ざっと読んで大意をつかむには時制が重要

暑い夏、予備校に行ったり、参考書を机に広げて英文法を勉強した記憶がある方は少なくないと思います。たしかにあのころは英文法をちゃんと理解していたはずなのに、今はもう憶えていない、という方もいるのではないでしょうか。使わなくなってしまった知識は忘れてしまうものです。英文法だけではありません。私の場合、あれほど使っていたC言語の文法ですら、使わなくなって10年以上経つ今はもう憶えていません。米国に住むようになって、英語の勉強を再び始めて、「あー、そういえばそんな文法があったあった」「そういえば、この表現はこんな意味になるんだった」と、遠い過去の記憶を懐かしく思うことがよくあります。というのも、英語を見聞きしたときにすばやく内容を理解するには英文法の知識が必要になるからです。また、見聞きするばかりではなく、話す/書く場合はさらに英文法が重要です。今回は英文法が理解できているとどのように役に立つのかをお話ししましょう。

まずは、英文法を知っていると英文の内容をすばやく把握するのに役に立つという話からです。米国に住んでいると英文リーディングは日常生活に必須です。とくに子供が学校からもらってくるお手紙は必ず目を通して、何かしなければならないのか、それとも知っておけばいいだけなかを理解しておかないといけません。ところが、学校のお手紙は通常、business letterスタイルで、日本の学校でもらってくるお手紙のように「○○について」のようなタイトルはありません。びっしりと英文が書かれているお手紙を読んで目的は何なのかを理解しないといけません。

そのようなお手紙を読む場合は時制に注意して読むようにしています。概ね

  • 過去形: 学校で起きた何かのお知らせ
  • 現在形: 学校側のポリシーや考え
  • 現在進行形: 学校側が現在対応していること
  • 未来形: これから学校で行われること
  • 命令形: 家庭でやっておくべきこと

のように各paragraphを分類できます。英文はひとつのparagraphにひとつのトピックが基本ですから、とくに未来形と命令形のparagraphを重点的に読めば困った事態にならない -- これがこれまでの経験で得たことです。

時制をもとに英文を分析

学校から出されたお手紙をひとつ見てみましょう(サンプルはこちら)。このお手紙はVirgina Techで惨劇が起きて間もないころ、同一学区内の複数のハイスクール、ミドルスクールでVirgina Techと同様の事件が起きるとの悪戯書きが見つかったときのものです。実際にはbusiness letterらしいletterhead(学校のマーク、写真、学校名、住所などを含むヘッダ)がページの最上部にあり、最後には"Sincerely yours,"としたためたcomplimentary closeに続き、署名、名前、肩書がありますが、ここでは本文だけを見ていきましょう。

このお手紙の場合、日付、salutationに続く最初のparagraphは過去形(a student reported ...)ですから、「学校で何かがあった」お知らせで始まります。お昼ごろ、2階の女子トイレに書かれていたメッセージが見つかった模様です。

2つめのparagraphは現在形(we again believe ...)ですし、主語もweなので、学校側がその出来事についてどう考えているかを表しています。「いたずらであり脅威はないと見ているが、それなりの対応を取るつもりである」ということです。

3つめのparagraphは未来形(we will have all student ...)なので、これから何が行われるのかが書かれています。「スクールバス用の2つの入口以外はすべて閉鎖して、2つの入口では持ち物検査を行う」とあります。続く4つめのparagraphも未来形(the Oakland County Sherif Sheriff's department will conduct ...)で、「本日夜に学校のドアをすべて閉鎖して調査を行う予定である」との説明があります。

5つめのparagraphは現在進行形(We are offering ...)ですから、現在の取り組みについて書かれています。6つめのparagraphは命令形(Please have a conversation ...)で、家庭でやっておくことの指示があります。「事件とその影響について子供と話をしてください」とのことです。最後のparagraphは現在進行形(We are doing ...)なので、学校側がどのような対応をしているかが書かれています。

ネイティブ幻想を捨てよう - 外国人には文法は必須です!

英文を読む場合は、英文法はたしかに必要ですが、話すときはどうでしょうか。英語を母国語としない外国人には、話すときにもやはり英文法の知識は必須です。たしかに日々の暮らしでは"yes" "no" "thank you" "excuse me"が言えて、単語の語尾を上げて疑問文を作ればコミュニケーションはとれます。しかし、現状を説明しないといけない場合や要望を伝えたい場合などには、英文法の知識がないとうまく文章を組み立てられず、言いたいことを伝えられないものです。「習うより慣れろ」という言葉は、母国語の基礎ができてから話し始めた外国語の場合はあてはまらないのではないかと思います。触れる機会が少ない外国語ですから、「慣れる」よりも言葉の仕組みを知って論理的に組み立てるほうがいいのではないでしょうか。

では、母国語の基礎ができてしまう前に英語を始めたら英文法の勉強は必要ないのでしょうか? 母国語が確立する前の幼児期に日本から米国にやってきて、現在中学生、高校生になった子供たちは、残念ながら「バイリンガル」と呼ぶには日本語の能力が劣っているのが現状のようです。家でも日本語を話したがらなかったり、親とは日本語で話すものの、兄弟姉妹とは英語、という場合も多いそうです。英文法はネイティブ並みに勉強する程度でいいかもしれませんが、逆に日本語をきちんと勉強しないと日本語を話せる大人になれない問題すらかかえています。結局、母国語は1つしかないのでしょう。母国語を軸にして論理的に考え、母国語以外の言語を使えるようにしていくのが一番いいのではないでしょうか。

英語ができるようになりたいという願望をお持ちの方は多いかもしれませんが、通訳並みにうまくなりたいのではなく、仕事で使える程度にうまくなりたいのではないかと思います。ですから、流暢さを追いかけず、「外国人の英語」でかまわないので、英文法から始めて論理的に解釈してみてはいかがでしょうか。新しいプログラミング言語をマスターするように、ルールを理解して、文を組み立てたり、読解するのもいいかもしれません。英英辞典をAPIドキュメントだと思って眺めてみるのもいいかもしれませんね。

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