【コラム】

デジタルネイティブ時代のICT教育

1 デジタルドリルシステムに見る学習効果 - インテル&内田洋行の取り組み

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調べ学習だけに留まらないパソコンの使われ方を

「教育現場でのICT(情報コミュニケーション技術)活用」が叫ばれて久しい。公立の小中学校では、パソコンルームやネット環境などのインフラ整備が整い始めたここ数年でも、まだまだ積極的に活用できている学校は多くない。現状は、どのようにして授業に取り入れたら効果的な利用ができるのかが分らないといった問題があるからだが、「デジタルネイティブ」とも呼ばれる現代の子どもたちにとって、パソコンはなんら特別なものではない。ニンテンドーDSや携帯電話を始め、子どもたちを取り巻くデジタル環境が加速的に進化する中、今あらためて"イマドキ"のICT活用が検討され、改善され、より効果的なシステムが導入される時期にきているのではないだろうか。最近は、ペン入力機能を備えたタブレットPCの教育利用が注目されおり、活用事例も出てきている。

2008年9月から、千葉県柏市内の公立小学校2校で、「タブレット機能を備えた小型モバイルPC」を活用した、学習効果を検証する実証実験がスタートした。この実証実験は、インテルと内田洋行が、小学校における「児童一人にPC1台」の授業導入を推進すべく、その有効性を検証する目的で行っているものだ(関連記事)。導入開始後2カ月を経て、先ほど行われた、柏市立旭東小学校の公開授業を訪れた(2008年11月28日)。

今回の実証実験に参加している小学校は、柏市立旭東小学校と同手賀東小学校の2校である。両社の提案をもとに、柏市の教育委員会が選定を行い、実証実験の趣旨の賛同を得て上記2校の参加となった。

同教育委員会は、もともとICT教育に積極的な自治体であり、今回訪れた旭東小学校は、平成1年(1989年)から同教育委員会の情報教育研究推進校に指定され、コンピュータ教育のあり方を熱心に研究してきたという実績と背景がある。最近では、パソコン教室の有効活用や教室内での教師用PCの設置、そしてプロジェクタ活用などを積極的に行ってきているが、普通クラス内で児童一人ひとりに小型ノートブックPCを持たせて授業を行うといった試みは、教員にとっても初めてという。

デジタルドリルシステムを使った反復学習とは

昨今、話題にもなっている「基礎学力の低下」を食い止めようと、初等教育の現場では、漢字の"書き取り"や計算問題の"反復学習"が注目されている。今回の実験は、この"反復学習"を小型ノートブックPCと学習ソフトのドリルシステムを使って半年間実施し、その効果を検証していくというものだ。PCにはタブレット機能(ペンによる手書き認識機能)が備わっており、児童たちは操作ペンを使って、文字をそのまま画面上に書き込んで書き取り練習を行うことが可能となっている。

実証実験の内容

検証期間:2008年9月~2009年3月
検証環境:タブレット機能(ペンによる手書き認識機能)を備えた小型ノートPC(富士通製)
校内無線LAN環境、学習ソフト「小学館デジタルドリルシステム」(小学館製)
対象児童:小学5年生と6年生(柏市立旭東小学校)

授業開始時には、児童たちの机上には1台ずつの小型ノートブックPCが置かれている。まずは教員が、プロジェクタを使って手書きの文字を映し出して、漢字の「トメ、ハネ」についての説明を行う。学習ソフトの「小学館デジタルドリルシステム」には、トメ・ハネや書き順を細かく指導する機能が備わっているが、ただ単に繰り返させるのではなく、あらかじめ児童たちにその重要性について説明しておこうという目的で行われる。

前回の授業で「トメ・ハネ」を"パソコンに指摘されて"同じ漢字で行き詰っていた児童がいたため今回の授業では説明を取り入れたそうだ

説明が終わると、教員の「では始めてください」との声がけだけで、児童たちはそれぞれPCを開き、PCとソフトウェアの起動を行う。無線LANによって接続された校内ネットワークを通じて、サーバーに児童たちの学習データが置かれている。各児童のログインに必要な個別のID/パスワードの情報を入れたUSBメモリを児童数分用意し、配布している。児童たちは、PCやUSBメモリの扱いには慣れたものだ。ソフトが起動した児童から、次々と漢字の書き取り練習を始めていく。

操作については困った様子はない。無線LANの接続状況で、PC起動時に時間の差が出ると「ネットがまだ繋がらない~」という程度だ

書き順のお手本を見ながら、デジタルペンを使って漢字を書いていく。教員が指導に見回る

集中度がスゴイ! 誰もがみな黙々と練習を続けている。何よりもやる気を起こさせるのは、その場でもらえる"赤マル"。達成率が示される棒グラフを確認しながら「やった!」とつぶやく児童も

ノートPCの充電ラック。20台分の小型ノートPCが一度に充電可能である。キャスター付きのラックごとクラス間の移動を行うことが可能だ

効果測定と指導計画など具体例が待たれる

システムを使った学習の流れは、以下のようにまとめることができる。

それぞれの児童が、課題の漢字を書き終わると同時に、システムが評価を行って○や×を付ける。トメやハネの箇所での修正があった場合は、システムから自動的に指摘され、○印をもらうまで練習を反復して行っていく。

そして、この学習システムを使ったメリットは、大きく分けて以下の2点が挙げられる。

  1. 従来の手書きの書き取り練習では、教員が児童を個別に細かく指導することは難しかったが、システム上で"その場で指摘や評価を受ける"ことは、児童の意欲向上に繋がる。
  2. 覚えきれていない漢字を着実にクリアしてから次に進むといった、個人差に応じたペースでの学習が可能となる。

興味深かったのは、学習システムを使っている間、児童たちの集中力がずっと持続していたことだ。児童たちは「手書きはやる気が起きないけれど、パソコンなら漢字の練習も楽しい!」「パソコンだから全然飽きない」と言う。ノートと鉛筆での手書きは嫌だけれど、向かう教材が"パソコン"であるだけで楽しい理由は何だろう? 新しいモノを使うワクワク感なのだろうか、システムとのオンデマンド的なやり取りから来るものだろうか。まったくの個人的な意見だが、そんなことの検証も行っていくと、授業でのPCの効果的な使い方や、教員と児童も含めたPCを使用するにあたっての注意点なども見えてくるかもしれない。

ICTの教育活用がこれまで普及してこなかったのは、子どもたちにやる気を起こさせ、前向きに取り組ませることのできるソフトウェアが少なかったことが、大きな要因の一つと言えるだろう。また、これまでキーボードやマウスを含めて、PCの操作方法が難しいと感じていた教員も少なくない。ペンタッチ入力による操作で、だいぶPCに対するアレルギーが緩和されるのではないかと感じている。今後、子どもたちがPCを一人1台持つことでの習得効果が数値として実証されることで、各方面の教育関係者たちからの注目が増してくると共に、その検証結果に基づいて、さらに使い易く効果のあるソフトウェアが開発されることを期待したい。また、決められた単元(授業)の中で、こうしたシステムを活用する時間割配分や年間を通じた指導計画の具体例も必要と言えるだろう。

今回の実証実験では、タブレット機能を標準で備えたWindows Vista搭載の小型ノートPCを使っている

キャプ授業終了後、自分たちでラックにPCを片付ける児童たち。「教員たちが行うよりも、取り扱いが慣れていて手早い」と公開授業を担当した教員

タブレット用のペンというと黒いスタイラスペンを想像しがちだが、カラフルでスタイリッシュなペンを使っている。クリスタルが人気だそうだ

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インデックス

連載目次
第6回 肝心なのは授業力! 現場教師が集うICT活用の実践研究会(2)
第5回 肝心なのは授業力! 現場教師が集うICT活用の実践研究会(1)
第4回 学校"おもて"サイトで情報リテラシーを培う - J-KIDS大賞受賞校に学ぶ
第3回 "学校だけ"の情報モラル授業は非現実的 - NPOとマイクロソフトの協力例
第2回 東大×MS開発、Borderless Canvasが目指す全員参加型「議論するプレゼン」
第1回 デジタルドリルシステムに見る学習効果 - インテル&内田洋行の取り組み

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