PCやスマートフォンにいまや必ず装備されているBluetooth(ブルートゥース)。マウスやヘッドホンでお世話になっている人も多いのではないでしょうか。今回は、Bluetooth製品の取り扱いと販売促進を行っているGNネットコムジャパン株式会社の八島史典マーケティングマネージャーに、Bluetooth製品の販売と数学との関連について、お話をうかがいました。

-本日はよろしくお願いします

よろしくお願いします。

-さっそくですが、GNネットコムジャパンという会社についておうかがいしてよろしいでしょうか?

はい。GNネットコムはデンマークに本社がある通信機器メーカーで、とくにヘッドセットは高い評価をいただいています。当社はその日本法人です。

-ヘッドセットと言うと、保険会社や金融機関のテレビコマーシャルなどで、コールセンターのお姉さんが使っているものですよね?

そのとおりです。頭につけるタイプや、耳にかけるタイプなど、さまざまな種類を扱っていて、法人から個人のお客さまにまで広く愛用していただいています。

私たちGNネットコムの製品のブランド名は『Jabra』といいます。ロゴマークは黄色と黒でつくられています。

-ヘッドセット売り場に行けば、必ず目につきますよね。Bluetoothを使った製品の注目度は高くなってそうですめ

はい。実はBluetoothを一般のお客さま向けにヘッドセットとして販売したのは、当社が初めてなんです。長所はなんといってもワイヤレスである点ですが、当社の製品は雑音を低減するノイズキャンセリング機能や、余裕のある出力が自慢の高音質スピーカーの搭載など、より自然なかたちで通信ができるようになっています。

-まさにパイオニアなんですね!

今やBluetoothは私たちの生活のいろいろなところに入ってきているんですよ。通話、音楽、データのやり取りなどができる通信規格です。ヘッドセットだけでなく、ゲーム機のコントローラーやワイヤレスマウスなどにも使われています。

私は2005年12月から勤務していますが、Bluetoothヘッドセットの販売台数は、昔と比べると本当に増えました。最初の波は道路交通法の改正のときです。自動車の運転中、携帯電話での通話に罰則が適用されたことによって、その後国内の携帯電話にBluetoothが搭載され始め、そして何よりApple社のiPhoneが発売された影響が一番大きかったですね。

それまでは法人向けの販売が中心だったのですが、iPhoneが発売されてからはあっという間に一般のお客さまにもBluetoothヘッドセットを使っていただけるようになりました。

-確かにiPhoneのBluetooth接続で、カーオーディオやワイヤレスヘッドホンを使い始める人が出てきましたよね

今ではBluetoothをみなさん意識せずに使っていますよね。中国でも最近法律が変わって、車を運転中の携帯電話の使用が禁止になったんです。そうしたらすごい勢いでBluetoothのヘッドセットが売れ出したらしくて。

まだまだBluetoothは広がっていきそうですね。

-八島さんはJabra製品のマーケティングをしていらっしゃるんですよね?

はい。私はおもにJabraの法人向け製品のマーケティング業務を行っています。販売支援の仕事と言っていいでしょうね。入社当時はコールセンター向けの製品が中心で、一般の消費者の方々に向けてのアピールはまだ難しい時期でした。

-でも、実際に販売するとなると、さまざまなくふうが必要ですよね?

はい。たとえば、Bluetoothとは異なる無線の規格は各国で違うので、本社には日本仕様の製品を作ってもらう必要があります。そのために「これだけ売ります」という目標を数字として提出します。

その数字は、小売店さんに向けての「これだけ売ってくれたら、これだけ安く卸せる」といった販促推進の働きかけや、お客さまに向けたキャンペーンなどを考慮したうえで、はじき出さなければならない数字です。

これは数学とマーケティングとの大きな接点と言ってよいのではないでしょうか。似た製品の実績や、年間どれだけ売れば利益が出るのか、キャンペーンの効果でどのくらい販売はプラスになるか、そういったことを考えるときに使うのは基本的ですけれど、やはり四則演算ですね。

-確かに、目標って根拠にもとづいて立てるものですよね。そのためには計算が必要なんですね

ワイヤレスの製品は、1か所における設置台数が周波数の帯域によって制限されるため、法人のお客さまに向けて製品を販売する場合は、そのことを説明しながら提案し、周波数を考慮した設置台数で見積もりを出さなければいけない場合があります。

「何台同時に使えますか?」というのは、お客さまにとっては大切なことで、その計算ができなければ提案さえできません。また、オフィスのレイアウトや、壁の素材などでも通信状況は変わります。そのような技術的な制約を考えるためにも、数理的な基礎はとても大事ですね。

-数学をそんなにも使っていらっしゃるんですね。八島さんはどこかで専門的に数学を学ばれたんですか?

基本的には、中学・高校時代に学んだことが基礎になっていると思います。私はネバダ大学リノ校というアメリカの大学の経営学部マーケティング学科で学んでいました。そのときは、ファイナンスや統計などで数字になじんでいました。

ただ、単純な数学としての難易度は日本の学校のほうがレベルは高いんじゃないでしょうか。多分、日本で学んだ基礎があったから比較的容易に問題が解けたりしたので、数学は楽しかったですよ。

-数学はお好きだったというわけですか?

正確に言うと「好きだった」というより「好きになった」んですね。昔から計算は速かったのですが、算数や数学はあまり好きではありませんでした。高校時代の数学もどちらかというと苦手だったかな。

ところが、大学受験のときに1、2、3とステップがある問題の3の答えがすぐに解けたことがありました。別の解法で答えを出してしまっていたんです。そこから急に数学がおもしろく感じるようになりました。

数学は答えが1つなのが魅力ですよね。客観的には答えが1つ。でも、そこまでの道筋にいろいろな方法があるのはおもしろいですね。

-その数学観、とてもよくわかります。本日は貴重なお話をありがとうございました。

Bluetoothの魅力をたくさん教えてもらい、製品がほしくなってしまう取材でした。別の作業をしながらでも通話ができるというのは画期的ですよね。構造を熟知したうえで、顧客に最適な製品を販売するという数学の基礎を大切にしている八島さんならではのお話は、とても興味深かったです。Bluetoothと数学の貴重なお話をありがとうございました!

今回のインタビュイー

八島 史典(やしま ふみのり)
GNネットコムジャパン株式会社
マーケティングマネージャー
1967年、神奈川県出身。
ネバダ大学リノ校卒業後に帰国し、ファストフードチェーンや通信販売事業などでマーケティングを担当。
2005年からGNネットコムジャパンでおもにマーケティングを担当。

このテキストは、(公財)日本数学検定協会の運営する数学検定ファンサイトの「数学探偵が行く!」のコンテンツを再編集したものです。

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