毎年変わる「お月見」の日。中秋の名月ですな。その日付は「旧暦の8月15日」と決まっています。が、今のカレンダーだと毎年変わって、2024年は9月17日です。その決定のベースになっているのは天文学ですが、だれもちゃんと決めていないのでございます。ということで、暦のうえではセプテンバー(ここでもってくるか?)なので、お月見の話でございますよ。

  • お月見

    満月を眺めて楽しむ「お月見」

お月見とは何か

9月。長月。September。東京~九州にかけてはまだまだ暑いですが、なんとなく秋を感じさせます。で、秋にあるのが、お月見でございます。お月見は、平安貴族もたしなんでいたらしいですが、まあ、収穫祭ということもあって、かつては日本の津々浦々で親しまれた行事でございました。ハロウィンばりにキャンディじゃなく月見団子おくれよー(盗む)みたいな行事もあったようです。

さて、このお月見ですが、毎年、日が変わります。お月見なので、もちろん月が見えなくちゃいけない。そして、まん丸じゃないとダメですね。ということで、ほぼ満月の日に行うわけですが、満月がいつになるかは、年によって変わるからなんです。国立天文台の暦wikiに書いてありますが、ここ数年のものを抜粋しますと。こうなります。

お月見の日一覧

  • 2012年: 9月30日
  • 2013年:9月19日
  • 2014年:9月8日
  • 2015年:9月27日
  • 2016年:9月15日
  • 2017年:10月4日
  • 2018年:9月24日
  • 2019年:9月13日
  • 2020年:10月1日
  • 2021年:9月21日
  • 2022年:9月10日
  • 2023年:9月29日
  • 2024年:9月17日

2024年は、9月17日でそれっぽい日付なのですが、2017年と2020年は10月でした。お月見は9月だけではないようです。

日付が変わるのは、お月見はだいたい満月じゃないとダメだからと言ったわけですが、10月にする必要あるのか? とも言いたくなります。答えは「<旧暦の8月15日>にあわせていて、今のカレンダーで決まっていないから」なんですが、じゃあ、旧暦と今のカレンダー(新暦)の関係って何なん? と言いたくなるわけでございます。結論からいうと、無関係です。

旧暦にはしっかりとした定義が無い

江戸時代(正確には明治5年)まで使われていた暦ということなので、江戸幕府なり京都朝廷なりが決めていたのですが、今は江戸幕府も朝廷もないので、「2016年の旧暦」というのは、本当は存在しないんだそーです。

じゃあ、ちまたで売っているカレンダーに書かれている旧暦は何か? というと、江戸時代の最後のころに使っていた天保暦という暦のルールに従って、現在の数値で計算したものなんですね。おおざっぱにいうと、次のようになります。

天保暦のルール

  • 新月をふくむ日を、月の最初の日(1日、朔日(ついたち))とする。次の新月でリセットし、新しい月が始まる
  • 冬至を含む月は11月、春分を含む月は2月、夏至を含む月は5月、秋分を含む月は8月とする

つまり、旧暦の8月15日は、秋分を含む月(8月)の、新月から15日目ということで決まっているのですな。

新月~新月の間隔は、だいたい29日半くらいです。そのため、旧暦の1カ月は29日または30日になります。秋分の前後±15日くらいが、旧暦の8月15日になる可能性があるということですな。2014年のお月見日(9月8日)は、そういう意味では、最も早い(9月23日-15日=9月8日)ぶるいのお月見でしたし、2017年(10月4日)はかなり遅いほうのお月見ということになるわけです。

秋分と旧暦の影響

なお、ここでキーとなる秋分は、太陽が赤道の真上を通過する日(年に2回あって、もう1回は春分)。ですけれども、だいたい今のカレンダーで9月23日前後です。1日程度ずれる日があります。大きくずれないのは、うるう年を使って調整しているからでございます。

ところで、この秋分ですが、もちろん今のカレンダーにも秋分はあります。ところが、この計算方法が、江戸時代の天保暦とは、本来ビミョーにちがいます。自然現象なのにと言いたくなるんですが、暦=カレンダーは、自然現象からルールを抽出した人工的なものなのでございます。そのために、観測データや理論の違いで、ビミョーに変わるのです。

2033年には、この「今のカレンダーと旧暦の秋分やルールの考え方の差」があらわれ、いつを9月にするのかで「意見が分かれる」という事態になることがわかっています。内容はややこしいので、国立天文台のWebをごらんいただくとして。人間が考えたルールどおりに自然はうごいちゃあくれない。ということが、お月見からもほの見えてくるわけでございますな。

お月見についてまとめ

ちなみに、お月見は収穫祭なので、めでたい、どんちゃん騒ぎ、でいいのですが、これ、ボーナス出たから焼き肉だ! と本質的には変わりません。でも、9月や10月にはボーナスふつう出ませんからね。ささやかに月見団子で空を見るのがよいとなりましょうか。

ちなみに、お月見のときは、だいたい午後6時に月の出があって、沈むのは午前6時(日本列島は長いので、地方によって1時間弱の差がある)。つまり、一晩中お月さまは見られます。8時ごろだと、東南東~南東に月は見えます。西向きの部屋にすんでいるかたは、東の方なのでちょっと外にでて確認してくださいませ。

著者プロフィール

東明六郎(しののめろくろう)
科学系キュレーター。
あっちの話題と、こっちの情報をくっつけて、おもしろくする業界の人。天文、宇宙系を主なフィールドとする。天文ニュースがあると、突然忙しくなり、生き生きする。年齢不詳で、アイドルのコンサートにも行くミーハーだが、まさかのあんな科学者とも知り合い。安く買える新書を愛し、一度本や資料を読むと、どこに何が書いてあったか覚えるのが特技。だが、細かい内容はその場で忘れる。