春は、北斗七星がよく見える季節です。この時期は、ほぼ頭の真上に見えますので、まわりにビルがたてこんだ都会でも観察できるのですな。ということで、頭上の「ひしゃく」を見つけてみましょう。

北斗七星といえば、オリオン座とならんで、認知度の高い星座でございますな。いまはなき(泣き……)寝台特急「北斗星」の名前の由来もこちらでございました。ヘッドマークとテールマークの北斗七星&北極星の図柄はいいものでしたなー。

ま、さておき北斗七星なのです。北斗七星といえば、ひしゃくの形ですね。英語ではgreat dipper(大きなおさじ)といいますな。北斗七星は、なんといっても、春が一番見やすいのでございます。夜9時ごろ、<北の方を正面にして>頭の真上を見ればいいのです。そこに3つ、星がならんでいれば、それが北斗七星の持ち手(柄)なのです。

北の方を正面にして頭の真上を見ると、北斗七星の持ち手(柄)が見える

今年2016年に関しては、チートな見つけ方があります。とても明るく見えている木星が目印です。頭の上の方で、ダントツに明るいので迷いません。<今度は、南の方を正面にして>木星と近くにあるちょっと明るめの星レグルスを目安にすると、図のような感じで、3つの星が見つかるんですな。先ほどの図とは、南北がひっくりかえってます。南を前にしたほうが、木星が見つけやすいからでございます。

木星を目印にして北斗七星を見つける

ところで、え、3つ? 7つなのでは? はい、そうですね。北斗七星っていうからには七つですし、持ち手だけで「なんか入れるとこ」がなければ、斗(ひしゃく、ます)になりませんな。で、図にも描いたのですが、実は、北斗七星の真ん中の星が、暗いんですね。どれくらい暗いかというと。ほかの星とは3~4倍ちがうんですな。グラフ化(笑)すると、北斗七星の3つの星の側からで、こんな感じでございます。★が多いほど明るいわけですな。

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★★★★★      3つの星
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★      ← これが暗い星
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★★★★★★★★ ひしゃくの先っぽの星

東京や大阪などの大都会では★4つくらいから見えると思ってください。ちょっと無理なわけです。それぞれから30kmほど離れた郊外でも、★2つくらいからでして、すごく空が澄み切ったときじゃないと、なかなか見えないのです。で、春って、空がかすんでいるのですよね-。まあ、なかなか見られないってのが本当です。

ちなみに、暗い星の名前は、メグレズMegrezといいます。アラビア語で「(しっぽの)根元」という意味なんですが、覚え方は、目がぐれて見えにくいというのをおじいちゃんな先生に聞いたことがございます。

かつて、小学校の宿題の定番だった「北斗七星の観察をしなさい」ですが、宿題を出す方はちゃんと確認しないと、子供たちが「せんせー、わかりませーん」となるか、嘘をつかせるということになっちゃうんですね。なかなか自然は思いどおりにならないものですな。

ところで、そんな小学校ネタだと、北斗七星は、いつでも北の空に見えるんじゃ? という方もいらっしゃると思いますが、それがちょっとなんですな。図は夜9時の北斗七星の位置(東京)を示したものですが、見てのとおりビミョーに違うのですね。結構東に見えたり西に見えたり、頭の真上に見えたりする。そんで、見えにくい時期(秋)もあるのです。同じ夜9時でくらべると、図のような感じになります。

北斗七星の季節ごとの見え方

ともあれ、北斗七星はこうだろーと思いながらさがすと、いろいろつまづきがちです。でも、それをチョット気をつければ、北斗七星は雄大な姿の片鱗をみせてくれます。なんせ、泰斗(泰山北斗)というのは、見上げるほど大きな存在って意味なんですから。名前だけ知っているというのを、ぜひ実際の空でも見つけてもらいたいですー。

ところで、北斗七星に対して、南半球でのシンボルといえば、南十字星です。見やすい時期は実は、北斗七星と同じでいまごろなんですな。日本では沖縄の南の方で見えます。南十字星の親しまれかたは、オーストラリアやニュージーランドなどの国旗になっていることでもわかります。では、北斗七星を国旗にしているのはないのかいな? と思ったのですが、これがありません。近いのが、アメリカのアラスカ州の旗ですね。なかなかカッコイイですな。

日本ではどうなんか? と思ってググってみると、札幌市や青森市などの市章が北斗七星だとあるじゃありませんか! ところが、そこには、ひしゃく型がないのでございます。星一個で北斗七星だというのです。そうなんかー!

著者プロフィール

東明六郎(しののめろくろう)
科学系キュレーター。
あっちの話題と、こっちの情報をくっつけて、おもしろくする業界の人。天文、宇宙系を主なフィールドとする。天文ニュースがあると、突然忙しくなり、生き生きする。年齢不詳で、アイドルのコンサートにも行くミーハーだが、まさかのあんな科学者とも知り合い。安く買える新書を愛し、一度本や資料を読むと、どこに何が書いてあったか覚えるのが特技。だが、細かい内容はその場で忘れる。