ついにGoogleのオンラインストレージサービス「Googleドライブ」の提供が始まった。無料ストレージは5GBだが、月々2.49ドルの支払いで25GBに拡大できる。機能や価格設定などから"Dropboxキラー"の呼び声が高い。しかし、DropboxとGoogleドライブを比較して、どちらか一方だけを使うようになるとは思わない。Googleの各種サービスとの連係、Googleドライブアプリなど、Googleドライブの持ち味が発揮される使い方で活用していくとは思うが、Dropboxをお払い箱にする理由は見あたらない。使用するパーソナルクラウド・サービスがまた1つ増えることになりそうだ。

他にも日常的にアクセスしているものだけで、iCloud、Windows Live、Pogoplug Cloud、Evernote、Instapaper、Flickr、Pinboard、Facebook等々、コンテンツやファイルをクラウドに置く場所は増える一方である。これらのサービスには、Webブラウザや専用アプリを使って様々なデバイスからアクセスできる。それがクラウドサービスの最大のメリットであり、たしかに便利なのだが、クラウドのあちこちにファイルが散らばり過ぎて、特定のファイルを探すときに、そもそもアップロード場所がどこだったか迷ったりする。こうなると、いつでも簡単にアクセスできているとは言いがたいような気分である……。

クラウドから情報を探し出す「Found」

ここ2週間ほど「Found」というMac用のソフトウエアを試用している。

まだ招待制の限定ベータ段階で、しかも宣伝にあまり力を入れてていないため、知名度が低いのだが、使ってみて「これ絶対、必要!」と思わせてくれたソフトだ。ただ、開発者の思い描いている世界ややりたいことが製品から伝わってくるのだが、残念なことに今はまだそれが上手く機能していない。

Foundは、Macのローカルストレージとクラウドサービスに置いてあるファイルを、まとめて検索できるようにする。つまり、複数のクラウドサービスから特定の情報やファイルを引き出してくれるソフトだ。

Controlキーを2回続けて叩くとFoundが起動し、あとは検索キーワードをタイプするだけ。1文字入れるごとに、ダイナミックに検索結果が変化する。現在はまだGmail、Googleドキュメント、Dropboxの3つのクラウドサービスとMacにしか対応していないが、5月の一般公開を目指し、サポートするクラウドサービスと、サポートするOSやデバイスの拡大に努めているという。

複数のクラウドサービスを一括検索するというのは、新しいアイディアではなく、Greplinなど、すでに一般公開されたサービスもある。そのような中でFoundが便利だと思うのは、GreplinのようにWebブラウザを通じて使うのではなく、Macのソフトウエアとして提供され、Macで扱いやすいようにデザインされているところだ。

Mac、Gmail、Googleドキュメント、Dropboxを一括検索する「Found」。結果をクリックするとプレビューが広がる

例えば、検索結果としてリストされたものをクリックすると、Macのプレビュー機能を使ってすぐに内容を確認できる。ドラッグ&ドロップでファイルを扱うことも可能だ。例えば、Foundの検索結果としてリストされた写真をドラッグし、Webブラウザで開いているGmailの新規メッセージにドロップすると、自動的に写真がメッセージに添付される (ドラッグ&ドロップに対応したブラウザが必要)。Foundを通じてクラウドサービス同士を連係させることも可能だ。例えば、Foundの検索結果からGmailに添付された写真をドラッグし、ブラウザで開いているGoogleドキュメントの書類にドロップすると、書類に写真が埋め込まれる。ローカルとクラウドの違いや、クラウドサービスの違いをユーザーに意識させることなく、普通にMacでファイルを検索し、普通にファイルを扱う感覚で複数のクラウドサービスを利用できるようにする。

ただ残念なことに、肝心の検索の動きがもっさりとしていて、精度も今ひとつなのだ。これでSpotlightやGoogle検索のようにきびきびと正確に検索が反応してくれたら、どんなに便利なツールかと思う。

Finderをクラウドに広げるという発想

GoogleドライブやDropbox、Evernoteなど、パソコンと完全同期できるクラウドサービスは、パソコン上での扱いやすさが大きな魅力の1つだ。クラウド上にあるファイルが、ローカルではパソコンの検索機能の対象になってローカルの他のファイルと同じように扱え、そしてローカルで変更を加えたら、それがクラウドに反映される。ローカルとクラウドの隔たりが少ない。

ただ、タブレットやスマートフォンなどのモバイルデバイス、ストレージの小さなモバイルノートPCなどでは必要に応じたファイル同期になるし、そもそも手間のかかる完全同期を前提としたクラウドサービスはそれほど多くはない。

Greplinの場合は、ユーザーが登録したクラウドサービスの内容をスキャンしてインデックス化し、Greplinのサーバに収めるため、幅広いクラウドサービスが対象になり、かつ検索の反応も良い。だが、個人的に使っているクラウドサービスの中身をクラウドの向こう側で探られるのはあまり気持ちの良いことではない。プライバシー保護やセキュリティに不安を覚えるし、前述のようにクラウドの向こう側にファイルがあるという扱いにくさも感じる。

Foundはユーザーがコントロールできる安心感と、ネイティブアプリの使い勝手の良さを提供しながら、幅広いクラウドサービスを検索対象にしようとしているが、検索機能のパフォーマンスが犠牲になっている。

いずれも一長一短で、こうなると抜本的な発想の転換が必要ではないかと思えてくる。

あらゆる種類の情報が様々な場所に存在し、それらがルーズにつながり合いながらインターネットは発展してきた。パーソナルクラウドも同様だと思う。様々な情報やデータが、いろんなクラウドに存在し、それらがつながり合うこと、例えばFlickrで管理している写真を個人ブログに掲載するというようなことで情報やデータの価値が高まる。しかしながら、最近のパーソナルクラウドの競争は縄張り争いに終始しているきらいがある。また、"ポストPC"という言葉が使われるようになった割には、断片化が進むクラウドをつむぐような役割を、ポストPCデバイスが担っているようには思えない。一部の製品は、むしろ断片化を助長していると思えるほどだ。FinderやExplorerのようなツールを通じて、ローカルファイルだけではなく、パーソナルクラウドもオープンに一望できるようになったら、どんなに便利なことかと思う。