「アストロ・ブラスター」は、ちょっぴりキケンな科学オモチャです。その威力はみかけからは予想ができません。アストロ・ブラスターをはじめて使うと、必ず他人に見せたくなります。2000円~3000円で入手できますが、100円くらいの材料で十分に作れます。

おもわせぶりなフリですみません。そうまでして知ってもらいたい、アストロ・ブラスターのお話です。

本題に入る前にちょっとだけ。前回お知らせした「きりん座流星群」ですが、ちゃんと出現したようです。米国では1時間に20~30個が見えて、日の入りが遅い日本では…うーん、残りがちょっとあったような…くらいでした。空の明るさに関係ない電波の反射による観測では、日本からもとらえられています。何百個はなかったですが、流星群予報がかなり精度よくなってきた証拠ですね。いや、たいしたものだ。

んじゃ、本題です。

アストロ・ブラスターは、2~3個のボールを組み合わせた科学オモチャです。英語で書くと AstroBlasterですね…とここですぐに検索かける人、嫌いじゃないですよーー!

さて、材料のボールは、ちょっと堅めのよく弾むものがいいです。大きさはなんでもいいんですが、バスケットボールやサッカーボール、フィットネス用のバランスボールでもOK、ちょっとやるならいわゆるスーパーボールもおすすめですね。大きさは変えます。2つなら、大、小。3つ使うのなら、大・中・小としてください。極端に大きさの差があってもOKです。

製品だと、こんな感じです

米国では11ドルあまりで売ってますな。

欧州では17ユーロといったところ。

日本では教材屋さんで売ってますね。

なにしろ、威力がありますから、安全メガネもセットになっております。はい。

まあ、これをマネすればいいのです。製品では真ん中に棒を通しています。3つ以上のボールを使う場合は、やはりいりますが、2つなら、必要ありません。そうなると、オモチャというより、ちょいとした実験ということになりますね。YOUTUBEで検索してみると、これまた大勢が、アストロ・ブラスター実験をやっておりますな。Astro Blaster のほか Gallilean Canon(ガリレオ砲)、すっ飛びボールでもでてきますよー。

わかりやすいは以下の動画ですかね

AstroBlaster

お次はバランスボールで

Galilean Cannon. Lindsey Swick

そして次はスーパーボールでやってます

すっとびボール

この実験というか、オモチャというか…映像で見たら、文章にしてもねぇ。ですが、一応、書いておきますねー。

まず、大小2つのボールを用意し、タテに積み重ねます、小さい方が上ね。

で、その2つのボールを持ち上げて、地面に落とします。

すると、大きいボールが小さいボールを、持ち上げたよりずっと上まではねとばします

というものですねー。ガリレオ砲っていうのは、たぶん、ガリレオが2つの球をピサの斜塔から同時に落とした故事からの連想でしょうね。ガリレオの時代にこの実験をやっていたとは思えないですからねー。はずむボールの材料がなかったでしょうし。

では、このアストロ・ブラスター、いつからはじまった実験なんでしょうかー。

アメリカなんかのアストロ・ブラスターの説明には「超新星爆発の原理を応用」なんて書いています。超新星爆発ってのは、太陽の8倍以上重い星が、一生の最後に大爆発して粉々になってしまうできごとですな。激烈な光がでるので、遠方にあり一見暗い星がこれをすると、新しい星が現れたと思われるので、超新星なんて名前がついております。

で、超新星爆発は、本当は爆発じゃないのです。星がふっとぶのに、内部がエネルギー暴走するのではなく、エネルギーを出さなくなるから、起こるのですね。エネルギーを出さなくなったために、モーレツな勢いで星が縮み(爆縮なんていいます)、その縮むのを、星の中心にエネルギーを出した燃えかすとしてたまった鉄のかたまりに跳ね返されるのです。で、結果として、星全体がふっとぶ、ってなわけです。

跳ね返って、ぴょーんととんでいくアストロ・ブラスターに、確かに似ている感じではあります。

また、エネルギーを中心に向けて集中させるのが必要なものとしては、ブッソウですが、核爆弾があります。核爆弾を爆発させるのは実は非常に難しいのですよ。猛烈に圧縮しないといけない。そのために、パワーが集中するように、核爆弾の点火用のエネルギー源、実は爆薬ですが、を巧みに並べる必要があるのですな。

で、アストロ・ブラスターは核爆弾と超新星爆発、両方の専門家が発明した。ということになっておるのです。Dr. Stirling Colgate、物理学者のスターリング・コルゲート博士がその人で、アメリカで水素爆弾の開発に従事し、その後、超新星の研究に転じた人です。えー、2013年までご存命だったようですね。この方が、アストロ・ブラスターの開発者である。と、アストロ・ブラスターの商品説明にはあります。

ただ、この弾むボールをタテに並べただけってものですから、果たしてどうかしらんですね。これについては、東京理科大学の塚本先生が研究しています。興味がある方は元を読んでみてください。わりと読みやすいです。で、これをかいつまむと、日本では1989年ごろから教材として使われるようになっていますが、米国では1968年ごろから、いろんな人が発見していたと。中には、学級の一同が発見者としている論文もあるそうです。子どもたちのいたずらから発見したと、その背景にはスーパーボールがそのころ発明されたからというのが、上の東京理科大学の人の推察ですな。

そんで、もっと前の350年前にはオランダのホイヘンスさんが、原理について研究していたってな話でございます。ガリレオさんは400年前ですから、スーパーボールはなくても原理にはたどりついていたのね。ってなことですな。

ともあれ、この実験、本当に100均にいって、スーパーボールを適当に買うだけで楽しめてしまいます。威力もあるので、けががないように十分に気をつけて、ぜひ一度、おためしください。

そんで、商品のアストロ・ブラスターですが、さすがに、メチャ良く飛びますよー。ちょっと危ないためか、なかなかオモチャ屋でもみかけませんが、上の教材屋さんから入手できます。よかったらぜひ。

著者プロフィール

東明六郎(しののめろくろう)
科学系キュレーター。
あっちの話題と、こっちの情報をくっつけて、おもしろくする業界の人。天文、宇宙系を主なフィールドとする。天文ニュースがあると、突然忙しくなり、生き生きする。年齢不詳で、アイドルのコンサートにも行くミーハーだが、まさかのあんな科学者とも知り合い。安く買える新書を愛し、一度本や資料を読むと、どこに何が書いてあったか覚えるのが特技。だが、細かい内容はその場で忘れる。