恐竜、古生物、萌えますなあ。その萌えの元には、ネーミングもありますな。ジュラ紀とエディアカラとか、幼少時に無駄に覚えて、ほぼ役に立っていないわけでございますが、いったいどうやってそんな萌えワードがでてくるのか。なに、そのローカルな名付けかたはっ!! てな話でございます。

ワタクシゴトデスガ、幼少期は恐竜にハマッテおりました。ティラノサウルスとアロサウルスはドッチが強いのかとか、ユーステノプテロンとか、イクチオステガとか、エディアカラ化石群とか、ジュラ紀とか、もう、図鑑もしくは「恐竜のひみつ」をみながら知識取得に血道をあげたものでございます(ここまで資料なしで書いております、恐るべし三つ子の魂)。

そんなでございますから、あのブロントサウルスが「えー、まちがいでした、別の恐竜の化石をまちがってかってに種類つくっちゃいました。てへ。」と「20世紀のはじめに言われてた」としり愕然とし、その後「やっぱりありじゃね」なんていわれて(参照:WIREDの記事)、萌え心が再燃なんてのもございます。別にブロントサウルスじゃなくて、アパトサウルスでも恐竜がいなくなるわけじゃあないのですが、雷竜と訳されるのが、やはりよかったんだよー、ブロントサウルス。

ということで、名前が重要なのでございますね。名前。特に地球の歴史年代の名前の不規則さ加減に、しびれたのでございます。えー、ここはちょっと学説なども変わっているので、調べまして、地球の歴史の古い順から並べると。まず…先カンブリア時代でございますね。地球の誕生(46億年前)からカンブリア紀のはじめ(5.42億年前)までが先カンブリアでございますね。プレ・カンブリアと英語まんま表記をします。博物館の人は「プレカン」なぞとおっしゃっていましたねー。しかし40億年かよ、なげーぜ。

で、そのあとは、現在までをまとめて5.41億年間を顕生代というのでございます。ざっくりしてますなー。中生代とか古生代とかは、顕生代の中をさらにわけ、中生代の中にジュラ紀とか白亜紀とかがあるんですな。

顕生代の最初がカンブリア紀で、5億年前後ですな。この時期にいまいる生き物の子孫が大量に出現した「カンブリア爆発」が起こったのでございます。それ以前、つまり先カンブリア時代の生き物は、まったく違うもので、ガラリと入れ替わったのですな。なので、ここで先カンブリア時代と顕生代を分けるのでございます…ま、このくらいでいいかな。マジメな地球科学談義は最小限にして、あとは名前の話だけでございますよー。

ここまででてきた、カンブリアですが、何か、こう生物とか、地球歴史的な意味がある風ですよねー。ですけれども、この名前は、実にしょーもない(誉め言葉です)理由でつけられたのです。19世紀に活躍したセジウィックというイギリスの科学者が、イギリスの一地域であるウェールズのラテン語名「カンブリア」からこの名前を付けたのです。この辺でカンブリア紀の岩石がでてきて研究されたから、カンブリア紀なんですな。なんというか、たまたま茨城県での研究が先なら「イバラ紀」(茨城の読みは、イバラ「ギ」です)になっていたかもしれないし「ヒタチ紀」とか「ミト紀」「サタケ紀」とかなっていたかもしれないわけですな。

実際、カンブリア時代の茨城県(あるんですよ)ほか、世界中で見つかっていまして、中国の雲南省とか、カナダのブリティッシュコロンビア州とか、オーストラリアとかグリーンランドとか、まあいろいろなのでございます。

まあ、先カンブリア時代の最後に、いろいろな生物が発生していたエディアカラ生物群は、オーストラリアのアドレードの近所のエディアカラ丘陵から、カンブリア爆発を示す生物化石がでるバージェス頁岩は、カナダのバージェス山からですが、両方とも小さな地名なんでございますよー。

以下、さくさく見て参りましょう。

  • オルドビス紀:イギリスのウェールズ地方にすんでいた、オルドヴィケス族から
  • シルル紀:イギリスのウェールズ地方にすんでいた、シルリア族から

これ、アイヌ紀とか、隼人紀とか、ヤマト紀とかなっても不思議じゃないネーミングですな。

  • デボン紀:イギリス南部のデボンシャー地方で岩石が発見されたから
  • 石炭紀:この時代の地層から石炭がよくとれるから。北米ではミシシッピ紀とペンシルベニア紀と書くことがあるそうでございます。
  • ペルム紀:ロシアの(お、イギリスじゃなくなった)、ペルミという都市にちなむ。ウラル山脈の脇、つまりだいぶシベリアよりにある古い都市だそうです。もっといえばペルミは都市にゆかりのある聖職者の名前だそうでございます。

ちなみにかつては、二畳紀とよばれていました。これは、ドイツのこの時代の地層が赤色砂岩層と石灰岩層の二層になっているからで、広さが二畳だからじゃあありません。畳というのは、重畳する。つみかさなるっていう意味ですね。

ちなみに、ペルム紀までが古生代で、この最後に大量の生物(95%)が絶滅したことがわかっています。どうも、地球が異常に暑く、火災が頻繁に発生していたらしいのでございます。火山活動が活発になり、二酸化炭素が増えて…というのが理由だとか。また、酸素の濃度の低くなったのだとか。それはそれでワクテカですが、またの機会に。

さて、こっからは中生代です。2億5200万年前が分かれ目。恐竜の時代ですなー。

  • 三畳紀:これまた、ドイツの地層が三層にざっくりわけられるからです。赤色砂岩層、石灰岩層、茶色砂岩層の三層ですな。しかし、イギリス人はシレっと自分たちの地名やら民族名をつけるのに、ドイツ人は、性質で分類。なんか、わかるような気がします。ちなみに、英語ではトライアシックといいます。古生代との分かれ目は、ペルム・トライアシック境界 P-T境界といったりしますな。
  • ジュラ紀:おまたせしました。ジュラ紀です。イギリスでもドイツでもなく、フランスのジュラ山脈からきております。なにかとイギリスと張り合うフランスの面目躍如。しかも、地質年代で一番有名なところをとっちゃうという、すてきな感じでございますな。映画ジュラシックパークはもちろん、このジュラ紀(ジュラシック)からとっているのでございますが。登場するティラノサウルスとかハドロサウルスとか、ヴェロキラプトルとか白亜紀のじゃん! ブラキオサウルスはジュラ紀ですが。
  • 白亜紀:この時代を代表する石灰岩の地層からつけられた名前でございます。Cretaceousなんですが、Cではじまる年代が多いものですから、ドイツ語のKをつかって、白亜紀と次の第三紀との境目をK-T境界といいます。恐竜の絶滅でございますな。絶滅の原因は、隕石(メキシコのチクシュルブクレーターを作った)の衝突による気候の激変ということでほぼカタがついているそうでございます

まあ、恐竜は鳥として生き残っているというのが定説になっているので、全部が滅んだわけではないのですが。

  • 古第三紀:新第三紀、第四紀 新生代の地質年代名ですが、なんとも萌えないんですよねー。

だいたい、第三紀ってのは、いまでは使われてなくて、日本語訳がさだまっていないので、暫定的にこうなっているのだそうです。ちなみに第一紀と第二紀がない理由は、日本地質学会がズバリ回答していますので、そちらをごらんくだされ。それと、正式な年代の呼び方も日本地質学会が発表している、こちらの表をごらんくださいませね

ではではー。

恐竜時代のイメージ図 (出典:福井県立恐竜博物館Webサイト)

著者プロフィール

東明六郎(しののめろくろう)
科学系キュレーター。
あっちの話題と、こっちの情報をくっつけて、おもしろくする業界の人。天文、宇宙系を主なフィールドとする。天文ニュースがあると、突然忙しくなり、生き生きする。年齢不詳で、アイドルのコンサートにも行くミーハーだが、まさかのあんな科学者とも知り合い。安く買える新書を愛し、一度本や資料を読むと、どこに何が書いてあったか覚えるのが特技。だが、細かい内容はその場で忘れる。