば軽い気持ちからだったと思います。本当の悲しみや、それを知ってるからこその喜びはそのときには知らず、いつも想像で歌っていたように感じます。

なので、そのとき、心から歌が歌いたい! と感じたときに、今の事務所の社長にこんなことを言ったことがありました。

由美「社長ごめんなさい。生きるって辛いんだね。私は今までそんなことを考えたこともなかった。何でも思いどおりにいってたし、人の気持ちさえ私が好きならみんな好きでいてくれると思ってた。だから今まで歌ってきた歌は、想像でしかなく、悲しいとか、うれしいとか、ちゃんと歌ってなかったと思う。ごめんなさい。それと、みんなそれでも生きてるってすごいね。私なんか、今息吸うのが精一杯で、だから私より1日でも長く生きてるってことはもうそれだけですごいなぁって思うの」

社長「そうか、由美。気がついたかぁ。生きるって大変だよな。でもそのことを、大変だっていうことを俺は中学生のときに気がついたよ。由美もだいぶ遅いけど、今気がついてよかったね」

社長は心配してくれ、そのときいろいろ話してくれたと思いますが、私の真剣なまでの落ち込みぶりに、「自分は中学生のときに生きることは大変だと気がついた」というところが私のつぼに入ったというか、初めておかしくて笑ったのを覚えています。私のこの気持ちを子どものころにはわかっていたなんて、私はまだまだひよっこだなって。ある意味、開き直れたというか、社長はそういうときにいつもユーモアで返してくれていたのでした。

それから楽器や楽譜の書けるお友達Uちゃんに電話し、私の口笛ソングをカタチにするなどの方法で曲を一緒に作ってもらうことになります。その一番最初の歌が「うたかたの森」というタイトルです。この曲は、私のファンの方でライブに来てくれた方は知っている曲だと思いますが、未だ正式にはCD発売されていません。私の中では名曲だと思っているので、いつの日かカタチにしてCD発売ができればな、と思っています。

とにかく、そんな感じで鼻歌をひとつずつ曲にしていくわけですが、世の中の状況はそんなに甘くもなく、何の変化もありません。誰にも頼まれていず、締め切りもなく、曲は作っても聴いてくれる人もなかったのですが、それでも曲作りはしていました。

ある日、お風呂に入っていたときのこと。素敵なメロディが頭の中でリピートします。"これすごくいいメロディだけど、誰かの曲だっけ?"。でもいくら考えても誰の名前も出てこないし、新しいメロディだと気がつきます。だけれど私、よくメロディは思いついてもすぐ忘れてしまうのです。覚えておけない。で、こんなにいいメロディ忘れたくない! と思い、さっそくお風呂場から携帯でUちゃんに電話。

由美「あのね、今すごくいいメロディが浮かんだから歌うね。楽譜に書いてほしいんだけど」

まったくもって突然で迷惑な話ですが、Uちゃんも慌てて「はいよ、何度か歌ってぇ」と素直に聴いてくれて、そのメロディを残してくれました。後日、その歌はAメロ、Bメロをつけて完成していきます。「こんなにいい歌、いつか誰か聴いてくれるといいなぁ」。そう、その曲こそが時を経て地球の裏側のみんなの耳元まで届くようになったのです。そのときの自分は知るにも及ばず。なんせ状況はしんどかったですから(笑)。

後にこの曲、「地球ぎ」はOVA『聖闘士志星矢』の主題歌になり、ブラジルや中国、フランスをはじめ、いろんな国の人が聴いてくれるようになりました。そこへ辿り着くまでにもまた物語がありますので、また次週ゆっくりお話したいなと思います。そう、「地球ぎ」を歌ったブラジル旅コラムもマイコミジャーナルさんで書きますので、そちらも更新されましたら見てくださぁい。いつもながら珍道中です(笑)。

おっとライブもあります。ぜひ遊びにいらしてください!

"OTOHA NIGHT" vol.04
■2008年7月27日(日)
■恵比寿天窓switch
■open 18:00
■start 18:30
■3,500円(ドリンク別)
■一般予約:恵比寿天窓switch店頭にて
電話受付中(tel.03-5795-1887)

アコースティックセッションでお届けしてきたOTOHA Night 4回目です。
みなさん、ぜひお越しください。

では次週まで、See you soon love xx.