【コラム】
防衛産業界の売上ランキングで上位にいる企業を見た時に興味深いのは、航空機メーカーからスタートした企業が多い点だ。ロッキード・マーティン社、ボーイング社、ノースロップ・グラマン社、BAEシステムズ社辺りが該当する。
つまり、航空機の製造からスタートし、そこに搭載するミサイルや電子機器にも版図を拡大。さらに会社によっては人工衛星や情報システムなども手掛けるようになったという構図だ。「ドンガラからアンコへ、さらに総合的なシステム構築へ」という流れで業容を拡大してきたことになる。
また、M&Aにより航空機以外のプラットフォームまで手掛けるようになった例もある。例えば、ノースロップ・グラマン社の艦艇部門は、以下の造船所を買収して傘下に収めたものだ。
英BAEシステムズ社は航空機だけでなく、艦艇もAFV(Armored Fighting Vehicle: 戦車などの装甲戦闘車両)も火砲も手掛けている、正に総合メーカーだ。
同社はもともとBAe(British Aerospace)という名称で、英国に群雄割拠していた航空機メーカーがまとまってできた会社だ。ところが、英国、スウェーデン、米国のAFVメーカーなどを買収したことで、対象が陸・海・空に広がり現在に至っている。
このため、「BAE」とは「British Aerospace」の略ではなく、単なる名詞ということになっている。Aerospaceと名乗るような業容ではないからだ。
なお買収した企業で注目したいのが、アルヴィス・ヴィッカース社とマルコーニ・マリン社だ。ヴィッカースは英国の兵器メーカーの代名詞のように言われているが、艦艇部門も陸戦兵器部門も業績が落ち込んで別の企業に買収され、最終的にはBAEシステムズの傘下に収まってしまった。
AFV部門のヴィッカース・ディフェンス・システムズ社を買収したアルヴィス社は、同業のAFVメーカーだ。一方、艦艇部門のVSEL(Vickers Shipbuilding and Engineering Ltd.)を買収したマルコーニ・マリン社はその名の通り、電機メーカーのマルコーニが母体だ。ドンガラよりアンコの方が重視される現状を象徴する例と言える。
一般的には、AFVを手掛けるメーカーが、航空機メーカーのように総合防衛産業化した例は少ない。これには、戦車は航空機に比べると長持ちし、冷戦終結後に戦車不要論が喧伝されたなどの事情から、需要が減ってしまったことが影響している。もっともその代わりに、もっと軽量の装甲車は需要が増えているし、戦車も最近また見直されてきているが。
そうした状況の中で変わった道を歩んだのが、米国のゼネラル・ダイナミクス社だろう。同社はもともとコンベア社に源流を持つ航空機メーカーで、後に潜水艦を手掛けるエレクトリック・ボート社やM1戦車を手掛けるクライスラーの防衛部門を買収して総合メーカーになった。
ところが、その航空機部門を「採算性に問題あり」として売却したため、周囲からは奇異の目で見られた。戦闘機を手掛けていた部門はロッキード・マーティン社に、軽飛行機やビジネスジェット機を手掛けるセスナ社はテクストロン社に売却されている。
こうした事業部門の売却・整理により、同社は基本的にはAFVと潜水艦に専念する体制となった。AFVはゼネラル・ダイナミクス・ランド・システムズ社、潜水艦はゼネラル・ダイナミクス・エレクトリック・ボート社が担当している。ただし、航空機を担当するガルフストリーム社は手元に残した。
これは一見、冷戦終結で需要が減った不採算部門ばかり残したように見えるが、実は競合が少なく、その分野で確実にチャンピオンになれる事業だけを残したのだ。ターゲットを絞り込んで、規模は小さくても確実に利益を出せる体質を作ろうとしたわけだ。このリストラによって財務体質を立て直した後で、艦艇・AFVに特化したM&Aを進めて現在に至っている。
なお、現在では電子機器やITソリューションを担当する部門として、ゼネラル・ダイナミクスC4システムズ社や、ゼネラル・ダイナミクス・アドバンスト・インフォメーション・システムズ社といった企業も傘下に擁している。
実は、このゼネラル・ダイナミクス社、前述のアルヴィス・ヴィッカース社を買収しようとして、実現の寸前まで行った。ところが土壇場でBAEシステムズ社が買収に名乗りを上げ、好条件を提示してかっさらっていった経緯がある。英国政府としては、唯一残った大手AFVメーカーを、簡単に米国企業の手に渡すわけにはいかなかったのだろう。
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