流れ星が流れるのは1時間夜空をみて3~5個くらい。1個あたり1秒間も見えません。それが、一気に10倍!!の30とか50個見られる日があります。毎年8月13日ごろ見られるペルセウス座流星群です。

その道の人に聞きますと、今年は、観察条件がよいのだそうです。観察のポイントから、ちょっとしたウンチクまでご紹介いたします。

流れ星を見たことありますか? 見えると気持ちが上がりますよね~。ちょっと落ち込んだ時に都合よく見えたらいいのですが、なかなか流れ星ってねらって見られません。でも意外なことに流れ星は、毎日、流れているのです。ただ、その数は1時間あたり3~5個。1個が見えるのは1秒間未満。1時間(3600秒間)のうち、流れ星が流れているのは1000分の1の3秒間程度というわけですから、見られないのも無理もありません。

ところが、毎年8月13日前後に異変が起こります。流れ星の数が10倍になるのです。10倍ですよ!10倍!!。1時間に30~50個。流れ星のバーゲンセールです。5分間も空を見続ければ、確実に流れ星が見られる勘定になります。これが、ペルセウス座流星群です。流れ星が流れだす方向を、逆にたどると、ペルセウス座になるので、この名前がついています。

では、ペルセウス座流星群の観察の仕方をご紹介しましょー。まず、見るのはカンタンです。8月13日前後の晴れた夜に、のんびりと20分間、空を見あげればいいのです。それで、数個の流れ星は見られるはずです。ただ、ちょっと工夫をすると、見える流れ星の数が増えてきます。ポイントは以下の3つです。

  1. 安全を確保、落ち着いて見られる場所で見る。虫対策も重要
  2. できれば夜中すぎがよい。また12~13日にかけての夜がベスト
  3. ねっころがって、頭の上を見るとよい

それぞれ、ちょっと解説しますね~。

###1:安全を確保、落ち着いて見られる場所で見る。虫対策も重要 流れ星を見るときは、なにかと不用心になります。自宅の庭やベランダなど、確実に安全といえる場所で見るのがベストです。

また、虫対策をしないと、えらい目にあいます。経験上、蚊取り線香が効きます。またあまりにも良いので商品名を書いてしまいますが、キンチョ―の虫コナーズテラス・ベランダ用がオススメなのですが、なかなか入手できません。それから、野生の動物などが出るところでは十分な警戒が必要です。

全国に200ほどある天文台のいくつかは、流れ星観察イベントを行いますので、近くにあればそれを利用するのも手でしょう。アストロアーツのPAONAVIで8月12日を検索するといくつかでてきます。

2:できれば夜中すぎがよい。また12~13日にかけての夜がベスト

ペルセウス座流星群は、ほぼ一晩中見られます。ただ、ペルセウス座から飛び出すので、ペルセウス座が高く昇ってくると、流れ星の数も多くなります。それが、夜中すぎです。ベストなのは12日夜の11時~13日の夜明け前の3時すぎです。特に夜明け前にみられれば、IMO(国際流星機構)のピーク予想ともあたるので一番でしょう。興味のある方は、IMOのなかでペルセウス座流星群は「Perseids(PER)」と表記されているので、それで検索をかけると手っ取り早いでしょう。

3:ねっころがって、頭の上を見るとよい

よくある誤解に、ペルセウス座流星群の流れ星は、ペルセウス座に見えるというのがあります。だから、ペルセウス座が見える北東の空を見るのがよいというものです。

実際は、ペルセウス座を中心に、空のあらゆるところに流れ星は流れますので、空をできるだけ広く見渡すのがよく、ねっころがって、頭の上を見るのがよいです。

ねるときに、立派なサマーベッドや寝椅子を用意するのもいいですが、テントマットや、段ボールをしくのも結構良い方法です。そのさい、身体がずらないように、平らなところに敷くのがコツになります。薄いレジャーシートなどは背中が痛くなってしまうので、オススメできません。砂浜などなら良いでしょうけど、安全面がちょっと不安ですね。

なかには、星がよく見えるところに遠征してみようという方もいらっしゃるかもしれません。もちろん、星が降るように見えるところでは、流れ星もよく見えます。筆者も、高校生のときに友人たちと日本アルプスの高原の牧場で流れ星を見ましたが、すばらしいものでした。ただ、勝手知らないところに、夜じっとするのは、ふつうに考える以上に危険です。過去には流星観察の現場での傷害事件や帰路での交通事故なども起こっています。初心者は登山とおなじで、周囲に逃げ道を用意し、ガイドと一緒でくらい慎重にやっても良いくらいです。携帯がつながらないこともありますし、山などは天気の急変もあります。家で見れば、そういう心配はないので、まずは家から気楽にはじめてみてください。

2013年8月13日0時ころの東京の空で見た場合のペルセウス座流星群のイメージ (c)国立天文台

流れ星の特異日「流星群」はどうして起きるのか?

ところで、流れ星の特異日ともいうべき流星群が、なぜあるのか? をちょっとだけ解説します。よかったらもうちょっとだけつきあってくださいね。

まず、流れ星は「小さな砂粒が、地球に衝突する現象」であることを覚えてください。こうした砂粒は、太陽のまわりをまわる、ミニミニサイズの天体で、平均して秒速30km。時速10万kmという猛スピードで宇宙を突進しています。東京-大阪間を15秒間。月にすら4時間で到達する猛スピードです。ちなみにライフル銃の弾丸(89式5.56mm小銃)でも時速3000kmです。流れ星速すぎ!

一方、地球も太陽の周り9億kmを365日で周回しています。1日で250万km、やはり時速10万kmです。速度の一致は偶然ではなく、太陽の引力にひかれる天体が地球あたりの軌道を周回するとこれくらいになるのです。

さて、こんな猛スピードで宇宙を突っ走っている天体同志が衝突したらどうなるか? ものすごいエネルギーが発生して、発光するのは想像できますよね。これが流れ星です。もちろん小さな砂粒の方が、地球の大気との衝突に負けて、上空80~100kmで消滅してしまいます。平均発光時間は0.6秒間程度。いくら秒速30km、正面衝突で秒速60kmと超高速でも、地上まで到達できず、空中で消滅します。

ところで、流星群は、こうした砂粒が、群れをなして地球にぶつかってくる現象です。群れをなすのは、もともとより大きな天体がばらけたからです。その天体とは、彗星です。

彗星は、太陽をめぐる、ほとんど氷でできた天体です。大きくゆがんだ楕円軌道をもっていることが知られています。っていうか、地球ぐらいのところをのんびり回っていると、あっというまに溶けてなくなっってしまいますので、発見される彗星は「地球や太陽にたまに近づく」楕円軌道のものになっちゃうんですね。最近は、太陽の40倍も遠くにある海王星や冥王星があるあたりに氷でできた天体がゴロゴロしていることがわかってきましたが、これは別の話。

そして、彗星の氷にはたくさんの砂粒がまじった「汚れた雪玉」の状態になっていて、太陽に接近すると氷が溶け、まじった砂粒が宇宙にばらまかれるのです。そして砂粒が太陽の光を反射し、実体(直径数km程度)よりもはるかに巨大な姿(時に数百万kmに広がる)に見えます。その様子が、まるで女性のロングヘアーのようなので「コメット(髪の毛のようなもの)」といわれますし、ほうきみたいなので「彗星=ほうき星」ともいわれるわけです。実際は、ほうきどころか、大量の砂粒がばらまかれているのですけれども。

さて、この砂粒の群れは、彗星とともに、太陽をめぐりますが、だんだん、前後にばらけていきます。そして、彗星の軌道上を猛スピードでめぐる砂粒の群れができあがるわけです。

この宇宙の砂嵐に、地球が突っ込むと、多数の流れ星が見える、流星群になるというわけですね。この砂粒の群れの経路は一定しているので、毎年同じ日に、流星群が見られるというわけです。

ペルセウス座流星群の場合は、太陽を133年で周回するスイフト・タットル彗星からばらまかれた砂粒によって起こることがわかっています。この彗星は最近、1993年に地球に接近しました。その前後の数年はペルセウス座流星群の流れ星の数が、さらに2倍以上になる「ビッグボーナスチャンス」となっていました。残念ながら、2013年のいまは平常にもどっています。

ところで、ペルセウス座流星群の砂粒は、地球の北東側からつっこんできます。地球は東にむかって動いているので、やや斜めで正面衝突となります。その分、衝突スピードは速く、それでペルセウス座流星群は明るい流れ星が多くなります。

宇宙を音もなく飛び交う彗星からはきだされた砂粒、そのエネルギーが光になる流れ星。なにも知らなくても、流れ星は心を上げますけれども、ちょっと宇宙に想いをはせてみてください。

おまけ:流れ星を写真に写そう

いつどこに流れるかわからない流れ星を写真に写すには「下手な鉄砲も数うちゃあたる」方式で、写真をとりまくるしかありません。ただ、やみくもにやってもうまくいきませんので、兆戦しようという方は、こんなところに気をつけてください。なお、カメラ以外に必要な機材としては、丈夫な三脚と、1000円~5000円くらいのケーブルレリーズやリモコンです。三脚はどんなカメラでも共通ですが、ケーブルレリーズやリモコンは機種ごとに違いますのでカメラ屋さんに聞いてみてください。

  1. 感度をISO1600以上にする
  2. ピントはマニュアルフォーカス(MF)で無限大(あるいは風景撮影)にセット
  3. シャッター速度もマニュアルにし10秒間~1分間くらいにして、次々にシャッターを切り続ける。シャッター速度の選択は試し撮りをして、真っ白けにならないくらい(これが重要)。
  4. 三脚にカメラを固定し、夜空にむけて撮影

電池はフルチャージ、またはコンセントにつないだ状態で行います。そうして撮りまくって、以下のような綺麗な写真がとれるといいですね。

2012年8月に撮影されたオーストリアのAlbrechtsberg城とペルセウス座流星群 (c)NASA/Sebastian Voltmer。オリジナル画像は[コチラ]

また、撮影した多数の写真をPHOTOSHOPや適当なフリーソフト(例えばコレ)などで比較明合成すると、以下のような写真になります。

チリ・パラナル天文台で撮影された「ふたご座流星群 (c)NASA/Stéphane Guisard (Los Cielos de America), TWAN。オリジナル画像は[コチラ]

他にもいろいろコツはあるのですが、まずはやってみてはいかがでしょう。

著者プロフィール

東明六郎(しののめろくろう)
科学系キュレーター。
あっちの話題と、こっちの情報をくっつけて、おもしろくする業界の人。天文、宇宙系を主なフィールドとする。天文ニュースがあると、突然忙しくなり、生き生きする。年齢不詳で、アイドルのコンサートにも行くミーハーだが、まさかのあんな科学者とも知り合い。安く買える新書を愛し、一度本や資料を読むと、どこに何が書いてあったか覚えるのが特技。だが、細かい内容はその場で忘れる。