運動しやすいシーズンがやってきた。梅雨入りまでお出かけにはちょうどいい気候が続くようになり、近所の川縁にはジョギングする人の姿が増えてくる。音楽を聴きながら走るのであれば、やはり周囲の音も確認できる、耳穴をふさがないタイプのイヤホンが欲しい。

  • 完全ワイヤレスイヤホン「OpenFit Air」

  • Bluetooth対応になった“水陸両用”ネックバンド型イヤホン「OpenSwim Pro」

耳穴をふさがないイヤホンはさまざまなメーカーから投入されているが、今回は骨伝導ワイヤレスイヤホンですっかりおなじみになったShokzから登場する、ふたつの新機種に注目したい。都内で報道関係者向けに開催された発表会で2製品を借りることができたので、短時間ながら試聴したファーストインプレッションをお届けする。

  • 左がOpenFit Air、右がOpenSwim Proのパッケージ

今回取り上げるのは、耳をふさがない完全ワイヤレスイヤホンのカジュアルモデルとなる「OpenFit Air」(19,880円)と、“水陸両用”になったネックバンド型の「OpenSwim Pro」(25,880円)で、どちらも5月10日から販売される。試用機のカラーは、前者は近日発売予定ということで遅れて登場するピンク、後者はグレーをお借りした。

2機種の特徴をざっくりまとめると、次のとおりとなる。

  • OpenFit Airはダイナミックドライバーを搭載した、左右分離の完全ワイヤレスイヤホン(IP54防じん防水対応)
  • OpenSwim ProはBluetooth/MP3再生に対応する、骨伝導タイプのネックバンド型イヤホン(IP68防水、水深2mまで対応)
  • 2機種とも、同時に2台のデバイスに接続して切り替えられるマルチポイント対応
  • Shokzアプリでサウンドの傾向やボタン操作の割り当てをカスタマイズ可能

OpenFit Airは、「OpenFit」(2023年発売)をより買いやすい価格帯に落とし込んだカジュアルモデルという位置づけ。本体の素材が変更されていたり、イヤーフックの一部をくり抜いたカットアウトデザインになっていたりと、ぱっと見でわかる変化がいくつか見受けられる。OpenFitと同様にダイナミックドライバー内蔵なので、骨伝導イヤホン特有の“音量を上げるとくすぐったい”問題は気にしなくて良いのもありがたい。OpenFitは上位モデルとして、OpenFit Airとともに併売されるとのこと。

  • 左がOpenFit Air、右がOpenFit。ぱっと見でわかる変化がいくつもある

  • ダイナミックドライバーのサイズは同じとのことだが、OpenFit Air(左)は開口部のサイズがOpenFit(右)よりも若干小さいように見える

  • OpenFit Air(左)とOpenFit(右)を充電ケースに収めたところ

OpenSwim Proは、プールで泳ぐときに音楽を聴くだけでなく、手持ちのスマホの音楽をワイヤレスで楽しみたい向きにも適する。MP3ファイルなどを再生するメディアプレーヤー機能付きで、かつ耳穴をふさがない骨伝導タイプは選択肢があまり多くないので、貴重な1台といえそうだ(音楽ファイルを内蔵ストレージに転送するUSBケーブルも同梱)。ちなみに、Bluetooth非搭載だった従来機「OpenSwim」(2022年発売)は、後継機種であるOpenSwim Proに取って代わられることになる。

  • OpenSwim Pro(左)。比較対象として、現行機種のOpenRun Pro(右)を用意した

  • OpenSwim Pro(左)のトランスデューサー搭載部分は、OpenRun Pro(右)と違って開口部がないデザインだ

  • OpenSwim Pro(左)の右側にある操作ボタンはつややかなメタル調コーティングがされていて、指先でボタンの位置がすぐにわかる。充電/データ転送のための専用ケーブルとつなぐためのポゴピンも装備。OpenRun Pro(右)とは端子の形状が違うので共用はできない

2機種の装着感は、Shokzの現行製品とさほど変わらず良好。特にOpenFit Airについては、イヤーフックのデザインが改良されたこともあって軽い着け心地になっており、メガネユーザーである筆者にはありがたかった。

試聴には、手持ちの折りたたみスマートフォン(ワイモバイル「Libero Flip」)にインストールしたApple Musicの中から、ザ・ウィークエンドの「アイ・フィール・イット・カミング feat.ダフト・パンク」を選び、音量60%程度で再生した。ちなみに選曲の理由だが、筆者は現在絶賛ダイエット中ではあるものの、激しい運動やガチのランニングをしだすとすぐに疲れてしまって長続きしないので、この曲くらいのBPMにあわせて早足のウォーキングをするくらいが今のところちょうどいいのだ(あとは単純に自分の好きなダフト・パンクの参加曲だから、というのもある)。

なお今回は比較対象として、OpenFit Airには上位機となるOpenFit、OpenSwim ProにはMP3再生非対応のOpenRun Proを用意した。水中でOpenSwim Proを試用するのは別途機会があればということで、Bluetooth再生のみのテストである。

  • OpenSwim Pro(左)とOpenFit Air(右)を、Libero Flip(中央)とペアリングして試聴した

OpenFit AirとOpenFitは、どちらもダイナミックドライバーのサイズは同じで、BluetoothコーデックはAACにも対応。素の音はいずれも中低域が軽めのやや腰高なサウンドなので、Shokzアプリで「低音強め」のイコライザーをかけてみた。

新機種であるOpenFit Airは比較的あっさりしたサウンドで、少し耳から離れたところで音が鳴っている感じ。まさに“ながら聞き”にうってつけの味付けといえる。一方、OpenFitは同じ音楽を同じ音量で聴いてみると、情報量が多くてAirよりも濃厚な味付け。特に、打ち込みのリズム・パターンやコーラス部分などで奥行き感を感じられた。

オープンイヤーのイヤホンでもサウンドにこだわるのであれば上位のOpenFitを選びたいところだが、周囲の状況を確認しながら音楽やポッドキャストなどの音声コンテンツも聴ければ十分だけど、もう少し買いやすい価格だとうれしい……という向きにはOpenFit Airがピッタリだろう。

  • OpenFit Airを接続したときのShokzアプリの画面。イコライザー設定は4種類から選べる。本体のタッチセンサーで再生/停止や音量調整が行えるのが便利だが、これらの操作の割り当てはアプリから変更できる

続いてOpenSwim ProとOpenRun Proも聴き比べてみよう。ちなみに前者のみAACコーデック対応で、後者はSBC接続のみとなる。

OpenSwim Proは水中で使えるよう設計されていることもあって開口部がほとんどないためか、Bluetooth再生で聴くと頭の中で音が鳴り響く感じがして、若干窮屈な印象を受ける。スイミング中であれば、こういった聞こえ方の方が音がしっかり聞き取れていいのだろうか。一方、OpenRun Proのサウンドは、OpenSwim Proと比べると音がタテヨコにふわっと広がる感じ。やはり明確に音の聞こえ方が違う。

  • OpenSwim Proを接続したときのShokzアプリの画面。BluetoothモードとMP3モードを画面上で切り替えられる。本体ボタンの割り当てカスタマイズも可能。なお、MP3などの楽曲ファイルをアプリ上からOpenSwim Proにワイヤレス転送するような機能はない。これができたら便利なのだが……

スイミング用途でも、スマホと組み合わせての普段使いも両方楽しみたい……という人にはOpenSwim Proがハマるのだろう。しかしランニングやジョギングでしか骨伝導イヤホンを使わない自分のような人にとっては、OpenRun Proのほうに軍配が上がるのではないだろうか。

どちらも低音はもうちょっと欲しい気もするが、骨伝導イヤホンは音が出ているトランスデューサーを耳穴により近づければ低音の鳴り方が増すので、装着の仕方でカバーできる部分ではある。それと、OpenFitシリーズとちがってこちらはネックバンドタイプなので別体の充電ケースを持ち運ぶ必要がなく、耳周りが疲れてきたら首に掛けたままにしておけて、完全ワイヤレスタイプよりも使い勝手がいい。

OpenFit AirとOpenSwim Proは形状もユースケースも異なる製品であり、どちらにもメリット・デメリットが存在する。家電量販店などで実機を手に取って使い比べてみながら、自分に合った一台を選ぶと良いだろう。個人的には、価格面でこなれてきた感があり、音声コンテンツを聞き流すのにももってこいのOpenFit Airが気に入っている。しばらくはウォーキングの相棒として行動を共にしてもらおうと思う。