5月6日、英国は5年ぶりの総選挙の日となった。与党の労働党ら3大政党にとってインターネットは選挙活動に欠かせないメディアとして重要な役割を担い、FacebookやTwitterはキャンペーンや意見交換の場となり盛り上げに一役買った。今回の総選挙を"初のソーシャルメディア選挙"とする声もある。

選挙期間を挟んで、現首相を務めるGordon Brown氏が率いる労働党、David Cameron氏率いる保守党の2大政党、そしてNick Clegg氏が新風を吹き込んだ第3党の自由民主党はそれぞれ、Webサイトにブログ、Facebook、Twitter、YouTube、Flickrなどのサービスを統合し、有権者にアピールした。

たとえば若者から多くの支持を集めた自由民主党は2009年末にソーシャルネットワークサイト「Act」を立ち上げ、支持者登録、キャンペーン組織化、寄付金募集などの機能を用意した。"Year for Change"をスローガンに政権交代を狙った保守党はBarack Obama米大統領のキャンペーンサイト、MyBarackObama.comを意識した(?)"MyConservatives.com"というWebサイトを立ち上げ、積極的に情報公開やメッセージの発信を行った。保守党は数年前からSEO(検索エンジン最適化)やAdWords購入などのGoogle対策を行っており、2月時点でWebサイトの訪問者数は5倍も増え、約50万人が電子メール情報を登録したと報告している。

それでも、2008年の米大統領選で勝利したObama大統領がインターネットを駆使したときほどの斬新さがないのは、単独で過半数を得た政党がなく、明確な勝利者がなかったからかもしれない。それとも、TwitterやFacebookの利用が決して目新しいものではなくなったという証拠かもしれない。

保守党の公式キャンペーンサイト「MyConservatives.com」

労働党の公式サイト

自由民主党の公式キャンペーンサイト「Act」

今回の選挙でソーシャルメディアは、表のけん引役というより、それを補完/補強する役割となった。英国は今回初めてTV討論会を導入、合計3回の討論会で3党の党首が議論を交わした。メディアとしては、このTV討論会が大きな話題を呼んだ。その一方で一部の国民はTVを視聴しながら、コンピュータに向かい、TwitterやFacebookでリアルタイムに意見やフィードバックを交換した。最終回となる3回目の討論では、毎秒26.77件のTweetがあり、約3万3,000人がTweeterを利用したという。また、Facebookは「Rate the Dabate」というTV討論を評価するレーティングアプリを用意し、ユーザー間の意見交換を促進した。Facebookはこのほかにも、YouTubeと共同で3人の党首への質問を有権者から公募するという試みを展開、3人の党首は多く挙がった質問に対し、きちんと回答した。

なお、3人の党首は実名でTwitterアカウントを持っている。フォロワー数はBrown氏が7,277人(首相官邸のDowning Streetには173万8,000人)、Cameron氏が8,126人、Clegg氏が3万7,906人、と意外と少ない。比較するまでもないが、Obama大統領の390万人とはケタが違う(原稿執筆時。ちなみにわが国の鳩山由紀夫首相は58万8,000人超でした)。

目立ったのは、総選挙という機会を積極的に活用したFacebookだ。Facebookは総選挙に合わせたファンページ「Democracy UK」を立ち上げ、ユーザーが政党や公約を評価できるアプリケーションを提供するなどユーザーの話題づくりを支援、このファンサイトには26万人弱が登録している。

また、選挙直前には"ソーシャルメディア選挙"として、Facebook内で投票を行うというユニークなイベントも催した。46万3,000の投票があり、自由民主党のClegg氏が得票率42%で勝利、2位はCameron氏(保守党)の31%、3位はBrown氏(労働党)の27%という結果だった。Facebookはこの試みについて、ソーシャルメディアと実際がどのぐらい違うのか・近いのかを測定する試みと説明している。参考までに、実際の得票率は保守党が36.1%、労働党が29%、自由民主党が23%(投票率は65.1%)となり、Facebookユーザーと全体の有権者との間には多少の格差があったといえそうだ。

Facebookの「Democracy UK」には26万人弱が登録した

FacebookはYouTubeと共同で、党首への質問を公募した

選挙当日、Twitterでは#ukvoteなどを利用して、選挙に行こうと呼びかけるメッセージや投票所の混み具合などの情報が行き交ったようだ。ここでもFacebookは"今日は総選挙の日"として、投票したことを仲間に知らせる「I voted」ボタンを用意し、ユーザー間のやりとりを盛り上げた。Facebookによると、選挙日の午後8時時点で150万人がFacebookにログオンしてこの投票ボタンを押したという。

今回各党が展開したインターネットキャンペーンやソーシャルメディアが実際の投票(決断)にどのぐらい影響したのか、測定は難しい。英Guardianが紹介しているが、「パブでの立ち話」のほうが「ソーシャルメディア」よりも影響力があるという統計もある。ソーシャルメディアの代表格であるFacebookやTwitterは若者層には浸透しているが、有権者の年齢層は幅広い。同じインターネットでもWebサイト経由での情報収集や電子メールによるニュースレター購読が主という人も多いはずだ。

それでも、情報公開、議論/討論、政治家への直接の意見や質問などソーシャルメディアが政治にもたらす意味合いは無視できないものになっている--今回の総選挙で、疑いのない傾向として政治家とユーザーが感じ取ったはずだ。