【コラム】

海外モバイルトピックス

63 全社がLTE開始、競争が激化する香港

 

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香港のLTEサービスはこれまで目立った動きが無かったが、今年に入り全事業者が相次いでLTEを開始、激しい競争が始まっている。

LTEスマートフォンが実質無料に

香港のLTEは2010年11月にCSLがアジア初のサービスを開始した。しかしデータ端末が数機種だけでは大きな話題にもならず、加入者も伸び悩みが続いていた。だが今年になってからLTE対応スマートフォンが登場、それを待つかのように他の事業者も相次いでLTEを開始している。人口700万の都市国家香港は、5つある全事業者がLTEを提供する世界でも類を見ない激戦区になっているのだ。

香港はSIMロックフリー、メーカー端末販売の国であるため、通信事業者がメーカーと組み独自開発した端末の販売は行われない。2012年8月時点でメーカー製のLTE端末はSamsungやLG、HTCから4機種のスマートフォンとタブレットが販売されているが、5つの事業者全てが同じ端末を販売しているのである。これは消費者側から見れば事業者間の差は全く無い状態だ。そのため各社は料金とサービスの競争で差別化を図ろうと凌ぎを削っている。

全社がLTEを開始した香港

スマートフォン無料や低料金プランも

まずLTEスマートフォンは、データ定額プランに加入すれば全社が実質無料で販売している。3G時代にも特定の端末が無料販売されるケースがあったが、LTEでは全端末が無料購入可能なのだ。また低料金プランも用意され、端末代は無料にはならないもののランニングコストを抑えたままでLTEを利用できる。端末無料、もしくは3Gの感覚でそのままLTEへ、と2つの選択肢を用意することで顧客のLTE移行を促しているのである。

またスマートフォンの利用がもはや一般的なものになっていることから、特定のWEBサービスやSNSサービスの定額サービスも出てきている。例えばSmarToneは香港でメジャーなSNS「WhatsApp」をデータ非定額プランでも使い放題とするプランを提供。他社も特定のサービスのみを定額とするプランを出しており、スマートフォンの利用し易さで差別化を図ろうとしている。

他には1契約で複数のSIMカードが利用でき、利用分を合算できるマルチSIMカードサービスも全社が提供を開始した。契約は1つでも1枚のSIMカードはメイン利用のスマートフォンで、もう1枚はたまに使うタブレットに、そしてノートPC用のWi-Fiルーターにももう1枚、のように複数の端末でSIMカードを使っても無料利用分は合算される。LTEなら有線LANレベルの高速通信環境が外出中でも利用できるため、ビジネス層だけではなく学生などにも利用者が増えているようだ。

中国との関係強化で力関係が変わる

香港では4つの事業者が3Gサービスを提供しており、1社は2Gのみを提供していた。その1社が中国移動香港だ。同社は香港の通信事業者を中国本土の中国移動が買収したものである。これまでも香港と中国のデュアルナンバーサービスなど、中国ビジネス向けのサービスを提供していたが、2Gのみのサービスではスマートフォンの活用も難しく、加入者数を増やすことはなかなか難しかった。

その中国移動香港はLTEサービス開始と共にデータ通信料金でも香港・中国で初となる課金体系をはじめた。これは香港と中国両国でのデータ利用分を合算するもので、例えば香港で1GBのデータプランに加入した場合、香港と中国、両国でのデータ通信が合算して1GBまで利用できる。中国への往来が多いビジネス層はもちろん、スマートフォンを日常的に使い買物や旅行に出かける一般の香港人客もターゲットにしている。

LTEで勝負をかける中国移動香港

中国との連携サービスが大きな強み

これまで同社の新規顧客獲得キャンペーンは超低料金プランの提供に頼っていたが、得られる顧客のARPUが低く利益増には寄与しなかった。だがLTEの開始によりようやく他社と同じ土俵に立っただけではなく、親会社である中国移動との関係を密にすることにより、加入者増、ARPU増が大きく期待できるのである。

中国移動香港は今年冬にはTD方式のLTEも開始し、FDDとTDのデュアル方式を提供する予定だ。TD-LTEは中国大陸で中国移動が来年にもサービス開始といわれており、そうなれば香港中国両国でLTEをシームレスに利用できる事業者となる。そうなれば中国移動香港のプレゼンスは格段に高まり、それに対して既存の事業者がどのように対抗サービスを提供していくのか目が離せない状況になりそうである。香港のLTEの動きは、中国との関係も絡み今後1-2年の間に事業者間のパワーバランスを大きく変えるものになっていくだろう。

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インデックス

連載目次
第99回 Huawei新製品「P9/P9 Plus」発表会フォトレポート
第98回 情報をリアルタイムに点字表示できる、世界初の点字対応スマートウォッチがまもなく発売
第97回 1台のスマホで2つのLineを使いたい! 海外ではデュアルWeChatスマホが登場
第96回 空気清浄機や浄水器も売る、脱スマホメーカーを目指すシャオミ
第95回 2015年秋冬のスマートウォッチは丸形がトレンド
第94回 指先2本サイズの超小型なスマホが登場
第93回 スワロフスキーで装飾した本気の女子スマホ「Sugar」に注目
第92回 旅先でスマホが無料で使える! 香港で旅行者向け無料SIMが登場
第91回 日本のSIMロック解除にアジア周辺国が注目する理由
第90回 これからの旅行はスマートに! スマホで管理できるスーツケースが登場
第89回 日本人も便利になる!訪日客プリペイドSIM自販機が続々登場
第88回 八百屋や雑貨屋でも買える! スペインの格安SIM売り場の現状
第87回 ブランド時計が続々参入、2015年はスマートウォッチブームがやってくる?
第86回 世界に広がるガラホ?折り畳み型スマホがアジアで人気
第85回 来年はバレンタインチョコも"印刷"する時代がやってくる
第84回 先進国をターゲットに入れた中国新興メーカーのシャオミ
第83回 SIMフリースマホの国香港、海外用プリペイドSIMの販売が活発化
第82回 Facebookが無料? ソーシャルSIMの時代がやってくる
第81回 韓国で復活するデータ定額
第80回 出揃った中国各事業者のLTEサービス
第79回 スマートフォンシェア3位入りを目指すZTEの最新戦略
第78回 2014年はライフログ系スマートウォッチが熱くなる
第77回 中国で4G免許が交付、2014年は4G普及が一気に進む
第76回 台湾のLTE免許が6社に確定、競争激化で再編も
第75回 ライバルはFirefox OS-Nokiaの新端末に注目
第74回 パナソニックの「家電スマホ」はインドで成功するか
第73回 いよいよ始まる中国のTD-LTEサービス
第72回 Windows Phoneが中南米でシェア2位に浮上
第71回 価格下落が世界のスマホ需要を後押し
第70回 いよいよ出てきたFirefox OSスマホ
第69回 ミッドレンジモデルも魅力のSamsungの2013年春の陣
第68回 日本からも注目したいHuaweiの最新モデル
第67回 得意分野で勝負するシャープの海外戦略
第66回 パナソニックも海外市場から撤退
第65回 TD-LTE端末市場で一気に増す日本のプレゼンス
第64回 アジアで加熱する「5インチスマホ」競争
第63回 全社がLTE開始、競争が激化する香港
第62回 LTEで変わる韓国の業界勢力図
第61回 大きく変わる世界のメーカー勢力図、今年後半の動きを探る(後編)
第60回 大きく変わる世界のメーカー勢力図、今年後半の動きを探る(前編)
第59回 Vodafoneとドコモらが提携、一気に広がる国際提携
第58回 韓国でグローバル対応LTEスマートフォンが登場 - 日本への投入も期待
第57回 香港でも7000円台!! - HP TouchPad販売のドタバタ劇
第56回 韓国で全事業者が4Gを開始 - 月額料はパッケージ制、データ定額廃止の方向へ
第55回 「繋ぎ」には勿体無い、MeeGo OS搭載のNokia N9
第54回 世界の端末メーカーの勢力図が大激変
第53回 アジアで転売されるiPad 2、その現場を見た
第52回 ドコモのSIMロック解除、中国で大歓迎
第51回 2011年は低価格スマートフォンが流行に
第50回 2010年はMotorolaの復活に注目
第49回 AppleもNokiaも脅かす「その他」勢力が増大
第48回 気がつけば海外メーカーばかりな日本のスマートフォン
第47回 この冬はオール"フルタッチ"、本気で反撃に出るNokia
第46回 香港でiPadが発売、SIMロックフリー&単体販売
第45回 海外でも広がる「海外パケットし放題」サービス
第44回 発売開始前なのに何故!? - iPadが大量販売されている香港
第43回 海外も日本も同料金でデータ通信-日本通信がサービス開始予定
第42回 実用化が始まった太陽電池搭載ケータイ
第41回 Nokia、業績回復も今後が勝負 -急がれる「フルタッチ」端末の強化
第40回 「簡単ケータイ」が海外でも流行に
第39回 2009年の海外端末市場を振り返る
第38回 LGの「新チョコレート」がスゴイ - 21:9ディスプレイ搭載の「LG BL40」
第37回 いよいよ中国でもiPhoneを発売 - 出だしは不調?
第36回 WiMAX/Wi-Fi/W-CDMAに対応した「3W」端末がSamsungから登場
第35回 Nokiaが3G対応ミニノート「Booklet 3G」発表 - ノートPC市場参入の狙いとは
第34回 OEMメーカーのAltekが携帯内蔵デジカメ発表 - 将来Flickrケータイもでる?
第33回 中国にも3Gの時代がやってきた!! - 各社のサービスや戦略を紹介
第32回 iPhone 3G Sへの買い替えでiPhone 3Gが中古市場に登場?
第31回 機能性とデザインを追及した「ケータイストラップ」は日本に根付くか?
第30回 新型iPhone対抗端末? - Nokiaのフラッグシップ端末「N97」がいよいよ登場
第29回 アプリのメーカー直接配信時代がやってくる
第28回 海外メーカーが韓国市場にスマートフォンで参入開始
第27回 終焉を迎える中国のPHS、残した功績は大
第26回 滑り出し好調なNokiaのタッチUI端末「5800 XpressMusic」 - iPhone超えも?
第25回 中国で売れ筋の携帯機種は? - Nokiaが圧倒的人気の中シャープも健闘
第24回 "Appleの理論"が通じない香港、iPhoneの単体販売を開始
第23回 iPhoneを脅かす存在になるか? Nokia 5800 XpressMusicが登場
第22回 日本向けOMNIAの姉妹品? 韓国でHaptic 2が発売開始
第21回 パケット通信+無線LAN定額がトレンドの香港
第20回 販売国の増えるiPhone、注目市場の投入はいつ?
第19回 カシオの海外進出が期待できる? - ソフトバンクとの端末供給合意
第18回 日本で増加する中国メーカー端末
第17回 マルチメディアへの対応を強化するBlackBerry
第16回 香港におけるiPhone 3G - SIM差し替えは当たり前
第15回 Motorola、新型「明」で中国市場奪回なるか
第14回 LGのデザイン携帯"Secret"、その秘密に迫る
第13回 Appleの発表を待たずに「3G iPhone」の発売が確定
第12回 中国の通信事業者6社が3社に再編
第11回 iPhone拡販のために販売戦略を変更するApple
第10回 不振のMotorola、事業建て直しはなるか
第9回 中国でTD-SCDMAの商用テストサービスが開始
第8回 チョコレートからウォン・ビンまで - ユニークな韓国携帯のニックネーム
第7回 シャープの中国市場参入、勝算の道はどこにあるか
第6回 Sony Ericsson、海外事業の好調が日本事業の見直しに?
第5回 "3G版iPhone"はいつ出てくるのか?
第4回 EMONSTER、海外ではいくらで売られている?
第3回 XPERIAを投入するSony Ericssonの意図
第2回 メーカーの勢いの差が表れたMobile World Congress 2008
第1回 Nokiaの決算報告から見た2007年の海外携帯市場

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