またも「やらせ」発覚

「テレビがつまらなくなった」と気付いたキッカケはフジテレビ。タイアップと自己宣伝、アナウンサーという社員同士の馴れ合いなどなど。全ての民放に通じるわけですが、とりわけ"目に余る"状態だったテレビ局がフジテレビだったのです。

前回触れた「フジテレビ」と並び、視聴率で苦戦が続く「TBS」。TBSでは「やらせ」疑惑が浮上し、ネット界隈で話題となっています。番組は「水曜日のダウンタウン」。様々なタレントによる独自の「説」を検証していく番組です。

問題とされる2015年1月28日の放送で、カンニング竹山さんが「ブックオフの福袋買うヤツはどうかしてる説」をぶち上げました。様々なジャンルの本があるブックオフで、中身の分からない福袋を買う客は「どうかしている人間」というもの。

これを本気で竹山さんが主張しているなら、彼こそ「どうかしている」のでしょう。何故なら「福袋」とは当たり外れを楽しむものであり、そもそも、常識的に考えれば「エロ本と絵本と村上春樹の詰め合わせ」を福袋にする書店などありえません。

仮にそんな書店があるなら、買う人よりも売る方が"どうかしている"のであり、ツッコミ先を間違えています。舞台となったのは古書店チェーン「ブックオフ 西宮建石店」。用意された福袋は「コミック試し読み福袋」という企画で、15冊入りで1000円ですから「1冊66.6円」と割安でした。

ツイッターで発覚

オンエアによると、売れた福袋は「1個」で、さらに購入した客が、翌日にその中の3冊を「読まず」に売りにきたとして「どうかしている」とテロップをいれます。しかし、延べ2日間の取材中に複数個の販売を取材班は確認しており、福袋の購入者にしても「読了したものを処分しにきただけに過ぎない」と告発したのは「ブックオフ 西宮建石店」のツイッター公式アカウントです。

そもそも、当初のオファーが「完全にバラバラなタイトルで中身を見せずに作ってもらえませんか」と福袋の中身まで、番組スタッフが指示してきており、企画そのものが「捏造」の臭気が強く、映しだされたテロップは「嘘」です。

さらに、番組は嘘を重ねており、100円ショップ「得得屋 三鷹店」の福袋を「安けりゃ何でも良いというわけでもなく、1つも売れず」と紹介していましたが、実際には完売。

店や会社に承諾なく放送していたため、結果として番組の最後と公式ホームページで「お詫び」を表明することになりました。

ダレノガレは誰のため

仏具店の福袋を買った客を「葬式世代」とレッテルを貼るなど、過激と失礼を、演出と嘘の区別がつかない「企画0.2」です。個人がSNSを通じて、情報発信できる時代の企画ではありません。そして「お詫び」を放送した翌週も騒動が勃発します。

タレントのダレノガレ明美さんが、番組の恣意的な編集を「ツイート」により暴露してしまったのです。

「タメ口ハーフは年下にタメ口をきかれたら怒るのか?」というドッキリ企画で、"タメ口キャラ"と紹介された彼女は、控え室で年下のADにタメ口をきかれ、その言動をたしなめます。

オンエア後、「自分はタメ口で、他人には敬語を求めるのか」と、彼女のツイッターは「炎上」。そこで彼女はプライベートでは敬語を使っていると告白し、企画そのものをご破算にします。構図はSNSによる内部告発ではありますが、ブックオフとは事情は全く異なります。

出演を受託したタレント事務所は、番組趣旨を理解した上で契約しており、舞台裏の暴露はいわば「契約違反」だからです。ただし、オンエアのなかでも「空気を読んでいる」と答えているように、他の番組の彼女は敬語を使っていることの方が多く、「ダレノガレ=タメ口」というキャラ設定はすでに崩壊しています。

前科のあるタレント

また、同じ企画で「タメ口タレント」として登場した「水沢アリー」「道端アンジェリカ」の両人も、番組の中で敬語を使っていることは多く、タメ口を完遂しているのは「ローラ」ぐらいです。

その「本丸」の出演承諾を得られなかった時点で「企画0.2」……というより、「ダレノガレ明美切れる」を前提にした「企画」だったとしたら、これは致命的な0.2です。なぜなら、彼女には「前科」があるからです。

ダレノガレ明美さんは、ほぼ1年前の2014年2月9日、同じTBS系「さんまのスーパーからくりTV」の企画で、一般男性に「告白」し「成功」します。

ところがやはりツイッターで、ファンから「好きな相手とはあの方だったんですか??」と質問されると「違うよ」とあっさり否定。別に好きな人がいるときっぱりと宣言して、番組の裏側をしれっと告白します。つまり「前科持ち」を起用した「キャスティング0.2」です。

番組公式サイトには「他局にバラエティ番組のない水曜22時枠に全く新しいオリジナリティあふれる企画で、日本中を明るい笑顔で包みます!」とあります。

しかし、賛否分かれる珍説を、侃々諤々の議論で笑いに変えようとする番組(企画)は、同じ水曜日の21時から放送されている、フジテレビ「ホンマでっかTV」が既にあり、放送日時と内容といい「どうかしている」のは誰でしょうか。

ちなみに、2015年2月5日に発表された民放キー局5社の2014年4~12月期決算では、日本テレビHD、テレビ朝日HD、テレビ東京HDの3社が増収組。前回のフジテレビと今回のTBSの苦戦はまだまだ続きそうです。

エンタープライズ1.0への箴言


SNS時代に「やらせ」は困難

宮脇 睦(みやわき あつし)

プログラマーを振り出しにさまざまな社会経験を積んだ後、有限会社アズモードを設立。営業の現場を知る強みを生かし、Webとリアルビジネスの融合を目指した「営業戦略付きホームページ」を提供している。コラムニストとして精力的に活動し、「Web担当者Forum(インプレスビジネスメディア)」、「通販支援ブログ(スクロール360)」でも連載しているほか、漫画原作も手がける。著書に「Web2.0が殺すもの」「楽天市場がなくなる日」(ともに洋泉社)がある。最新刊は7月10日に発行された電子書籍「食べログ化する政治~ネット世論と幼児化と山本太郎~」

筆者ブログ「ITジャーナリスト宮脇睦の本当のことが言えない世界の片隅で」