Flashアニメ作家・青池良輔がクリエイターになる方法を熱く伝授する連載「創作番長クリエイタ」。連載第23回では、作画テクニックの上で大切な「詰め」について考える。

アニメーションにおける「詰め」とは?

前回前々回と口パク等のアニメーション技術に関して書いてみましたが、さらに作画において大切なテクニックについて、話を続けてゆきたいと思います。ということで、今回は「詰め」について考えてゆきたいと思います。

アニメーションには、砂アニメやクレイアニメ等が代表的な1枚の絵から順次、次の絵を作ってゆく方法と、一般的にセルアニメ等で使われている要所要所の原画を描き、その間を動画で埋めてゆく方法があります。この後者の方法では、的確な原画が描かれていても、その間の動画で印象が大きく変わってしまう場合があります。その時に考えなければいけないのが「詰め」です。

詰めとは、原画と原画の間の、動画を描く時に、動き初めや動き終わりのタイミングを絵として特徴づけて描く方法です。動画の割り方には「均等割」、「先詰め」、「後詰め」というものがあり、それぞれで印象が変わります。

このサンプルでは、2枚の原画の間を、7枚の動画で描いていますが、それぞれ枚数は同じでも描き方が違います。先詰めでは、始めゆっくり動き出し動き終わりに向かって加速する印象があり、後詰めでは、さっと動きだしゆっくりと止まる感じになります。

この動きを考えるのが、なかなか面白いのです。例えば、何かを持っている手を前に突き出すのに、先詰めか後詰めかで、その持っている物の重さを表現できます。また、その度合いを極端にすることで、重さの印象も変えることができます。また走る動画などでは、均等割りでなく、後詰めにすることでいわゆる今っぽい動きが表現できます。アニメプロダクションの系統やアニメーターによって、特徴というかこだわりがいろいろあったりするようです。

また、この詰めですが、ここまでは一定のタイミングで動画を差し替えてゆくことを前提としていますが、タイムシート上でのタイミングを変化させることで印象を変えるという方法もあります。例えば一定のタイミングで描いた均等割の動画の、表示フレーム数を変更して動きの印象を変えられます。ただこの方法は、動きの遅くなってしまう部分の作画の粗が見えてしまうという弱点もあります。

先詰めや後詰めは、算数の2乗の比例関数の様な感じで、均等割に比較して作画の時に多少の表現力が必要になり、ちょっと難しい部分もあるのですが、僕がFlashで作画する場合は、すごくざっくりとした作画をします。例えば、後詰めの場合、原画A、Bの間に3枚の動画を描く場合に、1枚目はAとBの半分、2枚目は1枚目の動画と原画Bの間、3枚目は2枚目と原画Bの間という風に、動きの1/2、1/4、1/8という風に描きます。この方法では一定のツメしかできませんが、振返り等のアクションを描く時には、ちょっとしたニュアンスになるのではないでしょうか?

また、先詰めと後詰めは一緒に使うことも多く、上昇してから落下するものであれば、初速が早く後になるほどスビードの落ちる後詰めで頂点に達し、下降は先詰めで描くと自然な印象になります。また、大きなものを振り回すとき、振り回すのであれば先詰めで終了を表現し、加速した後、後詰めでゆっくり止めるという感じになると思います。

これはFlashとかデジタルでグラフィックを動かす時に使う「イージング」です。先詰めが「イーズイン」、後詰めが「イーズアウト」になります。このイージングは、「あれ? インだっけアウトだっけ?」とちょっと混乱することもあるのですが、イージングに設定する数値がマイナスであれば、初速が遅く、プラスであれば初速が速なるという風に覚えておけばいいかと思います。

これらの動きの作画は、すぐには身に付かず、僕もさんざん苦労している部分ですが、理解を深めれば動きにメリハリが付けられるので、気合いを入れて学んでほしい部分です。またこれらのテクニックは、Webデザイン等でテキストアニメーションや、ボタンアクションにも応用できる部分ですので、デザイン系の人も勉強して損はないでしょう。

青池良輔


1972年、山口県出身。大阪芸術大学映像学科卒業後、カナダに渡り映像ディレクター、プロデューサーとして活動。その後、Flashアニメで様々な作品を発表。短編アニメやCFを多数手がける。最新作はDVD『CATMAN』(2008年)、『ペレストロイカ ハラペコトリオの満腹革命』(2008年)。『藤子・F・不二雄のパラレル・スペース DVD-BOX』(2009年)では、 谷村美月主演の実写作品「征地球論」の監督と脚本を担当。森永アロエヨーグルトのWebサイトで、最新Flashアニメ『BABY&GIRLS アロ恵』公開中。全国のTOHOシネマズで本編前に上映されている短編『紙兎ロペ』では、アニメーション制作を担当。