ソフトバンクが7月1日から海外でのパケット通信を定額で利用できる「海外パケットし放題」を開始する。日本だけではなくどこの国でも海外に出てパケット通信を行った場合、現地利用は従量料金となることが一般的だった。この便利な海外パケット定額はすでに海外でもサービスが始まっている。

1日単位でパケット定額利用が可能に

ソフトバンクの海外パケットし放題は、海外の提携する通信事業者のネットワークを利用した場合にパケット料金を1日単位で定額利用できるようにするものだ。定額料金は1日1,980円だがサービス開始の今年7月21日から、来年の2011年6月30日までは1,480円/日に割引される。また利用対象はメールとウェッブ接続などで、動画などを利用する場合は1日2,980円となる。海外旅行や出張中に携帯電話を利用するシーンを考えてみれば、最も多いのがメールであり、後はレストランや取引先などの地図検索などであろうから大半の利用者は1,480円/日で済ますことができるだろう。

海外パケットし放題の金額は1日単位であり、たとえば1カ月フルに利用すれば4万数千円と高額となる。だが本来このサービスは短期の旅行や出張をイメージしたものであり、3泊4日程度の海外旅行でも気軽にパケット通信を利用してもらうためのものだ。従来はパケット代の上限がないことから海外に出ても普段使っている携帯電話でメールや情報検索などの利用をためらうユーザーが多かっただろうが、このサービスがあれば滞在中安心して利用することができる。現地ツアーで迷子になってしまい現在位置やホテルに戻るルートを調べる必要が出てきたときなども、1日定額でパケットが利用できればあわてることも無く落ち着いて行動できるだろう。

なお現地で利用する場合、滞在先で指定された通信事業者のネットワークに手動で切り替える必要がある。これは、定額契約は現地の特定通信事業者間とのものであり、ソフトバンクが契約を結んでいない事業者を利用した場合は定額では利用できないためである。通信事業者の手動切り替えは3G携帯であれば設定できるので、この夏以降海外に行く人は設定方法を覚えておこう。

香港ではすでに4社が提供中

この海外パケットし放題と同類のサービスは、海外でもすでに一部の通信事業者から提供されている。中でも香港は通信事業者5社のうち、4社がサービスを提供済みである。香港は都市国家であり隣の都市がすぐに外国であるため国際ローミングの利用は日常的なものである。これまで海外での利用は「取るだけ取る」という姿勢を見せていた各通信事業者も、アジア各国を跨いだ通信事業者のアライアンスができたころから国際ローミング料金の引き下げなど様々なサービスを提供している。

その一つが「ローミングDayパス」と呼ばれる、ソフトバンクと同類のサービスだ。2009年3月に1社が提供を開始して以来各社が同類のサービスを相次いで提供開始し、今ではアジアのみならずヨーロッパでも1日パケット(データ通信)定額が利用できる環境が提供されている。各社がサービスを相次ぐ背景には、これまで海外でデータ通信を利用しなかった利用者が安心して使い始めたことから収益増に繋がっていることが大きい。

香港では各社がローミングDayパスを提供中

料金は各社約1500円/日から2000円/日で、ソフトバンクとほぼ同額だ。実は国際ローミング利用料金は相手国の事業者側での料金コントロールが大きく働くため、どの国の通信事業者の料金もあまり変わらない。前述したようにソフトバンクの1480円/日を1カ月利用で換算すると料金が高いように感じるかもしれないが、他国で同様のサービスを開始しても、やはり料金は同程度なのだ。

なお香港は隣接する中国やマカオでの利用は価格を引き下げており、一番安い事業者は約800円/日で利用できる。香港と中国/マカオは陸路/航路で24時間気軽に行き来できるだけに人の往来も多く、料金を下げることで利用者増を狙っているのだ。また別の事業者はワールドカップ開催期間中のみ、南アフリカの特定通信事業者でのデータ定額を提供している。ソフトバンクも今後たとえば「韓国キャンペーン」のように、特定の国の料金を引き下げるプランを提供することで利用の喚起を促すのも面白いだろう。

世界的に大画面のスマートフォンの普及が進んでいることから、端末からのデータ通信利用頻度が増えているだけではなく、画面表示あたりのパケット量も増加している。国内、海外でスマートフォンを活用する利用者も増えていることから今回のような「海外パケット定額」サービスは各国でサービスの提供が相次ぐだろう。いずれは1日定額だけではなく「1週間」「1カ月」など長期利用に対応したプランの登場も期待したいところだ。