連載『「老後破産」を回避せよ! - アラサーから始めるマネー対策』では、FPの馬養雅子氏が、貧困により老後の生活が破綻する「老後破産」をどのように回避すればよいのか、アラサーのうちからできる対策法をご紹介します。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

小さい子供のいるアラサーや、これから子供を持ちたいと思っているアラサーにとって、気になるのは教育費ですよね。教育費ってどのくらいかかるのでしょうか。そして、それをどう準備していったらいいのでしょうか。今回は子供にかかるお金を考えてみます。

子供の教育費、一体いくら掛かる?

「子供1人当たりの教育費は1,000万円以上」といわれます。これって本当でしょうか。文部科学省は「子供の学習費調査」を2年ごとに行ってその結果を公表しています。これは、「学校教育費」「学校給食費」「学校外活動費」を幼稚園から高校まで、公立・私立それぞれについて調査したものです。

その2014年度のデータと、同じく文部科学省が発表している国立大学、私立大学の初年度納入金(入学金、施設整備費、授業料)のデータを組み合わせて進路ごとの合計額を計算してみると、次のようになりました。

幼稚園から大学までの教育費

やはり1,000万円~1,500万円くらいはかかっていますね。金額を見ると「こんなに払えない!」と思ってしまうかもしれません。でも、これは大学卒業までの累計であって、1,000万円もの金額を一度に払うわけではありません。

例えば、公立小学校の場合、塾や習い事も含めた1カ月の教育費の平均額は約2万7,000円。同様に公立中学は約4万円、公立高校は約3万4,000円となります。このような高校卒業までの教育費は日常の家計の中から支払っていくのが基本です。

都市部では中学から私立に進むケースも多くなっています。私立中学に進学した場合、教育費の月平均額は約11万円で、公立中学校の2倍以上。それを考えると「みんなが行くから」と安易に私立中学を選択するのは考えもの。私立中学への進学は家計の状況に合わせて慎重に考えるべきでしょう。

教育費の中で、最もお金がかかるのは大学です。特に入学するときは、入学金と半年又は1年分の授業料、施設整備費などをまとめて払う必要があり、そのほかに受験関係の費用もかかります。これらをそのときになって用意するのは難しいので、子供が小さいうちからコツコツと貯めていくようにします。目標額は300万円くらい。子供が生まれてすぐに毎月1万円ずつ積み立てると18歳のときに216万円になるので、これをベースにするとよいですね。 私立の理系に進学したり下宿したりする場合は更にお金がかかるので、子供が中学生になって進路が見えてきた段階で、ボーナスを活用するなどして積立額を増やしておく必要があります。

奨学金や教育ローンに頼らない

親であれば「子供にはできるだけのことをしてやりたい」と思うのは当然です。だからといって際限なくお金をかけるわけにはいきません。特に小さいときにたくさん習い事をさせたり、おもちゃや服を買い与えすぎたりすると、大学進学費用が十分に貯められなくなるので注意が必要です。

大学進学の費用が足りないからと、奨学金や教育ローンに頼るのもNGです。今、社会人になっても奨学金が返せない例が増えて問題になっているのはご存じのとおり。奨学金を借りると、社会人としてスタートするときに借金を抱えていることになり、その後の貯蓄が十分にできなくなってしまいます。

教育ローンは親が借りて親が返します。通常は、教育費の負担がなくなったら老後資金の準備を本格的に始めますが、教育ローンを借りると、その時期に借金の返済をしなければならず、老後資金が十分に貯められなくなってしまいます。

奨学金や教育ローンを利用しないですむよう、子供が大学に入るまでの間に計画的に貯蓄をしておくこと。それが老後破産を回避することにつながります。

執筆者プロフィール : 馬養雅子(まがい まさこ)

ファイナンシャルプランナー(CFP認定者)、一級ファイナンシャルプランニング技能士。金融商品や資産運用などに関する記事を新聞・雑誌等に多数執筆しているほか、マネーに関する講演や個人向けコンサルティングを行っている。「図解 初めての人の株入門」(西東社)、「キチンとわかる外国為替と外貨取引」(TAC出版)、『明日が心配になったら読むお金の話』(中経出版)など著書多数。オフィシャルホームページ「あなたのお金のアドバイザー」。