ビヨンセが自らを主人公とするドキュメンタリー番組の製作を発表、しかもこの作品の監督まで自らが務めるということで、さっそくメディアやファンの間では大きな話題になっているようだ。

Beyonce Documentary Headed To HBO In 2013; Singer Will Direct New Film - Huffington Post

米国時間26日に正式発表されたこの番組について、放映契約を結んだHBO(米大手ケーブルテレビチャネル)では「ビヨンセの楽曲は誰でも知っているけれど、本人の『人となり』を知る人は少ない。それを伝えるのが番組の主眼」とコメント。内容については「華麗なステージでのパフォーマンスに加えて、生命力にあふれ、傷つきやすく、忘れがたい女性としての素顔も……」といったものになるとか。なお放映日は来年2月13日の予定。

ビヨンセ側では今年夏ころから、この企画の話をいくつかの放送局などに打診していたが、結局HBOが選ばれたのは「HBOには自分の好きな番組がいくつかあるから」(当人のコメント)だそうだ。

今年初めに愛児ブルー・アイビーを出産後、5月末のレベル(Revel、ニュージャージー州アトランティックシティにできた新しいカジノ)でのこけら落としのライブ——これには娘2人にせがまれたと思われるミシェル・オバマ米大統領夫人も来場——、10月初めのジェイ・Zのライブ(バークレイズ・センターの8夜連続公演最終日)への飛び入り出演、さらに国連人権デーに協賛するライブパフォーマンスのビデオ収録、そしてオバマ大統領再選に向けた協力(資金集めのパーティ開催)など、春先以降徐々に「社会復帰」を進めて来ているビヨンセだが、来年はこのドキュメンタリー主演・監督を皮切りに、いよいよ活動を本格化させてくるのかもしれない。

ビヨンセのドキュメンタリーといえば、すでにDVDも出ている「I Am... World Tour」などがあり、このなかでもビヨンセがさまざまな思いを語るシーンが出てくる。自ら監督する新しい番組では、どんな違いを打ち出してくるのか……いずれにしてもファンとしては楽しみなことである。

さて。この26日にはもうひとつ、ビヨンセにとってちょっと大きな出来事があった(たぶん、そうだと思う)。夫であるジェイ・Zと観戦したブルックリン・ネッツの対ニューヨーク・ニックス戦で、ネッツが延長戦の末、初勝利を手にしたのである。TwitterにはBleacherReport関係者が撮影したコートサイドに陣取る二人の写真もさっそく載っていた。

2人がそろってプロバスケットボールの試合に顔を見せることは、いまに始まったことではないのだけれども、バークレイズ・センターといえばジェイ・Zにとっては「第2の我が家」のようなもの。

The House That Hova Built - NYTimes

その本拠地での第一戦、ブルックリン・ネッツにとってのシーズン開幕戦の相手は、イーストリバーを挟んだ向こう側、マンハッタンのマジソン・スクウェア・ガーデン(MSG)を根城とする名門チーム、ニューヨーク・ニックス(世界でいちばんうるさ型のファンが多いとされるプロバスケットボール球団)になることが、NBA事務局側の計らいで、比較的早くから決まっていた。しかし、このクロスタウン・ライバルのマッチアップは例のハリケーン・サンディの影響で地下鉄などがなかなか回復せず、結局中止・後日順延となっていた。

さらに、今シーズンのNBAで選手の平均年齢がもっとも高く、40歳を目前にしたベテランもごろごろいるようなニックスが、だれもが予想していなかった(?)ほどの開幕ダッシュに成功。いっぽう、新たに加入した選手が多く、チームとしての潜在能力は高く評価されながら、まだ「ならし運転」状態とみられたネッツも、先週ロサンゼルスで開催されたレイカーズとの試合では残り3秒まで勝敗の行方が判らぬ展開という奮闘ぶり。また23日夜に行われたLAクリッパーズ戦では、今年(いまのところ)レイカーズに代わって「ロサンゼルスの顔」となっているクリッパーズを泥臭い勝ち方で粉砕するなど、ここに来て調子を上げてきていた。

長年「ドアマット」と呼ばれ続けてきたネッツ。そんな弱小チームが今年みごとに生まれ変わったことを印象づけたこの対ニックス戦の大きな勝利に、ジェイ・Z&ビヨンセ夫妻もさぞや満足といったところだろう。

In Brooklyn, a New York Rivalry Is Born - NYTimes

かたやニューヨーク・ニックスと言えば、日本では選手やヘッドコーチ以上に、長年の熱狂的なファンである映画監督スパイク・リーのほうが有名かも知れない(そのほか、ニックスの試合では、観客席にウディ・アレンの顔などを見かけることもある。また俳優のジャック・ニコルソンが、レイカーズの試合、特に本拠地ステープルズ・センターでの試合では必ずコートサイドに陣取っているのも有名)。そのリー、実は生まれも育ちもブルックリンということで、今年からネッツが地元に本拠地を構えるとなったとき、「ニックスとネッツと、いったいどっちを応援するんだ」ということがちょっと注目を集めていたが、「長年の忠誠心が簡単に消えるわけはない」と、結局今シーズンもニックスを応援しているらしい。

You Can’t Shake the Knicks Out of an Utterly Mad Fan Like Spike Lee - NYTimes

この晩のネッツ - ニックス戦の結果を目にして、リーもさぞ複雑な胸中、といったところかもしれない。さらに、この試合で35得点と大活躍したニックスのエース、カーメロ・アンソニー(オールスター選手、米五輪代表チームのメンバー)もブルックリン出身ということで、このプロバスケットボールをめぐる両チームの因縁の対決は、今後もいろんなドラマを生んでいきそうな気配が濃厚である。