Flashアニメ作家・青池良輔がクリエイターになる方法を熱く伝授する連載「創作番長クリエイタ」。今回は、これまで解説してきた「Flashアニメーションのテクニック」をまとめてみる。
Flashアニメーション制作のまとめ
この連載でも17回以降、「Flashでアニメーションを作る」ということについて、いろいろ書いてきました。ここで一度まとめておきたいと思います。
Flashの2大作画ツールストロークを表現できる「ブラシ」とベクターのラインを描く「ペンシル」の特性を理解し、自分の求める作画に近い物を使いこなす。
作業効率と30fpsのビデオへのコンバートを考慮した15fpsで動画を描いてゆく。アニメーションのテイストによって、1秒辺りのコマ数を使い分けてみる。より多く動かしたいキャラクターは、作画効率を考え多少のデフォルメ等も考慮しておく。
コマアニメの中にトゥイーンアニメーションを効率よく組み込む方法
タイムライン上に描く「パラパラ漫画」をより効率的に作成する為に、コマアニメにトゥイーンアニメーションを組み込む方法を検討する。作画的に変化のない部分、「移動、2D回転、拡大縮小」で部分的に再利用できる部分はシンボル化し、コマアニメと組み合せてFlashの利便性を活かしてゆく。
「Flash CS4」以降のIK(インバースキネマティック)を活用し、体の各関節を分解したパーツにボーン(骨9を通し、移動回転しても違和感のない支点を設定し、パペットの様にキャラクターをアニメートしてみる。AS3対応であることなど、ちょっと使い方には癖があります。
Flashアニメーションでキャラクターを活き活きと見せる演出方法とは?
制止しているキャラクターでも、「目パチ」、「口パク」を使うことで、無機質な状態の絵に生命感を与えることが出来る。「目パチ」は視線や、表情の切り替えのアクセントとしても有効。「口パク」は、開き口、とじ口、中間の3種類のループで対応できる。
原画の間の作画において、均等に動きを割るだけでなく、動き始めのゆっくりな「先詰め」(イーズイン)、動き終わりのゆっくりな「後詰め」(イーズアウト)を使う事で、動きにメリハリをつけてみる。
動きの中でその物体を押し潰したり引き延ばしたりすることで、動きを大げさに描き、豊かに表現してみる。またキャラクターが大きくポーズを変える時等に一種の「目くらまし」的に使用する事で、リズムとキレを生み出すことが出来る。
キャラクターの力の「溜め」の表現に重要な役割を果たす 予備動作、意識的な動作に追従する無意識の動作を表現する「後追い」を用いて、重心や質量等の表現をアニメートする。予備動作、後追いでは、大きな誇張を入れることで大変アニメーションらしい、伸び伸びとして楽しい表現ができる
物質の動きを、曲線で捕らえた物を「運動曲線」と言う。運動曲線を考えてゆく足がかりとして、単独のオブジェクトの動きを理解し、さらに次のステップとしていくつかのパーツで構成されているオ ブジェクトの動き方が描くラインを考える。運動曲線には、意志を持った体の動きだけでなく、惰性、摩擦、重力なども関係する。
アクションに含まれる意味を表現し、さらに観客に伝えることを意識した場合に有効な「副次アクション」について考える。ある意味記号的な動作を使い、観客との共通認識を伝えるツールとして瞬間的に意図を伝える。ただし、副次アクションは、その記号的な側面から、表現が紋切り型になってしまう可能性も。
Flashを使用したアニメーションの中には「動かさない」、「動画を減らす」ことで特徴を出している作品もある。製作の手間や物理的作業量の問題で「動かせなかった」上での、方法論である側面も。アニメ技法を制限する事で必然的に、テンポの良いカット割りを必要とし、作画部分以外での面白さを求められる。
と、かなりざっくりをまとめてみましたが、キャラクターの動きに関しては、とにかく自分で「やってみる」、「観察する」、「考える」ということが大切です。そして、それを作品のスタイルに合わせ、最適なテクニックを使い、表現する。そのために、演出、経験、計画性を求められます。
青池良輔
1972年、山口県出身。大阪芸術大学映像学科卒業後、カナダに渡り映像ディレクター、プロデューサーとして活動。その後、Flashアニメで様々な作品を発表。短編アニメやCFを多数手がける。最新作はDVD『CATMAN』(2008年)、『ペレストロイカ ハラペコトリオの満腹革命』(2008年)。『藤子・F・不二雄のパラレル・スペース DVD-BOX』(2009年)では、 谷村美月主演の実写作品「征地球論」の監督と脚本を担当。森永アロエヨーグルトのWebサイトで、最新Flashアニメシリーズ5作目となる『Boy meets Girl アロ恵』公開中。全国のTOHOシネマズで本編前に上映されている短編『紙兎ロペ』では、アニメーション制作を担当。
「Adobe CS5」体験版はこちらから