流れ星が見やすい夜が年に2回あります。流れる数が大盛り特盛りになるのですな。一回は冬の12月14日、そしてもう一回が夏です。8月12日の「ペルセウス座流星群」がそうでございます。で、この流星群の背後には、黒い彗星がうごめいていることがわかってきました。今回は、ペルセウス座流星群の見方をメインに、その黒幕の存在もご紹介いたします!

流れ星はいいですねー。星の現象のなかでも、本物をみて感動できるというと、月のクレーター、土星の環、皆既日食にくわえて、流れ星でございますな。いろいろな人に見てもらっての実感でございます。

そして、流れ星観察は、ヒジョーにお手軽でございます。大事なことなので2度言います。流れ星観察は、ヒジョーにお手軽なのです。まず、都会でも家か近所で見られる。そして、道具はいらない。これまでの「どこでもサイエンス」でも大プッシュしてきたゆえんでございますな。

観察方法を、チョー簡単にいいますと。

1. 晴れている夜に、外に出る
2. 空を見上げて、流れ星が見えるのを待つ

以上です。ね、お手軽でしょ。ただ、お手軽というものの若干のコツがあります。最大のコツは「待ち時間が1/10ですむ、ファストパス状態の年2回だけのチャンスをねらう」ことです。その貴重な2回のうち一度が、今年2016年は8月12日の夜のペルセウス座流星群の活動日なのでございますな。そうでないと2時間待って1個の日とかもあります。

あ、このファストパス日、年によってベスト日が1日くらい前後しますので、ちょっとだけ注意が必要です。もっとも1日ずれても、待ち時間が1/5とか1/3とかややファストパスになる、くらいでチャンスではあります。なお、この連載の2回目ではペルセウス座流星群の流れ星についていろいろ書いてあります。そことかぶりますが、まあ大事なことなので、さらにコツを再掲しま……あ、ちょっと修正が必要なので修正して書きます。

1. 安全を確保、落ち着いて見られる場所で見る。虫対策も重要
2. 夜8時でも見られるが、10時以降がよい
3. ねっころがって、頭の上を見るとよい

それぞれ、ちょっと解説しますね~。

1. 安全を確保、落ち着いて見られる場所で見る。虫対策も重要

流れ星を見るときは、なにかと不用心になります。自宅の庭やベランダなど、確実に安全といえる場所で見るのがベストです。駐車場などはいきなり車が動くことがあり、危険ですよ! 犯罪にも注意してくださいませ。まあ、夜中でじーっと外にいるときの危険をよくよく考えて、危ないと思うことはしないことでございます。

また、虫対策をしないと、えらい目にあいます。経験上、蚊取り線香が効きますが、のどが弱い人もいるでしょうね。ベランダ用虫除けスプレーにもよいのがあります。「ヤブ蚊(ヒトスジシマカ)」に有効なやつにしてください。ユスリカだけしかダメなやつはこの目的には使えません。まあ、身体に吹き付けるスプレーやミストは「使えます」よ!

2. 夜8時でも見られるが、10時以降がよい

流れ星の待ち時間が一番短くなると、1分にひとつ以上の流れ星となります。が、まあ10分はがんばってください。ちなみに、流れ星が一番短くくるのが、ピークですが、IMO(国際流星機構)予報(英語PDF)だと、今年は12日の夜10時と13日なってすぐの深夜0時30分となっております。時間帯が早いと、数は少ないものの、非常に長い流れ星が見られることがあって、これはもうスゲーいいんです。数を稼ぐならピークの時間がいいです。

3. ねっころがって、頭の上を見るとよい

ペルセウス座流星群は、カシオペヤ座の隣にあるペルセウス座を中心に、空のあらゆるところに流れ星が流れますので、空をできるだけ広く見渡すのがよく、ねっころがって、頭の上を見るのがよいです。

ねるときに、下に段ボールをしくのがコスパがよく、結構いい方法です。ちょっとかっこわるいと思う方は、厚手のキャンプ用のマットを用意してください。通販サイトだと3000円~6000円ですね。普段のごろ寝にも使えますが、ちと高いかな。

面倒くさい、金ならあるという方は、ツアーなどもあります。国内の山の上のロッジなどで観察するというもので、いまから間に合うかわかりませんが、まあ数万円くらいではございます。

そのほか、各地の市民天文台などで行われる天体観察会の情報はアストロアーツのサイトをご覧くださいませ。また、この連載の第2回には、写真の撮影方法も簡単に書いてありますので、ご参照くださいませ。まあ、でも、お金も時間もかけずに、お手軽に見るのが最高でございます!

ところで、流れ星の待ち時間に、どうしてこうも変化があるんでしょう。10倍も変わるというのはどういうこと-? と言いたくもなりますね。

これを「そうだったのか」とわかるためにはひとつだけ、知識が必要です。それは「流れ星は、太陽をまわる砂つぶが、地球と衝突して光る現象」だということです。砂つぶが太陽をまわるというは、不思議な気がしますが、石と鉄のかたまりといってよい地球だって太陽をまわっているのだから、まあ、それは認めてください。

で、その砂つぶですが、これまた太陽をめぐる、氷に砂つぶをまぜて押し固めたような彗星からはき出されたものなんですね。砂つぶは、彗星が太陽に近づくと、氷がとけて、バラバラとはきだされます。それはしだいに散らばっていって、地球と衝突すると流れ星になります。ちなみに、砂つぶでも衝突速度は秒速で10~70kmにもなります。ペルセウス座流星群は秒速50km、時速だと18万km、マッハ150、新幹線の1000倍、ピストルの弾の100倍です。それはスゴイ破壊力でございます。砂つぶが地球の空気に負けて蒸発してしまい、そのエネルギーで光るんですけどね。

ところで、流れ星のもとになる砂つぶをはき出す彗星。これは、NASAのサイト「APOD(Astronomy Picture of the Day:今日の宇宙の一枚)」で、Comet(彗星)と検索するとゾロゾロ写真がでてきます。最近のもので見栄えがよさそうなのは、こちらですね。

しっぽを引いて、ホウキ(箒・彗)みたいに見えることからほうき星とか彗星といいますな。ただ、これは彗星本体から、砂つぶやガスが彗星をとりまいている様子で、彗星の本体は見えていないのです。

で、写真に撮影すると、彗星全体は青っぽかったり(はき出されたガスが太陽の光で発光している色)黄色かったり(はき出された砂つぶが太陽の光を反射している色)だったりします。

しかし、その本体はというと、まさに黒幕! 黒いのでございます。氷でできているというと白っぽいイメージがあり、実際、氷でできている土星の環は白いのですが、彗星の場合はおそらく、身体のなかからとけでた砂つぶが表面につもっていて、黒くなっているんですね。これは、最近彗星を探査した、ロゼッタ探査機の写真でもうかがうことができます。

ただ、一個だけ写真をみても、いまいちわかりにくいのですな。そこを米国の惑星協会が、彗星と小惑星との比較写真で出してくれています。色あいもあわせているので、その黒さっぷりをごらんいただければと思います。

彗星と小惑星との比較写真 (出典:Planetary Society)

写真の右下のほうに6個、一列にならんでいるのが彗星で、ほかは小惑星(岩でできている天体)です。小惑星にも、黒いのがありますが、彗星はぜーんぶ黒いのがわかります。

また、彗星は小さいのばかり多いですが、これは、彗星への接近探査が太陽に近づく小さな彗星でしか成功していないためで、本当に全部が全部(彗星はほかにもたーくさんあります)小さいかどうかはわかりません。今後の研究が待たれます。小惑星の黒いやつ(253 Muthilde)もなんでこんなに黒いんか、興味がつきませんね。はい。

著者プロフィール

東明六郎(しののめろくろう)
科学系キュレーター。
あっちの話題と、こっちの情報をくっつけて、おもしろくする業界の人。天文、宇宙系を主なフィールドとする。天文ニュースがあると、突然忙しくなり、生き生きする。年齢不詳で、アイドルのコンサートにも行くミーハーだが、まさかのあんな科学者とも知り合い。安く買える新書を愛し、一度本や資料を読むと、どこに何が書いてあったか覚えるのが特技。だが、細かい内容はその場で忘れる。